第2話 2度目の転生、強化
「ここは?」
周囲を確認すると谷底のようだ。
すぐそばに小川がある。
水量は多くは無いが流れは急だ。
「えっと。どこから登れば良いのかな?」
上を見上げると崖は50mはありそうだ。
この高さから落ちたらそりゃ死ぬよね。
どうしようかな。
ジャンプして届くような高さでは到底無い。
かと言って崖を登るにも急すぎる。
とりあえず、下流に向かって歩くことにした。
前回は、幼いころに木の上から落下し、頭を打ったことが原因で使命の記憶を失った。
今回は地球での健一の記憶もあるし、先日までのポーターケインの記憶もある。
地球のファンタジー小説やゲームの知識と科学の知識、さらにCランク冒険者としてのケインの知識を活用して行こうと思う。
ちなみに健一は45歳で事故死、ケインは23歳で殺された。
「そうだ。ステータスを確認しておこう。神様が新たなスキルを与えてくれたって言ってたし、気になる。」
*ステータス
名前: ケルビン
称号: 創造神アリエスの使徒
性別: 男
年齢: 15歳
レベル: 1
HP: 100(生命ポイント)
MP: 100(魔法ポイント)
STR: 10(物理攻撃力)
INT: 10(魔法攻撃力)
DEF: 10(防御力)
AGI: 10(素早さ)
DEX: 10(器用さ)
Luck: 500(運)
スキル
アイテムボックス
戦闘スキル
なし
魔法スキル
なし
ユニークスキル
創造神の加護(成長促進、全スキル適正、全魔法適正)、強化、神託
新しい名前はケルビンになった。
この身体の少年の名前かな?
いや、神様が見た目を変えたって言ってたし、新たな人生を送れっていってたから新規の名前だろう。
おそらくだが、ケインに近い響きの名前にしてくれたんだろうな。
健一→ケイン→ケルビン。うん、似ているね。
あの神様は創造神様だったらしい。
この世界で一番偉い神様じゃないか。
それにしても最高神の加護だけあって凄すぎるな。
新たに得たスキルは「強化」か。
どのようなスキルなのだろうか。
何を強化させるものなのだろうか。
スキルの詳細が見れるようになるスキル「鑑定」が欲しいところだ。
これは健一の知識で分かる。
この世界でスキルは、10歳の洗礼の儀で神より祝福を授かりステータスとともに1つのスキルを与えられる。
ケインの場合はアイテムボックスだった。
これは健一が異世界転生小説から得た知識から最強と思って選んだスキルだ。
しかし、性能はランダム設定で、運の悪いケインは最低性能になってしまった。
だが、今回は期待できる。
現在のLuck値は前回の10倍以上もある。
神様がサービスしてくれたようだ。
その他にスキルは魔物を倒し、経験値を得てレベルアップする際に稀に獲得する。
さらに同じ動作を繰り返し行うことでスキル化される場合もある。
後者は適正が無い限りスキルを獲得することは無いそうだ。
俺には神の加護で全適正がある。
努力すれば報われるだろう。
高ランクの冒険者は複数のスキルを獲得していると言われている。
スキルは公表しないのが冒険者の常識なのでそれはあくまでも噂でしかない。
異世界転生小説に出てくる3大スキルと言えばアイテムボックス、鑑定、言語理解だ。
言語に関してはケインの記憶があるので問題無い。
残りは鑑定だ。
そこでスキル鑑定を得るために河原の小石を手に取り睨めっこを始めてみたが数分経ってもスキルを得られる気配は無い。
これではダメらしい。
神の加護があっても意外とスキル獲得は難しいらしい。
やり方が悪いのかもしれないが。
そう言えば腹が減ってきたな。
「神様が気をきかせてアイテムボックスに何か入れておいてくれていないかな。」
ゲームなら初期装備や薬草なんかが入っているよね。
確認すると、何と! アイテムボックスはケインのものを引き継いでいた。
おかげで携帯食や水も入っていたし、装備も入っていた。
こっそり隠しておいたお金もある。
早速、装備を装着し冒険者スタイルになった。
サイズは自動調整が付与されているのでピッタリだ。
携帯食の干し肉を噛みしめながら下流の崖が低くなる場所を目指す。
ちなみに小石をアイテムボックスに収納してみたが入らなかったので容量は以前のままの最低性能らしい。
あれ? アイテムボックスの中に見覚えのない手紙が入っているぞ?
