【夏木秋吉編、最終回】 復讐の行方

 結局、最後の復讐相手のやなぎは帰宅するようにしたようだ。鞄に教科書などを詰め込んでいる。今日を逃したら、柳は自宅に引きこもるだろう。


この学校はどうなるかな? 教師1人、生徒3人の計4人が短期間に神隠しにあっている。僕のクラス以外にも、神隠しに恐怖を抱いて登校拒否している生徒がいるらしいが、知ったことではない。


予想以上に注目を浴びたのは間違いない。だが、柳に復讐すればミッションコンプリートだ。ここまで来て、邪魔されてたまるか。



 僕は、柳の尾行をすることにした。高校近くのコンビニ・本屋・スーパーと人目があるところに行く柳。クソ、どうせなら人気がないところに行けよ。


次は電車に乗るみたいだが、僕が全く利用しない路線に乗ることが判明した。

知らないところの尾行は、リスクが大きすぎる。仕方なく諦めて帰宅する。


柳に復讐する機会はなくなってしまった。4人中、3人に復讐できたのは上出来だろうか。逆に、とも思うがね。



 僕が登校拒否を決めたことに関して、両親は何も言わなかった。

寛容なのか、無関心なのかはわからないけど。


登校拒否している僕のクラスメートに、担任の桜井先生はマメに電話しているらしい。本人はそう言っているが、真偽は不明だ。


先生曰く、登校している一部の生徒は、プリント学習をやっているらしい。

先生の負担が減っているから、マメな電話ができるんだな。


先生は、神隠しが2度と起きないように監視を強化することを約束したり、できれば登校してほしいことを伝えてきた。柳のことを忘れて、登校するのもアリかもな。


返事を濁したところ、1つとんでもないことを言われた。


いくら神隠しが理由でも、登校しなければ高卒扱いにできないそうだ。


おいおい、さすがの僕も中卒は嫌だぞ。


現在、別案を上と協議中らしい。それを聴いてから判断しますか。



 数日後、桜井先生から電話がかかってきた。


何でも、選んだ兄弟校に登校してプリント学習をやれば、特別に卒業要件を満たせるように工面するらしい。


つまり、以前と同じように登校するか、兄弟校に通学するかの2択になる。通学することは同じだ。


「明日どちらにするか確認するから、決めておいてくれ」と言って電話を切る先生。


柳はどっちを選ぶかな? アイツがいれば復讐をして、いなければ平穏に過ごす。

それを変える気はない。


僕の復讐動機は、静かで穏やかな高校生活をあの4人が邪魔したからだ。

阿部先生を消してしまったが、観られた可能性を考慮したからで、本意ではない。


今後も僕の邪魔をする生徒がいたら、消していきたいと思っている。



 次の日、予告通り電話をかけてきた先生。


僕は…、以前と同じように通学することを選んだ。

両親もこっちを望んでいると思うし。


先生はとても喜んでくれた。電話越しでもよくわかるよ。


「明日から登校してほしい」とのこと。

土日を入れて1週間近く自宅待機したから、気力は十分だ。



…にもかかわらず、翌日寝坊する僕。

体のリズムが崩れたせいだな。遅刻寸前じゃないか。


登校拒否した僕のクラスメートは、変わらないか兄弟校に通学することになる。

果たして、誰がどっちを選んでいるんだろう?


僕は教室の扉を開けた。

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