7話)人生の選択? 正解か間違いかがわかる?? そんなのがチートなんて、全然うれしくない!

〈デレデレデレレ……〉


 な、なに、この重々しくて、暗い、不穏なBGM?

 あ、私の頭の中からか。

 あれ、ということは……。


「そうじゃ。おまえは選択を間違ったのじゃ」


 ええーーーーーーーっ!


 どうして、どこで、どうやって?

 神さまのおじいちゃん、私の何が悪かったわけ?


「なにを驚いておるか。当然ではないか。子供の部屋に真夜中、忍び込もうとして、それが間違いでないはずあるかい」


 だ、だって……。


「だって、ではない。どこの世界でも犯罪、間違いそのものじゃ」


 いやいや。

 でも、スマホもなかったのよ?

 子供たちがかわいいのがいけないのよ?

 ちょっと天使の寝顔を見るくらい、いいじゃない!


「いいわけあるか」


 いやいや。

 いたずらなんてしないわよ!

 オタクの矜持きょうじってやつ!?

 かわいいものは愛でてこそ。手は出しちゃダメなの!

 不文律ふぶんりつ? ってやつ?


かれたって知るかい。それをセシルに言い訳して、納得してもらえるとでも思っておるのか、バカ者が」


 そ、それは……。


 で、でも、まだ間に合うよね?

 取り戻せるよね!

 おじいちゃんが出てきてくれたってことは、時間を巻き戻して、とか?


「うーん……」


 ちょっとっ!

 全部いいようになるのって、私の望むままって、それが転生もののお約束じゃない!


「どんなご都合主義の物語じゃ。そんなもん、誰も読んでくれんわい」


 だって……。


「いいか、よく聞け。人生の選択なんぞ、生きてりゃ実は常に存在しておるもんじゃ」


 何よもう、説教なんて……。

 これだから年寄りは……。


「あ、いいのか? そんな口をききよって。おまえさん待望のチュートリアルじゃというのに」


 あ……。

 ごめんなさい、ごめんなさい。

 聞かせてください、お願いしますぅ。


「うむ。その姿と声でだと、甘えられるのも悪くないのう」


 ……スケベ。


「なんかいったか?」


 いえいえ、何でもありませんわ。

 オホホホホ。


「まあ、よい。いずれにしても、これが最後のアドバイスにして、わしの最後の登場じゃ」


 え、そうなの?


「露骨にうれしそうなのはなんでじゃ? 普通、待って待って、もっと教えてください。とかいうもんじゃないのかのう」


 だって……。


 ……しわしわのご老体の相手なんてしてられるかい。


 ここにはピッチピチの子供たちがいっぱいいるのに。

 その邪魔されるなんて。


「ひっそりいっても、全部聞こえとるわ。本当に、おまえは根性ひねとるのぅ。あっちからこっちに来れば、もうちょっと自分の行いを反省してもいいものじゃのに」


 何よもう、そんな盛大にため息つかなくたっていいじゃない!

 これが私なの。

 これこそ私なの!

 人生やり直させてもらえるなら、今度こそ自分に正直に生きるだけよ!


「ああ、もう、分かったわかった。ともかく、人生の選択が正解か、間違いか、それを知れることこそ、おまえさんに与えた最大のチート能力。そう思っておくがいい」


 えー……。

 そんなちゃちなのが?

 そんなのって、意味あるわけ?


「おまえはまだ若くして死んだからのぅ。それがどれだけの宝かも分かるまい。だが、ここでは嫌でも知ることになるだろう。ぶーたれるよりも、ちょっとはそのありがたさを思い知るといい」


 やっぱり、説教だ。


「もう、良いわ。これから先はおまえの選択次第。心していくがよい」


 ハイハイ。


「ああ、そうそう」


 なによ、しつこいなあ。

 年行くとほんと、若いもんにどーでもいいことまでいいたがる……。


「選択を間違ったままだと、魔女認定、火あぶり一直線じゃから」


 はあ?!


 ちょ、ちょっと、何よ、それ!


「人生はやりなしが本来きかんもんじゃ。人生はゲームじゃない。マイナスは積み重なり消しがたいが、プラスが崩れ去るのは一瞬じゃ」


 知らない、そんなこと!

 間違いだってわかったら、やり直しがきくもんじゃないの!

 リセットじゃないのっ!!


「ゲームじゃないといっとろうが。間違いから正解へまた戻せるかどうかは、そこはおのれ次第じゃ。取り戻せるチャンスがある、それこそチートじゃろうが」


 ちょ、ちょっと、それじゃ、何も意味ないじゃない!

 ただ、正解か間違いかがわかるだけなんて!!


「ま、せいぜい気をつけることじゃな」


 投げ出すなーーーーーーーっ!!

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