第20話 サムダンジョン 海編②

*ダンジョン鑑定

 場所: サムダンジョン 7階層

 フィールド: 海底

 宝箱: 2個

 魔物: デビルシーウッド E

     ビックマウスサーモン E+

     ブラックスナッパー D-

     ビックシザークラブ D

     レッドキングロブスター D+


階段を降り、7階層へ進むとワカメのような海藻の森があった。


『サーチ』


『えっ! あのワカメも魔物なのか?』


*鑑定

 名称: デビルシーウッド

 ランク: E

 特技: 絡みつく、触手、痺れ攻撃

 ドロップ: 魔石、海藻(ワカメ、昆布、海苔、ヒジキ、モズク、天草)、サンゴ


『二人とも戦闘だ! 正面の海藻も魔物だぞ!!』


『えっ!』


ワカメの根元から触手が出てきたと思った瞬間、勢いよくこちらに向かって伸びてきた。

俺は何とか避けたが、エミリーが捕らわれてしまった。

それに触手からは麻痺毒が放出され、エミリーが硬直し成すすべなく引きずられる。

触手を素早く切り、エミリーを開放したが痺れて動けないようだ。


『キュア』


俺の治療魔法で何とか麻痺毒が消えエミリーが立ち上がった。

かなり怒っているようだ。


『ストーンバレット! アイスニードル! トルネード! ウォターストーム!』


石や氷の粒が混じった巨大竜巻のような渦が海藻の森を襲う。

飲み込まれた海藻は粉々に砕け散った。

エミリーは怒らせてはいけないと思った。

ドロップした海藻類は回収した。

盛大に魔法を放ったため、周囲の魔物が気付き次々と襲ってきた。


*鑑定

 名称: ビックマウスサーモン

 ランク: E+

 特技: 噛みつく、ジャンプ、突進、水魔法

 ドロップ: 魔石、サケスズキ、イクラ


*鑑定

 名称: ブラックスナッパー

 ランク: D-

 特技: 噛みつく、頭突き、潜伏、水魔法

 ドロップ: 魔石、タイヒラメカレイ


*鑑定

 名称: ビックシザークラブ

 ランク: D

 特技: 挟む、水泡、潜伏、水魔法

 ドロップ: 魔石、カニ殻、カニ身、カニ爪、カニ味噌、ワタリガニ、

     ズワイガニ、毛ガニ、タラバガニ


*鑑定

 名称: レッドキングロブスター

 ランク: D+

 特技: 挟む、キック、水斬撃、水魔法

 素材: 魔石、エビ殻、ハサミ、エビ身、ロブスター、伊勢エビ


魚とカニ、エビの大群が押し寄せてくる。

しかし、エミリーが先程放った複合魔法が炸裂し餌食となり消えていった。

有難くドロップされた魚介類を回収する。


しばらく海底を歩くと壁が見えてきた。

壁の下には8階層への下り階段がある。

なぜか隣には登り階段もあった。

6階層へ戻る階段なのだろうか?


