最初のターゲットはお前だ
月曜日になった。土曜日に力を得て、どれだけ待ちわびたか。
僕が復讐したいのは、
誰かに固執せず、タイミングが合えば復讐するようにしよう。
その方がうまくいく気がするからだ。
月曜日は1限から体育だ。内容は確かバレーボールだったかな。
僕が嫌いな団体競技だけど、サボれないので仕方なくやる。
…最悪の気分のまま、体育の時間は終わった。
佐々木の、僕に対する罵詈雑言が止まらないからだ。
「ちゃんとトスしろ!下手くそ!」
「サーブすら入れられないのかよ? マジありえん」
「何でスパイクしないの? 意味不明なんだけど」
などなど。これ以上は思い出したくない。
他の人も当然ミスるけど、僕に対してだけ当たりが強い。
偶然とか、勘違いのレベルじゃない。
決めた。最初のターゲットは、佐々木修。お前にしよう。
前言撤回することになるが、僕が勝手に決めた事だ。僕が変えても問題ないよな。
教室に戻る途中、僕の前を佐々木と田中が歩いている。
田中は佐々木の友人Aだ。一緒にいるところをよく見る。
「わりぃ。トイレに行きたいから先に戻っててくれ」
佐々木が田中に言う。
「わかった」
そう言って、佐々木と別方向に歩き出す田中。
2人が分かれるな。佐々木が1人になるのは都合が良い。
僕もトイレまで付いていくことにした。
トイレ前で、僕はイメトレをすることにした。
黒の球体を佐々木にぶつける。これだけでも、緊張すると頭が真っ白になる。
…よし。僕は黒の球体を出してからトイレに入った。
洗面台に誰もいない。個室は不明。小便器前に佐々木1人。
絶好のタイミングだ。やるなら今しかない。
「おい、何ジロジロ見てんの? お前?」
佐々木が嫌悪感を抱きながら、僕を威圧してくる。
僕は佐々木に向かって、黒の球体を投げた。
小便中で身動きが取れない佐々木に、黒の球体を当てるのは簡単だった。
黒の球体に当たった佐々木は、ブラックホールに吸い込まれるように一瞬で消えた。
…復讐完了だ。僕は何食わぬ顔で教室に戻ることにした。
2限は数学だ。担当の武藤先生は、佐々木がいないことに気付くものの、保健室に行ってると思ったようだ。そのまま授業をした。
2限後の休み時間、田中は吉田に声をかける。吉田は佐々木の友人Bだ。
「俺、ちょっと保健室に行ってくるわ」
「ああ」
保健室にいると思われる佐々木の様子を観に行くのか。いる訳ないけどな。
数分後、田中は血相を変えて戻ってきた。
「佐々木の奴、保健室にもいないぞ。どこに行ったんだ?」
「何か急用ができて帰ったとか?」
吉田がツッコむ。
「急用って何だよ?」
「例えば…、身内の不幸とか?」
身内どころか、佐々木自身に不幸が起こってるんだよ。吉田の奴、意外に鋭い?
「だとしても、着替えずに向かうもんか? それに、俺か吉田には連絡するだろ」
体育の際、男子は教室で着替えるが、佐々木の着替えは机の上に置きっぱなしだ。
田中の指摘はもっともだろう。着替えも転移させればよかったか?
3限が始まり、現文の石田先生が入ってくる。授業前に、田中は佐々木がいなくなった事を、石田先生に説明した。
最初は軽く聞き流していた石田先生だが、田中の切羽詰まった様子を見て、ただ事ではないと悟ったようだ。
「担任の桜井先生は、職員室にいるはずだ。桜井先生に今の話をしてきなさい」
それを聴いた田中は、職員室に向かった。
その後は普通に授業をしたが、ここまでくるとクラスメート全員が何か起きてることを理解したようだ。いつもより落ち着きがない人が多い気がする。
3限の途中で戻ってきた田中は、休み時間になってすぐ吉田に声をかけた。
「桜井先生はなんて言ってたんだ?」
田中が話を切り出す前に、吉田が先に質問した。
「ひょっこり戻ってくるかもしれないし、気にし過ぎは良くないってさ。昼頃になっても戻らなかったら、警察を呼ぶらしい」
警察か…。犯人が僕であることがバレることはないが、予想以上に目立っている。
このまま復讐を続けたら『神隠し高校』として注目されるかもな。
できればプライベートの時に狙ったほうが良いか。だが、学校内でしか接点がないから、プライベートのあいつ等をまったく知らない。
プライベートを探るより、ほとぼりが冷めるのを待った方が早いかもしれない。
結局、昼頃になっても佐々木は戻ってこなかったので、桜井先生は本当に警察に通報したようだ。佐々木と最後に話した田中は、事情聴取された。
復讐のペースは乱されたものの、復讐自体はできたから良しとする。
あと3人か。いつにしようかな?
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