5話)歓迎会 みんな、みんな、愛してるっ!!
「みなさん、ありがとうございます」
ここは天国かぁっーーーーーーーっ!
あ、あ、あ、あっちにも、こっちにも、私の理想の男の子、女の子!!
神に祈りを捧げるふりして。
それはでも、本当はみんなにだよ!!
ジョン君、リュウ君!
ケイトちゃん、メアリーちゃん、ミアちゃん!!
みんな、みんな、かわいい子たちばかり。
もう、みんな覚えたから。
絶対に顔も名前も忘れないから。
「クローネさま。行くとこないなら、ここにいてよ」
「聖女さま? 私もそれでいいよ!」
「うん。ここが新しい家ってことでいいじゃない!」
ああ、私のことをそんな、本当に聖女として見てくれるなんて!
無条件で迎えてくれるなんて!
なんて純真なの! 疑うことを知らないの!!
そのキラキラ輝く瞳、こんな汚れを知らない子たちは絶対守ってあげなきゃ!!
「みなさん、突然現れた私を迎え、歓迎会なども
「もうお礼はいってもらったよ?」
「ぼくの方こそ、助けてもらったのに……」
みんなの目が
私の目も潤む。
「いえ、私はわたしの心をこそ救っていただいたことに感謝しているのです」
何それって、顔されてる。
十にもならない子供たちには難しかったか。
でも本当に、そんな気分なの。
素直な私の気持ちなの。
天使たちとの出会いは運命。
天のさ・だ・め!
興奮したら、頭から湯気噴いて倒れそう……。
「大丈夫?」
ああ、赤の巻き髪もかわいい、メアリーちゃん!
「ごめんね。こんなものしかなくて……」
しょげなくていいの、くりくりお目めのリュウくん。
夕食の支度を待つ間、セシルさんにそっと教えてもらったよ。
あなたたちには身寄りがないんだって。
前のシスター、パトリシアさんが薬草の探究で各地を旅しているときに出会ったのよね。セシルさんが最初で。厄介者扱いされていた子供たちを次々に引き取るなんて、パトリシアさんは偉いなあ。
お母さんもお父さんもいる私には、あなたたちの悲しみを理解するなんていえないけど。
でも、私だって、いじめられていた。
孤独、のけ者のつらい気持ちは分かるつもり。
ううん。わかる!
「私のために少ない食料を分けていただき、みなさんには何といっていいか……」
それは私の本当の気持ち。
セシルさんはいってた。
パトリシアさんって、「薬草の魔女」っていわれていたんだって?
いつの時代も、どこでも、人知れず秘術を伝える、それを探究する人って、変人扱いされる。オタクと似ているから、本当に共感できる。
今はなんか、オタクももてはやされているけど「同じ人間」みたいな目で生暖かく見られるのはなんだかなあって思うもの。私が気にしすぎなのかもしれないけど。
だからって、子供たちまで「魔女の使い魔」とかいって邪険にするなんて!
パトリシアさんが亡くなっても村が教会を見る目は変わらず、みんなは危険な森のなかで暮らし続けるしかなかった。
そんな時に……。
教会で一番小さいサリーちゃんがいなくなった。
彼女を捜しに行った年長者さんたちもいなくなっちゃった。
どこまでも不幸の連続、どん底じゃない!
見ず知らずの私を疑いもせず聖女なんて、救世主みたいに
よぉしっ!
ギフト
〈「調理」〉
食材を見極め、私はお菓子を作る!
この姿のもとになったゲームでは、スタートのとき、ジョブスキルとは別に自分自身に付与できるスキルをもらえた。ゲームでは「ギフト」って呼ばれてた。レベルが上がればそれも成長するとか。
ゲームのなかなんだからって思いつつ、やっぱりこれは外せない! って、私はこの〈「調理」〉をギフトに選んだの。大好きなお菓子を自分で作れる、それがもう何より魅力的に見えて。おかげで実生活でもお菓子作りは得意になっちゃった。影響されやすいオタクよね。
それが今になって天使たちの役に立つなんて!!
粗末な材料がもとでも、私の力なら。
「おいしい!」
「あまーい!」
「こんなの、初めて食べた!」
「聖女さま、ありがとうございます!」
ああ、いい!
子供たちが喜ぶ顔も、私を崇める顔も。
もっと、もっとちょうだい!
昇天しそう。
「聖女さま、大丈夫?」
「おかげん悪いの?」
「だ、大丈夫ですよ、ちょっと疲れただけです」
ごまかしてみたら。
「それは失礼しました。配慮が足らず……」
セシルさん、いいのに、いいのに!
子供たちに囲まれているだけで、私は一週間、ぶっ続けでオール行けるわ!
天使に勝るものなし!
「お顔の色がすぐれません。無理せず、どうぞお休みください」
いや、だからね、大丈夫、大丈夫だから……。
「えー! だったら、一緒に寝ようよ」
あ、それは魅惑的すぎる提案ね、ミアちゃん!
「ダメです。クローネさんはお疲れなんだから、ゆっくり一人でお休みさせてあげましょう」
「はーい……」
ま、まあ、そうなるよね。
「では、お言葉に甘えて、お休みさせていただきます」
休むとなったら、なんか力が……。
天使たちと出会って、でも聖女さまと取りつくろって。
表と裏であまりにもテンション違いすぎて。
けっこう、自分でも知らないあいだに疲労が……。
「みなさんも早くお休みくださいね」
明日からまた、天使たち、私に微笑みかけてね!
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