第15話 シオン通常ダンジョン
インスタンスダンジョン最深部のボス部屋に出現した転移魔法陣を起動するとダンジョン入り口へ転移した。
いきなり現れた俺たちに入り口で入場整理をしていた係員さんが驚いた。
「おい。今入ったばかりだろ。道に迷って入り口に戻っちゃったのか?」
「今入ったばかり? そうなんですか?」
インスタンスダンジョンはどうやら時間軸が異なるようだ。
俺たちの感覚では何時間、いや何日単位で探索していた気分だ。
でも、腹も減らなかったし、眠くもならなかった。
現実の時間経過では一瞬の出来事だったようだ。
「何を寝ぼけているんだ? 今日は探索は止めて休んだ方が良いんじゃないか?」
「大丈夫です。また入っても良いですか?」
「構わないが、本当に大丈夫か? いくら初級ダンジョンだって油断したら死ぬぞ。」
「はい。肝に銘じておきます。」
そして、入り口からもう一度ダンジョンへ入った。
今回は転移した感覚はなく、通り抜けただけだった。
目の前に広がるのは洞窟と人混みだ。
「これは魔物より人の方が多いパターンだぞ。このまま5階層のボス部屋まで行ってしまおう。」
ダンジョンマップとギルドから貰った地図で最短ルートを選択し、人混みをかき分けながら先に進んだ。
1体の魔物を狩ることなく、あっという間に5階層についてしまった。
するとそこにはボス待ちの長打の列が続いていた。
「俺たちの順番ってどのぐらいで回ってくるんだろうな。」
「帰りたくなってきたわ。」
「でも、ミーちゃんがかわいそうです。約束したです。」
するとダンジョン内にアナウンスが流れた。
『ピンポンパンポーン! こちらはダンジョンマスターのシオンです。只今、ボス9999体目が討伐されました。記念すべき1万体目には高ランクのボスを召喚します。皆さま奮ってご参加ください。なお、命が惜しい方は止めておいた方が良いかもね。では、ご紹介いたします。ゴブリンジェネラル、ゴブリンシャーマン、ゴブリンソルジャーの皆さんです。パンパカパーン!』
「ブォォォォォォ!!!」
ジェネラルが殺意を込めた威圧を伴って吠えた。
ボス待ちの列に並んだD、Eランク冒険者は委縮し、失禁するもの、意識を失うものが多数発生した。
『あれ? 挑戦者はおらんかね? この子たちを倒さないと通常ボスは現れないよ?』
これって俺たちに狩れってことだよね?
まあ、狩るけどさ。
出来れば目立ちたくないんだけどな。
皆、足が震え立っていられなくり座り込んだ。
おかげで耐性のある俺たちだけ立っている。
目立ちまくっている。
『おっと! そこにいるのはあの町の英雄様じゃないか!』
「あの町?」 「英雄様?」 「まさか! ザザヤの英雄様か?」
オイオイ。余計なことを言うなよ。
さらに目立っちゃったじゃないか。
「はぁ~。行くしかないよな。」
「そうだね。」
「スパっとやっちゃいましょう。」
人混みが真っ二つに分かれ、ボス部屋までの通路が出来た。
溜息をつきながらボス部屋へ向かった。
*鑑定
名称: ゴブリンジェネラル(エクストラボス)
ランク: B+
特技: 威圧、咆哮、統率、身体強化・中、剛腕、アイテムボックス、
マルチウェポンマスター(あらゆる武器を使いこなす)
素材: 魔石、オリハルコンの重装備、武器一式、金の宝箱(確定)
*鑑定
名称: ゴブリンシャーマン
ランク: C+
特技: 全属性魔法
素材: 魔石、魔導士装備一式、銀の宝箱(確定)
*鑑定
名称: ゴブリンソルジャー
ランク: C
特技: 剣術、刀術、速攻(最初に攻撃を行える)、加速、回避、縮地
素材: 魔石、軽装備一式、銅の宝箱(確定)
明らかに強そうだな。
スタンピードの時のジェネラルよりランクも上だし、装備もフル装備だ。
しかも、1m以上ある大剣を片手で軽々と振り回している。
シャーマンも身長よりも長い杖を持ち、魔導士のフル装備だ。
どんな魔法を使ってくるのか恐ろしい。
