3話)君は天使!!?? やったね、私!!!!

 君こそ、天使かぁーーーーーーーーーーっ


 ハッ!


 いけない、いけない。


 思わず叫びそうになっちゃった。


 まあ、本当に叫ぶなんて、声に出すなんて、陰キャな私にはできないんだけど。


 あっちじゃ、だから「(陰キャ)代表」なんてあだ名付けられてたし。陰険だの、何を考えているのか分からないだの、薄気味悪いだのって……。


 いいたい放題、いわれたい放題!!

 こっちがちょっと……、あれよ、あれ。そう、引っ込み思案なの、私は引っ込み思案! 内気な私は、ちょっと人より控えめなだけ、前に出ることが苦手なだけ!!

 それを……。


 陰口叩いていたの、みんな、みんな、知ってるんだからねっ!!


 私の上履き隠したのはあんただって、分かってるんだから!

 良子よしこ


 何が、良子よ。

 どこが良い子なんだか。


 あんたらのほうがよっぽど、陰険いんけんで、陰湿いんしつで、いやらしいったらありゃしない!


 こっちがね、何もできない、なんもいえない、へらへら笑っているだけだと思って……。


 バカーーーーーーーっ!


 はあはあっ……。

 心のなかでハアハアいう私って……。


 でも……。

 叫べていたら、陰キャを卒業できたのかな……。


 ……。


 ああ、落ち込んできた。

 ああ、ダメ、ダメダメ。

 こんなだから……。


「聖女さま、大丈夫?」


 きたぁあああああっっーーーーーーーっ!

 天使の降臨だぁっーーーーーーーーーーーーーーっ!!


 覗き込んでくる、それはそれはキュート、ぷりちぃ、限界突破! 金髪碧眼どストライクの男の子! どんなアニメだっつうの、こんな子が上目遣いでうるうる覗き込んでくるなんて。それもドアップで。って、アニメじゃないんだから当然か。

 そう、これは現実!!

 学校の社会科見学で行った、つまらない美術館。

 でもたった一つ、私の目をとらえて離さなかった天使の画。

 そこから抜け出してきたような子が、今まさに目の前に!!

 もうね、前世のいやなことなんて、全部、ぜぇんぶ、このかわいい顔の前では吹き飛んじゃったっ!

 ……あのアニメとか、マンガとか、続きが見られないのは残念だけど。


 でも、もういいの!


 ヒャッフウッ!


 ああ、神さまぁ……。

 昇天しそう。


「あ、あの……」


 ハッ……。


 今度こそ叫びそうになったけど、


「大丈夫ですよ。心配してくれてありがとう」

「あ、あの……、こ、こちらこそ、ありがとうございました」

「いいえ、あなたの勇気こそ、素晴らしい力です。私はほんの小さな助けしかしていません」

「聖女さま……」


 ああ、これよ、これ!

 小さい子の崇める視線。

 これが欲しかったの!!


 近所のさとしなんて、最近生意気になっちゃって。

 公園で友達と遊んでいるのを見かけて、私がちょっと、ボール取ってあげても、お礼もいわずにテテテって……。

 照れていたって、そう思ってあげたけど、まあ、私も聡以外は知らない子ばかりだったからひきつった顔しかできなかったけど。

 落ち込んだのよ、あの時は!

 三日は立ち直れなかったんだから!!


 でもね、この子は違うの。

 今の私は違うの。


 ああ、癒される。


 私の荒んだ心が浄化される。

 良子たちなんて、ぷっぷっぷぅー、よ。あんた等なんかもう縁切った!

 聡もね、もう遊んであげないんだから!

 ……もう、本当に、無理なんだろうけど。


 いいの!

 聖女さまとして、私は生きる!

 この世界で!!


 たった今、この子のうるんだ瞳に決めた。

 心に誓った!


 ああ、天使、そう天使よ。


 って、天使の名前は?


「ぼく、ジョンっていいます」

「そう、ジョン君。おうちはどこ? 一人でこんなところになんて、危ないわ」


 見渡せば、ここは森のなか。

 夕暮れ間際の。


 薄暗い森に、こんなかわいい男の子が!

 私だったら、見付けたとたんにさらっちゃう!


 って、そんなことしないけど。

 でも、彼の話を聞くと、けっこう切実みたい。


 神さまのおじいちゃん、私どうすればいいわけ?

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