第19話 サムダンジョン 海編①

ボス部屋の後ろの扉が開いた。

その奥には転移魔法陣があった。

入口の魔法陣とつながっているのだろう。

そして、ここは俺のダンジョンウォークの転移ポイントにもなる。

さらにその奥には下に降りる階段があった。


「よし、6階層へ行こうか。」


階段を降りていくと途中から階段が水没していた。


「はぁ? 洪水でもあったのか? いや、ここはダンジョンだ。」


「もしかして、さっきの腕輪が関係しているんじゃない?」


伏線回収。


ここから先は先程宝箱から出た潜水の腕輪が必要になるのだろう。


「人数分回収してから先に進むってわけだな。よし、ボスを周回するぞ。」


ボス部屋に戻ったが、まだボスはリポップしていなかった。


「時間的におそらく今は夕方ぐらいだろう。部屋前でリポップするのを待ちながら交代で寝るとしよう。」


「わかったわ。じゃあ、ケルビンから休んでちょうだい。」


「そうさせてもらおうかな。さっき晩飯を食い過ぎて眠いんだ。」


2時間後、ボスがリポップした。

俺は起こされて周囲を確認するとボス部屋にはハイオークがいた。


「あれ? エルザは?」


「ワイルドブルがリポップしたのを見つけて走っていきました。」


「相変わらずだな。じゃあ、今度はエミリーが休んでくれ。」


エルザの帰りを待つ。

1時間後に息を切らしたエルザが戻ってきた。


「5階層の魔物がリポップしてたので殲滅してきました。ドロップアイテムをインベントリに収納してもらえますか?」


ソロで全部狩ってきたそうだ。

エルザも強くなったな。

エルザのアイテムボックスは時間経過があるので俺のインベントリへ移した。

それからエミリーを起こし、ボスを始末した。

全て金箱であり、残念ながら潜水の腕輪は出なかった。

贅沢な悩みだが、今は銀箱の潜水の腕輪が欲しい。

箱の中身は、ミスリル銀鉱石1t、スキルスクロール「細工」、魔法スクロール「契約魔法」だった。


細工:アイテムの作製がうまくなる。職業「アイテム作製師」が覚醒する。

アイテム作製師:アクセサリーや魔道具の作製が得意である。

        熟練度があがるとスキルが付与される確率があがる。

        補正値:INT+10%、DEX+10%

契約魔法:奴隷契約、眷属契約、主従契約(テイム)


次はエルザが寝る番だ。

それから潜水の腕輪が出るまでボスの周回を繰り返した。

待ち時間は休憩か上層階層のリポップした魔物を狩って時間を潰した。

3体目のボスで2つ目が。

10体目のボスでやっと3つ目の腕輪が出た。

やっと目標達成できたので3人そろって十分な休憩(睡眠)をとった後、6階層へ向かった。

宝箱からはスキルスクロール「念話」×3、「鑑定」、「剣術」、「弓術」、「設計」、「建築」、魔法スクロール「水魔法」、「火魔法」、「光魔法」、ミスリル銀鉱石、銅鉱石、金貨200枚、銀貨500枚、各種ポーション(ハズレ)を手に入れた。