始めに倒しておくべきであろう。
そして、ソルジャーは軽装備で日本刀に似た刀を構えている。
あの刀が欲しい。
ボス部屋へ足を踏み入れた瞬間、またジェネラルが吠えた。
戦闘開始の合図だったのだろう。
一気にソルジャーが攻めてきた。
速攻を発動したようだ。
後ろではシャーマンが詠唱を開始し、ジェネラルはニヤニヤしながら余裕をかましている。
「エルザはソルジャーを、エミリーはでかいのを余裕かましているボスに食らわせてやれ。俺はシャーマンをまず潰してくる。行くぞ!」
「「おう!!」」
エルザはソルジャーの初撃を盾で受け流しカウンターで攻撃を入れたが、さすがCランクだ。カウンターを僅かな身のこなしで回避し、ほぼダメージを負わなかった。
エルザは槍から大剣に切り替え、切り合いが始まった。
五分五分の戦いが繰り広げられる。
その頃、エミリーの雷撃がジェネラルと隣で詠唱していたシャーマンに炸裂した。
ジェネラルにはあまりダメージが無かったようだが、シャーマンは詠唱が中断され硬直していた。
俺は縮地でシャーマンに近づき、斜めに剣を振り下ろした。
「エアスラッシュ!!」
シャーマンは肩から脇腹にかけて斜めに切断され、煙になり消えていった。
詠唱の長い魔法を無防備で唱えているなど斬ってくれと言っているようなものだ。
守らなければならない魔法職を放っておき、速攻で襲ってくるソルジャー。
余裕をかましているボス。
やはりゴブリンはゴブリンでしかないということだろう。
俺は一気に後退し、エルザと交戦しているソルジャーの背後に迫り斬った。
卑怯? いやいや、今は殺し合いの最中だ。
そんな正々堂々と戦っている場合じゃないから。
手下を一瞬で失ったボスはやっと本気になったようだ。
怒りと共に今まで以上の殺意を込めた威圧を放った。
ギャラリーの冒険者は全てが意識を失った。
「これからが本番だ。気合入れていくぞ。エミリーは後衛で魔法攻撃と支援を頼む。エルザ、行くぞ!」
「はい!」
「支援行きます。ブースト! 食らえ、メテオ! ウォーターストーム! ライトニング! ブリザード!」
連続の中級魔法にさすがのジェネラルもダメージを蓄積している。
最後のブリザードで濡れた床と足が凍り付き拘束された。
そこに俺とエルザが到着し、切り刻む。
しかし、フルメタルの重装備のためなかなかダメージが通らない。
振り下ろされた大剣をエルザが受け止め、俺が鎧の隙間を狙って剣を突き刺した。
そこへ剣を通して魔法を叩き込んだ。
「ファイアストーム!!」
鎧の内側で爆炎が炸裂した。
流石のジェネラルも蒸し焼きにされ、転げ回って苦しんだ。
「今だ!」
エルザに合図をした。
エルザはトドメを刺せと言われていることを察し、仰向けになったボスに馬乗りになり、喉元に全体重をのせ槍を突き刺した。
断末魔とともに煙となってボスも消えていった。
数秒間の静観の後、ボス部屋にドロップアイテムが散乱した。
『パンパカパーン! エクストラボスが討伐されました。皆さん、大きな拍手を! って、みんな意識がないか。それじゃ、ケルビンくん。ドロップアイテムを拾ったらコアの間へ来てくれ。』
これがインスタンスダンジョン攻略時には間に合わなかったシオンからの報酬なのだろう。
全員の装備を更新できる。
しかも、武器も様々なものが準備されていた。
あとで吟味することにして全てインベントリへ収納した。
『初めての通常ダンジョン攻略を確認しました。「ダンジョンサーチ」、「ダンジョン鑑定」を獲得しました。』
ダンジョンサーチ:付近にダンジョンを発見した場合にアラームを上げる。
ダンジョンの位置座標を特定し、ナビゲートする。
ダンジョン鑑定:ダンジョンのステータスを鑑定する。
ランク、最深部階層、危険度を判定する。
フロワー内に出現する魔物を特定する。
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