第10話 ポーション革命

「スーザンさん、お久しぶりです。」


「あら、町の英雄さん。お久しぶりね。」


「ガンツおじさんは居る?」


「居るわよ。やっとスタンピードの時の処理が済んでほっとしているところだと思うわ。」


「丁度良かった。ケルビンが溜め込んでる魔物を解体しちゃおうと思って。解体場を使わせてもらうね。」


「わかったわ。買取が必要だったらガンツさんに査定してもらってちょうだい。」


「はーい。」


ギルドの倉庫兼解体場へ行くとガンツさんが寛いでいた。


「おや、エミリーちゃんじゃないか。何か用かい?」


「ケルビンが溜め込んだ魔物を解体しちゃおうかと思って。場所借りても良い?」


「ああ、構わんぞ。今日は仕事が無くて暇してたんだ。」


「そうだ。ケルビン、あいつを出して。」


これはゴブリンジェネラルを出してガンツさんを驚かす流れだな。

ドーンとジェネラルを出してやった。


「うわあああ!」


ガンツさんも弟子たちも変な声を出して驚いていた。

エミリーが悪い顔をして笑ってる。


「おい、何だこの化け物は!」


「こないだのスタンピードのボス。ゴブリンジェネラルよ。」


「初めて見たぞ。こいつを俺に解体させてもらえないか? もちろん、代金はいらん。」


「構いませんよ。魔石だけは下さい。あとはご自由にどうぞ。」


弟子たちも集まり、解剖をする感じで解体し始めた。

エミリーは、ウルフやオークの解体を始めた。


「オークを1体分、猫耳おっちゃんに渡したら美味しい料理に変わるんじゃないかしら?」


「それは良いアイデアだね。おっちゃんなら凄い料理に変えてくれるだろう。」


「何体かギルドにも卸してもらえないか? オークはこの町じゃ珍しいから高く買い取るぜ。」


「たくさんいるし、3体くらいなら良いですよ。」


「ヨシ。スーザンに話をつけてくる。その代わり、解体場の使用料は無償にしておくぞ。」


半日かかったが、全ての解体が完了した。

オーク15体、ハイウルフ20体、ウルフ50体、ワイルドボア10体、ホーンラビット30体、ゴブリン40体、ゴブリンジェネラル1体だ。

オークはギルドに売る3体以外は自分たちで食べることにした。

オーク以外は全て売った。

それから魔石は全て回収しておいた。

そこそこの稼ぎとなった。

ちなみにオークは1体当たり金貨1枚になった。


血生臭かったエミリーがクリーンを使って綺麗になった。

ギルドのカフェでお茶を飲んでいるとジョンさんたちCランクパーティが現れた。


「お久しぶりですね。」


「そうだな。俺たちもそろそろ活動を再開しようと思ってな、ギルドに顔を出したところだ。スタンピードの影響で森には魔物が居なくなっていたからな。」


「そうだったんですか。そうだ、新しいポーションを開発してみたんですが、試してもらえませんか?」


「ほう。どういうものだ?」


「じゃあ、試しに初級ポーションを一口飲んでみてください。」


「ああ、じゃあ一口だけな。。。」


不味いポーションは出来れば飲みたくないものだ。

ポーションは、青汁をさらに草の味が強くして、臭く、そして苦いものだ。

命の恩人の俺から勧められたから仕方なくという感じだろう。


「え? 何だこれは!!! ポーションなのか?」


「はい。初級HP回復ポーションなのでHP+50回復するし、軽いキズは治せますよ。」


「マジか。これは革命が起こるぞ。うまい! 美味すぎるんだ。それに甘い。HPが減っていなくても飲みたくなってしまう。これをケルビン君が作ったのか?」


「はい。中級(ハイポーション)までは作れるようになりました。」


「頼む! 売ってくれ。あるだけ売ってくれ!」


「興奮し過ぎよ。ジョン、どうしちゃったのよ。」


「いいから、ケートも飲んでみろよ。」


「ええ! 美味しい。果汁のジュースよりもおいしい。これのMP回復ポーションは無いの?!」