念話:心の声で会話することができる。

設計:建物やアイテムを具現化するために必要な構造、材料、工程を図面化する。

   職業「設計士」が覚醒する。

建築:建物を設計に基づいて建てることができる。職業「建築士」が覚醒する。


念話は3人で使用し、鑑定はエミリーが使った。

契約魔法、細工、設計、建築は俺が使わせてもらった。

その他、材料とお金以外は売却予定。

設計士、建築士が覚醒したのでいつか夢のマイホームを建築したい。

こそこそ野営しながら日本の料理を作るのは面倒くさい。

しかし、俺たちの使命は勇者が封印されたダンジョンを見つけること。

同じところに長いするつもりはない。

ダンジョンからダンジョンへ向けて旅する人生だ。

マイホームなど夢の話だ。


十分に休憩を取り、疲労、HP/MPを完全回復した。

俺は潜水の腕輪を装備し、腕輪に魔力を込め「潜水」を発動した後、ゆっくりと水没した階段を降りた。

潜水を発動するとHP/MPが毎分10ポイント減少するが、スキルHP/MP回復UPのおかげで±0になるので問題無い。

疑うわけではないが、ドキドキしながら息を吸ってみると普通に呼吸ができた。

不思議な感覚だった。

しかし、声は出なかった。

確認できたので水から上がり2人に伝え、6階層への探索を開始する。

呼吸はできるが、水の抵抗はあるので非常に動きづらい。

遠距離攻撃は難しい。

剣を振るのもかなりの抵抗でゆっくりになってしまう。

魔法もほぼ使えない状態だった。

水を操る水魔法は何とか行けそうだ。

水と風を合わせ水流を操ることもできた。

これを利用すれば近接攻撃を加速できそうだ。

声が出ず、話しが出来ないので念話で検証結果を伝えた。

エルザは使い慣れた槍で行くそうだ。

俺は水流を操りながら刀で行こうと思う。

エミリーは他の魔法を組み合わせながら試していくそうだ。


『複合魔法を獲得しました。』


いろいろ魔法を組み合わせていると魔法を複合できるようになった。

検証が済んだので階段から離れ探索に入る。



*ダンジョン鑑定

 場所: サムダンジョン 6階層

 フィールド: 海底

 宝箱: 1個

 魔物: ジャンピングシュリンプ E-

     アンチョビー E-

     忍びクラム E


*鑑定

 名称: ジャンピングシュリンプ

 ランク: E-

 特技: キック、跳ねる、逃げる、水魔法

 ドロップ: 魔石、小エビ、甘エビ、ボタンエビ、クルマエビ


*鑑定

 名称: アンチョビー

 ランク: E-

 特技: 連帯、ベイトボール(防御陣)、嚙みつく、水魔法

 ドロップ: 魔石、小魚(イワシ、アジ、サバ等)、サンマ、ニシン


*鑑定

 名称: 忍びクラム

 ランク: E

 特技: 潜伏、閉じ籠る、水鉄砲、水魔法

 ドロップ: 魔石、貝殻、2枚貝(アサリ、ハマグリ、カキ、ホタテ)、

     巻貝(つぶ貝、サザエ)、アワビ、ウニ


敵のランクが低いので死ぬことは無いと思う。

ここは水中での戦闘に慣れようと思う。


ジャンピングシュリンプが単独で現れた。

30cm程のエビだがハサミは無い。

物理攻撃力は無さそうだ。

突進してきたのでかわす。

やはり水の抵抗がキツイ。

すれ違う瞬間に尻尾で蹴られた。

ダメージはほとんど無かったが反撃できなかった。

相手の動きについて行くのがやっとだ。

そこに水流を操るエミリーが前に出た。

渦に巻かれてエビの動きが封じられた。

チャンスとエルザが槍で突き刺し撃破した。

俺は何もできなかったことを反省する。


慣れない環境で緊張していて忘れていた。

肝心な索敵を忘れるなんて。


『サーチ』


海底の砂の中に多数の敵が潜伏している。


『エミリー、エルザ、ストップ! 敵に囲まれている。砂の中だ。気を付けて!』


『えっ! 分かったわ。ウォーターストーム。』


海底の砂が巻き上がり、貝の魔物が多数露わになった。

貝の忍びクラムが水鉄砲を放つ。

舞い上がった砂で水の動きが見えるため避けることは可能だ。

地上での風魔法と同じで水中での水魔法は見えづらいので厳しい。


『エルザ、砂が舞っている今のうちに行くぞ。』


水鉄砲を交わしながら接近し、刀に水魔法と風魔法で加速する。


『ウォータースラッシュ!』


水の斬撃が刀から放たれ、貝殻諸とも粉砕する。

エルザは水鉄砲を放つために開いた貝殻の隙間に素早く槍を突き刺し次々とクラムを撃破する。

クラムばかり気にして海底に集中していると上方から小魚の群れが襲ってきた。

ピラニアのように群れで囲み噛みついてくる。

堪らず周囲にウォーターストームを放つ。

小魚の魔物アンチョビーは退避し、ボール状に固まった(ベイトボール)。

エミリーもウォーターストームを放ったが全く利いていないようだ。


『ならばこれでどうだ! ホットウォーターボール!』


固くなったベイトボールに触れ、火魔法と水魔法を複合した熱湯のウォーターボールを叩き込んだ。

内部から熱湯で煮えてしまったアンチョビーは消えていった。

海底にドロップした大量の魚が降り積もったので全て回収した。

久しぶりに魚が食べられる。

町では魚は滅多に手に入らない。

鮮度の問題と川魚なので泥臭く需要が少ないためだ。

エビや貝も同様だ。

その後、水中での戦いにも慣れてきたのでエビ、貝も大量に収穫した。

岩陰にあった宝箱も回収し、7階層を目指す。


宝箱は煙(砂煙)が出たので一瞬玉手箱を思い出したが、入っていたのは真珠の指輪だった。


*鑑定

 名称: 癒しのパールリング

 特徴: HP/MPが毎分20ポイント回復する。


エミリーが装備することにした。


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