第12話 ダンジョンへ

猫耳おっちゃんから大量の料理を受け取り、温かいうちにインベントリへ収納した。

次々と消えていく料理を見たエルザはまた固まってしまった。


正午出発のダンジョン行きの馬車へ乗り込み町を出た。

今日は2つ隣の町まで行き、一泊するそうだ。

なので野営ではなく、宿へ泊まることができる。


予想はしていたが、馬車の揺れがひどい。

尻が倍に腫れてしまった感じがする。

ケインの時はこんなもんだろうと思っていたが、サスペンションの利いた自動車を知っている健一の記憶がある今は耐えがたい。

しかし、女性陣2人は平気のようだ。

尻の皮が厚いのだろうか?

流石に触って確かめるわけにはいかないので黙って耐えることにした。

なんとか目的地まで耐えた。

そして、思い出した。

俺には治癒魔法ヒールがあることを。

ヒールを唱えれば痛みが引いていただろうに。


この町は宿場町であり、特に観光するような場所は無いそうだ。

しかし、入口近くの売店に座布団らしきものが売っていたので即購入した。

中は綿ではなく、藁だったが。

明日は出発が早いし、やることもないのですぐに宿をとり寝ることにした。


翌朝、日の出とともに馬車が出発した。

今日は数時間置きのトイレ休憩とお昼休み以外は走り続けるそうだ。

盗賊に襲われることもなく、魔物に襲われることもなく順調に旅は進んだ。

そして、今日の目的地に無事辿り着いた。

今日も野営ではなく、町だった。

しかし、宿が足りなく1部屋しか確保できなかった。

今夜は3人同室で寝ることになってしまったのだ。

だが、2人とも警戒心ゼロである。

意識して緊張している俺が馬鹿みたいだ。

いつの間にかに2人とも熟睡し、寝息が聞こえてきた。

阿保らしくなって俺も寝ることにした。

翌朝、エミリーに起こされて目覚めた。

なんか幸せを感じた。


馬車の旅も本日で終了。

お昼過ぎにはダンジョンのある町へ着くそうだ。

今日も順調に馬車は進み、予定通りダンジョンの町へ辿り着いた。

ちょっとしたアクシデントを期待していたのだが残念だ。

神の導きと高い幸運値が利いていたのかもしれない。

今からダンジョンへ入ってもすぐに夜になってしまい帰ってくることになるので、今日は情報収集と観光を行うことにした。

ダンジョンの周囲には探索者向けの店が並んでいた。

武器、防具の店やポーションなどを売る道具屋が多い。

だが、このダンジョンは初級のためお金の持っている高ランク冒険者は訪れることはない。

初心者を騙す詐欺まがいの店も多いので気を付けなければならない。

早速、エミリーとエルザが言葉巧みに騙されていた。


「このナイフ凄いそうよ。切れ味抜群、切った後に炎の追加ダメージがあるらしいわ。それが今なら5金貨ですって! 買いよ!」


「それはタダの解体用のナイフだよ。追加効果なんか無いから騙されちゃダメ。本当の値段は5銀貨だから。」


鑑定持ちの俺は騙されませんよ。

2人に売り込んでいたおっさんはナイフを取り上げ逃げていった。

ワナワナと怒り心頭の2人であった。

そんな2人を宥め、ギルドへ情報取集に向かう。


「ダンジョンの情報が欲しい。」


「こちらのダンジョンは初級ダンジョンでランクはEランクになります。

したがって、Eランクまでの魔物が出現します。

主な魔物はスライム、ホーンラビット、コボルト、ウルフ、ゴブリン等です。

ダンジョン内は魔素濃度が高いため、地上の同種と比べると0.5ランク上がります。

ちなみにスライムはG+、ゴブリンはF+になりますので油断しないようにしてくださいね。

このダンジョンは洞窟迷宮タイプです。

階層は最深部が5階層です。5階層にはボスが居ます。

ボスはE+のホブゴブリンです。

稀にD-に強化されたレアボスが現れる場合があるので気を付けてください。

下層へ降りる階段がある部屋、またはボス部屋前は安全エリアになってます。

休憩する場合はそこを利用してください。

ダンジョンへ入場する場合にはこちらでギルドカードを登録する必要があります。

登録いたしますか?」


「はい。3人の登録をお願いします。入場は明日の朝からの予定です。」


「了解しました。入場する際はダンジョン入り口にあるセンサーにカードをかざしてください。出るときも同じようにお願いします。それで入出管理を行っていますので。入場してから1週間以上退出した記録が無い場合は死亡したと判断し、冒険者登録が抹消されますのでご注意下さい。」


情報も入手できたので宿で旅の疲れを癒すことにした。


「エルザ、ちょっと装備を見せてくれ。」


「はい、どうぞ。何か気になるところがございましたか?」


「いや、強化しておこうと思ってね。」


「強化? そうですか。」


エルザは理解できないと悟って、聞かなかったことにしたようだ。


鋼の大剣★:STR+50

鋼の槍★:STR+40

鋼の盾★:DEF+30

鋼の鎧★:DEF+40

鋼の兜★:DEF+35

鋼の小手★:DEF+25、DEX+10

鋼のブーツ★:DEF+25、AGI+10


よし、強化完了。

エルザとパーティ編成も行った。

そういや、今日も同室だな。

まあ、もう気にしないことにしたし良いか。

明日はダンジョンアタックだし、早く寝よ。

今夜も何もなく朝を迎えるのであった。


「おはよう。エミリー、エルザ。」


「おはよ。ケルビン。」


「おはようございます。ケルビン様。」


「また、様って付いてるよ。ケルビンと呼んで良いって言ってるでしょ。」


「おはようございます。ケルビン。。。」


「ギコチナイナー。まあ、良しとしよう。朝ご飯食べたら早速ダンジョンだ!」


「「おう!!」」


ダンジョンの入口へ向かうとすでに列が出来ていた。


「混み合いそうだね。魔物よりも冒険者の方が多かったりして。」


「その時は速攻ボスを倒して攻略を終えましょう。長居は無用です。」


大人しく列に並び30分ほど待って俺たちの順番となった。

入口の機械にカードを翳すとピッと機械音がした。

登録が完了したらしい。

この身体では初めてのダンジョン。

そして、ポーターではなく探索者として入る初めてのダンジョン。

ポーターとしては何度も入っているのに緊張するな。


「よし、行くぞ!」


ダンジョンに足を踏み入れると暗転し別の空間に飛ばされた。

おかしい。

ダンジョンには普通にトンネルに入る感じで通り抜けるだけのはず。

今は明らかに空間を移動した。


「エミリー、エルザ! 無事か?」


「うん、大丈夫。」


「私も大丈夫です。」


「ここはどこだ? ダンジョンだよな?」


「たぶん? でも、先に入った人たちの姿がないね。」


「もしかして、これはインスタンスダンジョンか?」


「インスタンスダンジョン?って何?」


「簡単に言うとパーティ単位で専用ダンジョンが生成されるタイプのダンジョンのことだよ。」


健一時代にやったゲームにあったインスタンスダンジョン(ID)を思い出した。

ギルド職員がこのことを言っていなかったということはこれは特殊なのだろう。

俺たちが使徒なので特別にIDが発生したのかもしれない。

人混みをかき分けながら魔物を奪い合うダンジョンなんてつまらないし良かった。


『初めてのダンジョンアタックを確認しました。スキル「ダンジョンマップ」を獲得しました。』


『「ダンジョンマップ」が「サーチ・改」に反映されました。』



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