中を確認すると神様からの手紙だった。
『ケインよ、元気にしているかい? いや、今はケルビンだったな。
この手紙を読んでいるということは無事に転生できたようだね。
スキルの説明をしておこうと思い、手紙を残した。
今回与えたスキルは「強化」だ。
その名の通りスキルやアイテムを強化することができるぞ。
試しに唯一のスキルのアイテムボックスを強化してみると良いと思う。
そして、儂の加護のおかげでスキルの獲得も成長速度も上がっているはずだ。
さらにレベルアップに必要な経験値数も減らしているからレベルアップ速度も速くなっているぞ。
儂に感謝すると良い。
ちなみに魔法は見て学習するか、受けて経験することで獲得できる。
魔法獲得しようと無謀に受け、過剰なダメージで死なないように気を付けるのだぞ。
私の望みは早く強くなって勇者を救う使命を果たしてくれることだ。
期待しているぞ。
陰ながら応援している神より。』
「なるほど。早速、アイテムボックスを強化してみるか。」
『スキル「アイテムボックス」が強化され、スキル「インベントリ」に進化しました。』
インベントリって、あの容量無制限・時間経過無しの高性能異次元収納スキルだよね?
ケルビンは飛び上がって喜んだ。
周囲にあった大きな岩や石を収納しても全くいっぱいになる気配が無い。
「すごいぞ! インベントリは最強だ!」
思わず大声を出してしまった。
遠くからウルフの遠吠えが聞こえる。
今のステータスではウルフに勝てるか微妙だ。
谷間のこの場所では一方通行で逃げることはできないだろう。
自分の愚かな行動を後悔し、岩陰に隠れ息をひそめた。
数十分隠れていたが、ウルフが現れる気配は無かったのでほっとした。
ゆっくりとまた下流に向かって歩き出した。
おっと、あそこに見えるのはスライムか?
ゼリー状の物体が這いずり回っている。
初戦には丁度良い相手だ。
アイテムボックスに入っていたケインの短剣を握りスライムに近づく。
そして、急所であるスライムのコアを突き刺し砕いた。
スライムは液状化し地面に吸収されていった。
残った小さな小石ぐらいの魔石を拾い、インベントリに収納した。
ケインの冒険者の知識は有難い。
しかし、ポーターであるケインはほとんど戦闘には参加していなかったのだが、見ていたので知識だけはある。
でも、スライムくらいなら狩った経験はあるさ。
さらに下流を目指すとスライムが群れていた。
次々とコアを砕きスライムを葬る。
10体を越えたところでレベルが上がった。
『レベルアップしました。スキル「鑑定」、「剣術」、「気配感知」、「隠密」を獲得しました。』
念願の鑑定を得ることが出来た。
やはり経験することでスキルを獲得する確率があがるようだ。
一気に4つもスキルを得てしまった。
スキルの種類はレベルアップまでに経験した行動が影響するようだ。
思い当たる行動がある。
それにケイン時代にはレベルアップするために100体以上のスライムを狩らなければならなかった。
これも神の加護の影響だろう。
*ステータス
名前: ケルビン
称号: 創造神アリエスの使徒
性別: 男
年齢: 15歳
レベル: 1→2
HP: 100→120
MP: 100→110
STR: 10→30
INT: 10→20
DEF: 10→20
AGI: 10→30
DEX: 10→30
Luck: 500
スキル
インベントリ、鑑定、気配探知、隠密
戦闘スキル
剣術
魔法スキル
なし
ユニークスキル
創造神の加護(成長促進、全スキル適正、全魔法適正)、強化、神託
それから周囲に群れていたスライム百体以上を殲滅した。
一気にレベル5に上がった。
*ステータス
名前: ケルビン
称号: 創造神アリエスの使徒
性別: 男
年齢: 15歳
レベル: 2→5
HP: 120→200
MP: 110→150
STR: 30→100
INT: 20→50
DEF: 20→60
AGI: 30→100
DEX: 30→90
Luck: 500
スキル
インベントリ、鑑定、気配探知、隠密、身体強化、マップ、魔力操作
戦闘スキル
剣術
魔法スキル
生活魔法:ファイア(種火)、ウォーター(飲料水)、ウィンド(送風)、
ライト(光源)、クリーン(浄化)
ユニークスキル
創造神の加護(成長促進、全スキル適正、全魔法適正)、強化、神託
レベル3で身体強化、レベル4でマップ、レベル5で生活魔法を獲得した。
生活魔法は魔法なのか?