『あの登り階段が気になるんだが、登っても良いかな?』


『構わないわよ。』


『私もOKです。』


階段を上っていくと海から上がり海岸へ出た。

ちゃんと空気もある。

呼吸をすると自動的に潜水が解除された。


「ここは島かな? 周囲には魔物はいないし、安全エリアっぽいね。」


立札があったので確認してみた。


『ここは7階層の隠し部屋、癒しの休憩所だ。

7階層の魔物全討伐で開放される仕掛けになっていた。

この後ボスのいる10階層まで休憩所は無いよ。

ここで十分休むことをお勧めするよ。

休憩所と温泉露天風呂があるから自由に使って良いよ。

それじゃ、最下層で待ってるね。

管理人 サムより』


「ということらしいので休憩しようか。」


水の中だし、休憩所も無かったから昼飯も食べてないんだよね。

立札の奥にあった小さな滝で塩で濡れた防具を洗い、体の塩も洗い流した。

生活魔法のドライで身体や防具を乾かし、休憩所の建物の中に入った。


ドアを開けるとフローリングの広いリビングがあった。

奥にはキッチンがあり、調理器具や魔道具が並んでいる。

またいくつかのドアがあり、一つはトイレ、一つは風呂、残り3つはベットが2つずつある寝室だった。

最大パーティ人数の6名を想定した休憩所なのだろう。

俺は海で冷えた身体を癒すために早速露天温泉風呂に入ることにした。


「ふぅ~。癒される~。日本人は温泉好きだよね~。」


健一の記憶が蘇える。


「ケルビンばっかりズルい! 私たちも入りましょ。」


「そうですね。」


「オイオイ。流石に一緒は不味いだろ。一応、俺は男だぞ。」


「責任取って結婚してもらうから裸くらい見られても構わないわよ。」


「そうですね。」


「えっ?! エミリーとエルザが嫁になってくれるのは俺も嬉しいけど。俺で良いの?」


「聞いたわね、エルザ!」


「はい! 聞きました、エミリーさん。」


「言質は取ったわ。ちゃんと責任取るのよ!」


風呂場から一旦外へ出た2人はタオルを巻いて戻ってきた。

隠すのかよ!と思ったが、ちょっと安心した俺もいた。

でも、二人とも着痩せするタイプだったのねとだけは言っておこう。


「お風呂ってこんなに気持ちが良いのですね。私、初めてお風呂に入りました。」


「貴族様しかお風呂に入らないものね。私も初めてよ。」


「でも、温泉は普通のお風呂とは違うんだぞ? 普通のお風呂はタダのお湯だけど、温泉には効能があるんだよ。」


「ケルビンは物知りね。ところで効能って何??」


*鑑定

 名称: ダンジョン温泉水

 特徴: ダンジョンにのみ存在する温泉の水。水温42℃、乳白色。

     疲労回復、HP/MP回復、全身の凝り解消、ケガの治癒、美肌。

     飲むと消化器官の病が治癒する。


「おとぎ話に出てくる女神の泉に似てるね。女神の泉は浸かるとHP/MPが一瞬で全回復するそうよ。」


風呂から上がるとテーブルの上に手紙があった。


『君たちが初の訪問者だから不手際ばかりですまない。言い忘れていてね。

入場料は無いんだけど、全て使用料が発生するから退出時に払ってね。

世の中そんなに甘くないよ。

お金で払えないときは魔素(MP)でも良いよ。


宿泊代 1泊1名 1金貨

入湯代 1名 3銀貨

食材 時価


それじゃ、ゆっくり休んでね。

管理人 サムより』


お金には困ってないから良いけど管理人はケチだな。

潜水でMP減るのにMPなんかで支払ったら自殺行為だ。

食材は時価って、怖すぎる。

でも、俺はインベントリにたっぷり食材が入ってるから使わないし。


「晩御飯は海鮮BBQにしよう。エミリー、エルザも手伝って。」


「BBQが何なのか分からないけど、絶対旨いだろうと予感がする。行くわよ、エルザ。私、お腹ペコペコよ。」


「了解! それで何をすれば良いですか、ケルビンさん。」


「じゃあ、エミリーは一口サイズに野菜を切ってくれ。エルザは肉をよろしく。その後、この串に刺してくれ。」


俺は魚やエビ、カニの下ごしらえをした。

ついでに魚介をぶち込んだ味噌汁も作ってみた。


海岸に土魔法で竈を作り、鍛冶スキルでBBQ用の網を作製した。

鍛冶スキルで武器を作る前に網を作ってしまった。

何か複雑な気分だ。

残念なのが今持っている調味料が塩、コショウ、砂糖、醤油に味噌ぐらいしかないのだ。

焼肉のタレが欲しい。

今度ミーちゃんに会ったら売ってもらおう。


網の上から香ばしい匂いがしてきた。

サンマの焼ける匂いがたまらない。


「匂いだけでおいしいのがわかるわね。」


「そうですね。内陸の町だからそもそも海産物を食べたことが無いのです。」


「私もよ。」


川魚ですら鮮度の問題で市場に出ることもない。

そのため、魚介類を食べたことのない人が多い。

開いたハマグリに醤油を垂らす。

醤油が焦げる匂いが立ち込める。


「ああああ! もう我慢できない。食べても良いよね?!」


「じゃあ、食べようか。」


「待ってました! その貝は私がもらうわ!」


「私は串焼きの肉を頂きます。」


「エルザは野菜も一緒に食べるんだぞ。」


久しぶりの海鮮料理に感動した。

ウホウホ言いながら食い漁っている2人の女子を横目に味噌を塗って焼いた焼きオニギリを頬張る。

魚も貝もエビ、カニも最高!

味噌汁もうまい!

大満足だ。

また海産物を採取にこのダンジョンへ来ようと誓った。

その夜、温かい布団にくるまってゆっくり休むことができた。

数日はここでゆっくりしたい気持ちはあるが、俺たちには使命がある。

後ろ髪を引かれながら先を急ぐことにした。



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