第3話 少女と出会う

谷を抜けると草原が広がっていた。


「どっちに進もうかな。ところで、ここはどこなのだろうか?」


マップの範囲内には村や町は無い。

上流に向かって進めばおそらく、この身体の前の持ち主の住んでいた町があるかもしれない。

しかし、町には知り合いがいるだろう。

家族も住んでいるかもしれない。

神が見た目を変えたと言っていたが不安はある。

身体を引き継いだことに気付かれると面倒なので上流側は避けることにした。


「なら下流を目指そう。その前にステータスの再確認だ。」


*ステータス

 名前: ケルビン

 称号: 創造神アリエスの使徒

 性別: 男

 年齢: 15歳

 レベル: 5


 HP: 200

 MP: 150

 STR: 100

 INT: 50

 DEF: 60

 AGI: 100

 DEX: 90

 Luck: 500


 スキル

  インベントリ、鑑定眼、サーチ、気配遮断、身体強化・小、魔力操作

  

 戦闘スキル

  剣術


 魔法スキル

  生活魔法:ファイア、ウォーター、ウィンド、ライト、クリーン

    

 ユニークスキル

  創造神の加護(成長促進、全スキル適正、全魔法適正)、強化、神託


ステータスを確認しながら下流に向かって歩いている。

すると日当たりの良い河原には薬の素材になる薬草が生えていた。

それを採取しながら歩く。

鑑定があるので間違うことも無い。

さらにインベントリがあるので無限に採取できるし、鮮度も落ちない。

冷冷草(解熱薬の素材)、露草(整腸薬の素材)、毒消し草(解毒薬の素材)など様々な薬草が見つかった。

そして、薬草を探しながらゆっくりと河川敷を歩いているとマップに魔物がヒットした。


*鑑定

 名称: ホーンラビット

 ランク: F-

 特技: なし

 素材: 魔石、討伐証明部位(角)、毛皮、兎肉


ケインは知っている。

毎年多くの新人冒険者が、この可愛い見た目に騙され油断し、命を落としていることを。

そんな自分も死にかけたことがある。

だから一切油断などしない。

気配遮断を発動し、ゆっくり近づき、首を一気に切り落とす。

角のあるウサギは「キュっ!」と断末魔の悲鳴を上げ動かなくなった。

周囲にはまだたくさんのホーンラビットが潜んでいるので死体を素早くインベントリへ収納し、次の敵へそっと近寄る。

30羽程のウサギを狩るとレベルアップのアナウンスが流れた。


『レベルアップしました。スキル「採取」、「錬成術」を獲得しました。』


薬草をたくさん採取していたことでスキル化したようだ。

採取された薬草はきれいに尚且つ品質が向上していた。

また、錬成術を覚えたことで薬草から薬を精製することもできるようになった。

生活に困ったら薬師になることもできそうだな。

周囲の残ったウサギを狩り尽くし、さらに下流を目指す。

海に出るのが先か、人の住む町に辿り着くのが先かどっちかな?

