14
「ただいまー」
すっかり遅くなってしまった帰宅時間。
外が真っ暗になってからの帰宅に、私は家の中に入って、玄関先で声を張る。
「真奈美?!」
声がして、敬子さんがぱたぱたと足音を立てて、玄関先に走り出て来た。
「何でこんなに遅く帰ってきたの?! 心配するじゃない?!」
あ、と思う間もなかった。
敬子さんは、私に走り寄ると、そのまま、私に抱き付く。
「あなたが、またあんな事故に遭ったら、って思ったら。……私は、私は」
「敬子……さん」
私は呆然と、敬子さんにもう一度、そう、問いかける。
「勝手に外出した私を、責めないんですか? いつもだったら、外に私が出て、遅くなったりしたら、『心配』するよりもむしろ、怒っていた筈」
「――」
急に敬子さんが顔を上げ、両腕を私に回したまま、私の目を見上げた。その目が、潤んでいる。
張りつめていた、私と敬子さんの境界線の、「線」が少し緩やかになったような気がしたのは、私の気のせいだったのだろうか。
だが結局、敬子さんは黙って私を腕の中から解放すると、
「さ、ご飯はどう? 食べて来た? もしまだ食べていないんなら、作りすぎた晩御飯のおかずが山ほどあるから」
そう言って、先に立ち、食堂の方へと歩いていく。
敬子さんが、顔に手を当て、苦しげに咳払いをするのが見えた。
……何かを、「呑み込んだ」んだ。
私は訳もなくそう感じ、それ以上、敬子さんに何も聞くことが出来なかった。
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