4話)天使のジョン君に導かれて 孤児院? でも、なんか様子がおかしいの
「こっちです、聖女さま」
薄暗い森も私の〈ホーリーライト〉の魔法なら、昼間のように明るく照らし出せる。
かつ、私よりレベルの低いモンスターなら追っ払える。
まあ、私は聖女さまですから!
私よりレベルの高いモンスターなんて、そうそういませんから!
日が落ちて、けものも唸れば、なんか前世じゃ見ないものもガサガサとうごめく……。
く、暗い森なんて、怖くないんだからね!
「どうしました、聖女さま?」
「いえ、何でもありませんよ」
心のなかでツンデレ遊びなんてしてちゃだめよね。
ジョン君には立派な聖女だって、思ってもらわないと。
多少取りつくろっても。
私って、自分でいうのもなんだけど、けっこう図太いんだと思う。
へこみやすくって、一度落ち込んだら長いけど。
それでもしっかりご飯食べて、寝て起きて、真面目に毎日学校に行って、……。
うん。それだけでも褒めてほしいもんよね。
知らない世界に放り込まれたって、どうってことない!
アニメやゲームで鍛えられて、異世界転生の展開なんてなれたもんだし!
神さまのおじいちゃんのいうとおり、聖女さまの絶対的な力あれば、何とか、なる、なる!!
って、思わなきゃやってられなぁい。
「聖女さまはやっぱりすごいなあ」
「え?」
「こんなすごい光の魔法なんて、ぼく、見たことない」
「いえいえ、たいしたことありませんよ」
ああ、膝から崩れ落ちそう。
なんていい子なの、ジョン君!
この子のために私、生きられる。
この子のためだけに、前世への未練なんてすっぱり切れる!
異世界でもがんばれる!!
そして連れてこられたのは、森のなかの教会。
「みんな、ただいま!」
元気よく、ジョン君が、古びて、かしいで、ギーギーと音のなる扉を、9歳(確定)の小さい体で懸命に開けて……。
「どこへ行っていたの!」
いきなりの叱り声。
でも、女の子がいっぱい出てくるアニメのような、かわいい声。
「ご、ごめんなさい、セシルさん」
あ、ああ、ジョン君、しょげないで。
「叱らないであげてください」
ああ、思わず前に出ちゃった。
「あなたは?」
「私はクローネ。クローネ・タルト・ショコラと申します」
「シスター? ですか?」
「はい」
目の前の女の人は、小柄なボブカット。
ふんわりブラウン。
猫のように大きな釣り目。
多分、私より年上。元の。今の私は確か、外見年齢20代後半だったはず。
きっと彼女は二十歳くらいかな?
ジョン君を叱った目のまま、私をにらんでくる。
私のことを疑っているのね。
それは仕方ないか。
でも、
スキル発動
〈「聖女の言葉」〉
レベルが上がれば上がるほど、私の言葉に説得力を持たせることができる。
偉い人の説教、演説って、「偉い」ってその権威だけで説得力あるじゃない? 平社員より社長のほうが、同じ言葉なのに妙に納得させられるって、やつ。私はなんかもう、社長でも、CEOでもなく、それをぶっちぎる聖女さまですから!
「ジョン君は、皆さんのための食糧を探しに行っていたとか」
「そうなの?! まったくもう、一人で行っちゃダメって、あれほど……」
「いえ、叱らないであげてください。その心優しさこそ、
「でも……」
「私は導かれてここに来ました、彼に。これは神のお導きというものでしょう」
十字を切って、胸の前で手を合わせれば、急いで、セシルさん? も。
どうやら、この世界でも神への祈りの
こういうときって、聖女の姿は便利よね。
スキルなんてなくても説得力があるもの。
それにここは教会だし。怪しまれないでしょ。
「あなたは、その、何故?」
あれ?
やっぱり、まだ怪しまれてる?
落ち着いてはくれたみたいだけど、状況に対する言葉そのものに説得力ないと〈「聖女の言葉」〉も力が半減するしなあ。暑い夏に「今は寒い冬です」なんていっても、白い目されるだけでしょ? 強引に心を捻じ曲げるようなスキルではないもの。
「私は実は、記憶がないのです」
「え?」
ここはもう、正直にいっちゃえ!
嘘ついたって、どうせどっかでばれるし。
聖女さまの仮面まではがされるわけにはいかないし。
「私は神のお導きでここに使わされました。それは間違いありません。ですが、私は、私が何者であるか、わからないのです」
うん、嘘じゃない、嘘じゃないわ。
あのおじいちゃん神さま、何の説明もしてくれなかったんだから。
「そう、なんですか……」
今度こそ、納得してくれた?
「聖女さま、聖女さまなんだよ! クローネさまは!! 光がね、パーっと降りてきて、そしたらね、クローネさまがね……」
かわいい!
必死になって、説明してくれるジョン君!!
ああ、
私を心から信じてくれてる。
ありがとう!
やっとそれで、セシルさんも警戒を解いてくれたみたい。
「あ、あの、申し訳ありませんでした。ジョンを助けてくれた人に、その……」
「気にしないでください。私はそんなに立派なものではありません。ジョン君を落ち着かせるために、ジョン君のいう聖女さまを否定しなかっただけですから」
そりゃ、そうよね、私はただの女子高生!
オタクの!
子供好きの!
……なんか、文句ある?!
「ううん、クローネさまは聖女さまに違いないよ!」
ジョン君のほうが天使よ! 間違いない!!
「クローネさま、来て、みんなに紹介するから!」
懸命に私の手を引いてくれる、その手の……。
あれ、けっこう、柔らかくない?
傷だらけ?
こんな子がなんで、こんなに荒れた手をしているの?!
みんなっていうけど、孤児院って聞いたけど、ジョン君を入れて、5人だけ? そんなものなの? みんな暗い顔をしているし……。
ちょ、ちょっと、本当にどうしたっていうの?!
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