前方には森が現れ、先が見通せない。

森に近づいてくると魔物の気配を感じる。

マップにも魔物がヒットし始めた。

かなりの数だ。

身の危険を感じたので即座に気配遮断を発動する。

ゆっくりと森に入るとそこにはオオカミが群れていた。


*鑑定

 名称: ウルフ

 ランク: F

 特技: 遠吠え、連帯、噛みつく、引っ搔く

 素材: 魔石、討伐証明部位(犬歯)、毛皮、狼肉


単体ランクはゴブリンと一緒だが、仲間と連帯し襲ってくるので群れのランクは上がる。

さらに遠吠えでどんどん仲間を集めるので時間をかけるほど不利になる。

一番側にいた一頭を斬りつけた。

一撃で命を刈り取った。

それに気付いた周囲の狼たちは臨戦態勢となった。

しかし、気配遮断を使った俺は狼には認識できない。

目がダメならと臭いで探すが見つからない。

その間にも次々と仲間が倒れていく。

狼たちは恐怖に包まれていった。

後退りするものも現れてきた。


「だが、逃がさないよ。俺の成長の糧になってもらう。」


俺の声がした方へ一斉に目を向ける。

だが、そこには何も無い。

とうとう逃げ出すものも現れた。

回り込んで斬る。

全ての狼を殲滅した。


「俺、結構強くなってきたな。」


数時間前までは遠吠えを聞いて岩陰に隠れて震えていた癖にだ。

狼を全て回収し、先を急ぐ。

足元を見ると先程まで無かった別の薬草が生えていた。


*鑑定

 名称: 癒し草

 特徴: 回復ポーションの素材


回復手段の無かった俺には有難い。

早速、癒し草を使って錬金術を発動し、回復ポーションを作った。

鍋にいっぱいのポーションだ。

買ったらそこそこの値段になるだろう。


*鑑定

 名称: 初級回復ポーション

 特徴: HP+50。軽微な怪我を治療することができる。


「あれ? 作ったは良いが入れ物が無いぞ。」


仕方なく鍋ごとインベントリに収納しておいた。

町に行ったら小瓶を買おうと思う。

その後、猪のワイルドボアやゴブリンにも遭遇した。


*鑑定

 名称: ワイルドボア

 ランク: F

 特技: 突進、頭突き

 素材: 魔石、討伐証明部位(牙)、毛皮、猪肉


『レベルアップしました。スキル「錬金術」を獲得しました。』


*ステータス

 名前: ケルビン

 称号: 創造神アリエスの使徒

 性別: 男

 年齢: 15歳

 レベル: 5→7


 HP: 200→250

 MP: 150→170

 STR: 100→150

 INT: 50→75

 DEF: 60→80

 AGI: 100→160

 DEX: 90→120

 Luck: 500


 スキル

  インベントリ、鑑定眼、サーチ、気配遮断、身体強化・小、魔力操作

  

 戦闘スキル

  剣術


 魔法スキル

  生活魔法:ファイア、ウォーター、ウィンド、ライト、クリーン


 生産スキル

  採取、錬成術、錬金術

    

 ユニークスキル

  創造神の加護(成長促進、全スキル適正、全魔法適正)、強化、神託



採取:採取した薬草等の品質が上昇する。

錬成術:物と物を合成したり、物から物を抽出することができる。

錬金術:物から新たな別の物を作り出すことができる。


「あれ? 人がいるな。もしかして、襲われているのか?」


初めての人との遭遇だが、どうやら危険な状態らしい。

魔物に囲まれているみたいだ。

急いで現場へ向かった。

見えてきたのはウルフに囲まれた少女だった。


「大丈夫かい? 助けても良いかな?」


冒険者の暗黙のルールで戦闘中は横槍を入れてはいけないのだ。

倒した後、素材の取り合いになってしまうからだ。

だから明らかにヤバい状況でも助けが必要か尋ねなければならない。


「はい! お願いします!」


杖を持った魔法職の少女が涙目で助けを求めた。

俺の声に反応しウルフが振り向いたが、俺よりも少女の方が美味しそうと判断したようで再び少女に迫った。

気配遮断を発動した俺は背後からウルフを次々と斬りつける。

気配遮断を解除し、少女へ近づく。


「怪我は無いかい? それに一人で森に入るのは危険だよ。」


「助けて頂きありがとうございました。私はエミリーと申します。ここにはパーティで依頼の薬草採取とゴブリンの討伐に来ていたのですが、ウルフの群れに襲われてしまいました。パーティメンバーは私を囮にして逃げたのです。即席のパーティでしたし、自分の命が大事なのはわかりますが囮にするのはひどいです。本当に怖かった。」


「俺のケルビンだ。膝から血が出てるね。ポーション飲むかい?」


「そんな高価なもの頂けません。これぐらいすぐに治りますから。って、えっ??」


鍋に入ったポーションを見て、ちょっと引いているみたいだ。


「俺がさっき作ったものだから気にしないで大丈夫だよ。見ての通りいっぱいあるしね。」


鍋からオタマでコップに移し、手渡した。


「錬成術師か薬師の方ですか? それにしても素早い動きでしたね。私には見えませんでした。」


そう言えば、俺には職業がまだ無いな。

この身体になってから教会に行ってないから祝福も受けて無いし仕方ないか。


「俺は田舎の村出身だからまだ祝福を受けていないんだ。この近くに町はあるかな?」


こっそりエミリーを鑑定してみた。


*ステータス

 名前: エミリー

 称号: Fランク冒険者

 職業: 魔法使い

 性別: 女

 年齢: 15歳

 レベル: 5


 HP: 80

 MP: 200

 STR: 30

 INT: 150

 DEF: 30

 AGI: 30

 DEX: 120

 Luck: 80


 スキル

  魔力操作、魔力感知

  

 戦闘スキル

  棒術


 魔法スキル

  初級水魔法: ウォーターボール


 生産スキル

  解体、採取

    

 ユニークスキル

  水魔法適正


おっと、魔法使いだ。

あとで魔法を見せてもらおう。


魔力感知:魔力の発生源を特定する。

棒術:棍棒、杖を使った攻撃に補正がつく。

解体:魔物を裁くことがうまくなる。素材の品質が上昇する。


「はい。私が拠点にしている町がありますよ。案内しましょうか?」


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