第3部 胡蝶蘭カズラ編 ※世界観一新

このクラス、ウザい奴しかいないんだけど

 『近場』という理由だけで、高校を選んだあたし。それは後悔していない。だけど、クラスメートに恵まれなかったな~。


4月に入学してすぐの、ゴールデンウィークにすら入ってないのに…。

このクラスメートと、あとどれだけ過ごさないといけない訳?



ウザい奴の1人目は、水寺綾芽みずでらあやめだ。仕切りたがりか知らないけど、やたら先生の発言にツッコむ。声もあたしのタイプではないので、耳障りだ。


頼むからさ、黙っててくれない?



2人目は、畑山琴音はたけやまことね。多分、あたしのクラスの女子で一番の巨乳。


男子がチラチラあいつの胸を観ているけど、それはどうでもいい。

男ってそんなもんでしょ。


だけど、あいつの猫なで声や男子に媚びを売る姿はイライラする。

あいつを嫌っている女子は意外に多い。そういう話をよく聞くし。


あいつは女に嫌われる女だと思う。



最後は、黒空葵くろぞらあおい。黒いのか青いのかどっちなんだ。


こいつは真面目で、先生に一目置かれている。それだけなら良い人に聞こえるけど、あたしの高校に合わないレベルの真面目さだ。


『高校内で携帯禁止』という校則があっても、あたしのようなバカが多数いる高校だよ。守る訳ないじゃん。黒空は律儀に守って、違反者に注意してくる。


あんたのやることは間違っていないけど、周りのレベルに合わせてほしいよ。

多くのクラスメートに『ウザい』と思われているのが、わからないのかな?


わかってやってるなら、あんたもバカだと思うよ。



 他にも気になるクラスメートはいるけど『ウザい』と言い切れるのはこの3人だ。なんとかならないかな~? クラスメートだから、どう足掻いても同じ教室にいなければならない。それも苦痛だ。


そういえば数年前、ある高校で教師1名と生徒3名が神隠しにあったというニュースをやっていたな。あのウザい3人も、神隠しにあってくれればいいのに。


クラスメートの不満を抱きながら、あたしは寝た。



 「おい。起きろ。…さっさと起きないか!」

聞いたことがない声に起こされるあたし。誰だよ?


あたしは二度寝を我慢して目を開けた。

すると観たことがない空間にいて、黒くてヤバそうな奴がそばにいた。


「あんた…、何者なの? 」

あたしはイライラしながら、黒い奴をにらみつけた。


「ほう。悪魔の前でその態度か。…そなた、面白いな」

自称悪魔に褒められたあたし。


「これって夢でしょ? なら媚びを売る必要なくね?」

悪魔だろうが、ヤバい組織のトップだろうが、目が覚めれば終わりだ。


頭をぺこぺこ下げて、ご機嫌を取る必要はないはず。


「…夢ではないと言ったら?」

自称悪魔が挑発してくる。


「信じられるわけないでしょ。何か力をくれて、起きた後もそれを使えたら信じても良いけど」


「なるほどな。…良いだろう。そなたの言う通り、力を与えよう」

そう言って、黒い光をあたしに当てる自称悪魔。


「ちょっと! 何するのよ。眩しいじゃない」


「そなたの言う通り、悪魔の力を与えた。まずは黒の球体をイメージするが良い」


反論材料がないあたしは仕方なく、自称悪魔の言う通り黒の球体をイメージする。

すると手の平に、それが出てきたのだ。


「何か出てきたんですけど!?」

力かはわからないけど、あの自称悪魔。あたしに何かしたのは間違いないな。


「それに当たったものは、強制的に魔界に転移させられるのだ。もちろん、人間も例外ではない」


「それ…本当なの?」

本当だったら、あのウザい3人を消せる。こんなに嬉しいことはない。


「本当だ。数年前は天使に邪魔されたものだが、今回こそは…」

数年前? 天使に邪魔された? よくわからないけど、あたしには関係ないか。


「その目…、消したい奴がいるようだな。邪悪な気配を辿ってそなたの元に着いたが、間違ってはいないようだ」


あたし、邪悪な気配があるの? ちょっと恥ずかしいな。


「アンタ。起きた後に黒い奴を出せなかったら、承知しないからね」

あの黒い奴の真偽はわからないけど、起きた後に出せなかったら意味がない。


「そなた、今まで会った人間の中で一番面白い。名を訊いても良いか?」

自称悪魔に面白いって言われてもねぇ…。


胡蝶蘭こちょうらんカズラよ。覚えておきなさい」


「さらばだ。カズラよ。また会えることを楽しみにしている」

そう言って消える自称悪魔。いきなり名前を呼ぶな。馴れ馴れしい。


携帯のアラームが鳴っている。起きる時間か…。



 いつもの朝より手早く準備をして自室に戻ったあたしは、夢でイメージした黒の球体を現実で再びイメージする。すると、手の平に黒の球体が再登場する。


あれは夢じゃなかったのか。今度は魔界に転移できるかどうかだ。


魔界に転移して問題ないのは…、大きいボロボロのぬいぐるみにしよう。

あたしは黒の球体を、ぬいぐるみに向かって投げた。


すると、ブラックホールに吸い込まれるように、ぬいぐるみが消えたのだ。

魔界に転移したかは不明だけど、消えるのも本当か。


「この力があれば、あたしはあの3人を消せる。必ず消してやる!」

そう決意を胸に、あたしは自室を出た。

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