魔法スキルに分類されているから魔法なんだろうな。
攻撃魔法では無いし、効果も小さい。
でも、クリーンは冒険者にとって必須だよね。
汚れるが、体を洗う機会も少ない。
川があれば水浴びもできるが、冒険中は飲料水の貴重だ。
魔法の獲得方法に3つ目が存在したね。
見る、受けるの他にレベルアップ時に獲得するだ。
魔力操作:魔力を操ることができる。魔法発動には必須スキル。
剣術:剣を扱いがうまくなる。剣スキルを覚える。
マップを確認するとまもなく谷から抜けるらしい。
その前にスキルの強化をしておこうと思う。
鑑定→鑑定眼(相手のステータス、スキルを観察できるようになる)
自分以外のステータスも鑑定できるようになった。
ということは前は自分以外の鑑定は出来なかったってことだね。
まだ誰にも会えてないから気付かなかったよ。
今更、スライムを鑑定する必要もなかったし。
身体強化(STR+10%、DEF+10)→身体強化・小(全ステータス+10%)
全ステータスの強化が可能になった。
小ということはさらなる成長が期待される。
マップ(周囲100mの地図)→サーチ(周囲500mの地図、魔物・人の配置)
地図の範囲が広がり、さらに気配探知を取り込んで魔物や人の位置も把握できるようになった。
隠密→気配遮断
見つけられ難くするだけだった隠密から気配、魔力、匂いを遮断し、認識されることが無くなった。
透明人間化できるようだ。
剣術、生活魔法、魔力操作は強化することができなかった。
強化不可能なスキルがあるのか、熟練度が足りないか、何か条件のようなものがあるのかもしれない。
今は分からないので今度神様に会った時にでも聞いてみようと思う。
次にアイテムの強化も試してみる。
鉄の短剣(STR+10)→鉄の短剣★(STR+20)
革の鎧(DEF+10)→革の鎧★(DEF+20)
革の帽子(DEX+5)→革の帽子★(DEF+10)
革の手袋(DEF+5、DEX+5)→革の手袋★(DEF+10、DEX+10)
革の靴(DEF+5、AVI+5)→革の靴★(DEF+10、AGI+10)
神様の手紙通り、アイテムも強化可能だった。
軒並み性能がアップした。
マップを見ながら先を目指す。
薄暗かった谷底が徐々に明るくなり、崖の壁が低くなってきた。
いよいよ谷から抜けられそうだ。
しかし、谷の出口に魔物がいる。
動きが速いのでスライムでは無い。
低くなった崖を登り回避するか、このまま進んで魔物を倒し、経験値の糧とするか悩む。
ケインであれば迷わず逃げただろう。
しかし、力を手に入れた今の俺であれば倒せるかもしれない。
それに魔物は1体のみだ。
気配遮断を発動し、剣を握りしめ、ゆっくりと近づいた。
魔物が目視できた。
緑の体色、尖った耳、発達した犬歯、1m程の身長。
痩せているが、腹だけポッコリしている小鬼。
ゴブリンだ。
*鑑定
名称: ゴブリン
ランク: F
特技: なし
素材: 魔石、討伐証明部位(左耳)
10mまで近づいたが、全く気付く気配は無い。
意味も無くウロウロしているだけだ。
そっと近づき背後を取る。
胸が高鳴る。
大きく深呼吸をし、落ち着ける。
剣に力を込め、心臓付近を勢いよく貫いた。
「ゴハッ」っと緑の血を吐き、ゴブリンが倒れ動かなくなった。
やったぞ!
幼馴染のバンにゴブリンぐらい狩ってみせろと何度罵られたことか。
一人で念願のゴブリンを倒すことができた。
ケルビンは冒険者として一皮抜けた気がした。
魔石と左耳をはぎ取り、谷の外へ出た。
目の前には開けた草原が広がっていた。
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