「残念ながら魔力草が無いので作れないんです。」


「魔力草ならギルドの倉庫にあるんじゃないかしら。ちょっと待ってて。あるだけ買ってくるからMP回復ポーションも作ってちょうだい。」


ケートさんが興奮気味にギルドカウンターへ走っていった。

俺もMP回復ポーションは作ってみたかったので問題無い。

ケートさんが両手に抱えきれない程の魔力草を持ってきた。


「ちなみに何味が良いですか?」


「味のリクエストも聞いてもらえるの? そうね、リンゴ味が良いわ。」


俺は愛用の鍋を取り出し、ウォーターで魔力水を作って鍋に溜め、魔力草を入れて煮込んだ。

リンゴ味をイメージして。


『錬成発動』


リンゴ味のMP回復ポーションが完成した。


*鑑定

 名称: 中級MP回復ポーション(MPハイポーション)

 特徴: MP+200。リンゴ味。


鍋からオタマで小瓶に入れていった。

ジッと見つめているケートさんにオタマで少量すくって味見をさせてみた。

ケートさんは感動し、涙を流していた。

今までポーションを飲むことがどれほど辛かったか思い出しているようだ。

出来た10本のMPハイポーションを抱きかかえながらまた泣いている。

さらに20本を追加してあげた。

HPハイポーションの方もジョンさんの希望でレモン味に改良した。


*鑑定

 名称: 中級HP回復ポーション(HPハイポーション)

 特徴: HP+200。レモン味。深いキズも治すことができる。


それを見ていたスーザンさんが目をキラキラさせながら近寄ってきた。


「ギルドにもそれを卸してちょうだい。絶対売れるわ。」


「えっ? スーザンさんの目が$マークになってますよ? じゃあ、在庫のノーマルHPポーションとHPハイポーションを卸しますからそんなに迫ってこないでください。味は甘いだけですけどね。俺はあくまでも冒険者であって薬師では無いことは忘れないでくださいね。気が向いた時しか作りませんから。」


「わかってるわ。でも、本当にポーション革命が起こりそうね。錬成術師や薬師からクレームが来そうだわ。まあ来たら来たで作れないあんたらが悪いって言ってやるわよ。そしたら改良も改善もしてこなかった彼らも本気になるでしょう。このポーションは通常ポーションの10倍の値で買い取るわね。」


ポーションだけでも生活できそうだ。

しかし、俺には使命がある。

ダンジョンを攻略しなければ。


「ところで、スーザンさん。俺たちは明日からダンジョンに向かおうと思っています。しばらく町を離れますので心配しないでくださいね。」


「気を付けていってらっしゃい。あなたたちなら初級ダンジョンくらい問題無いと思うわ。」


「ありがとうございます。」


ギルドを出て道具屋や市場を巡り、旅の準備を進めた。

猫耳おっちゃんにもオークを渡して料理をお願いした。


「ケルビンと一緒だと本当に楽だわ。買ったものは全て収納できて手ぶら。普通ならリュックに入る寝袋と携帯食、水くらいしか持っていけないのよ。食糧も料理器具もテントも買った。お金には余裕があるし、腐らない。いくらでも入るアイテムボックスは素晴らしいわ。」


「おっちゃんの料理もいっぱい持っていこう。」


「ねえ、ケルビン。ダンジョンでは何が起こるか分からない場所だって言われているわ。不意に事故にあうこともあるの。だから、2人だけじゃちょっと不安があると思うのよ。仲間を増やさない?」


「すぐに信頼できる仲間が見つかるかな?」


「私たちには神様が付いているのよ? 神の導きがあるはずよ。」


「そうなのかな?」


「そうよ。どうしても心配なら契約で縛ることができる奴隷を買うのが良いと思うわ。お金には余裕あるんだし。」


「そうだね。一度、奴隷商を見てみようか。」


『サーチ、奴隷商。ナビゲーション起動。』


ナビに従い、奴隷商へ向かった。

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