ポーターをクビになった俺は2度目の転生を経て最強になりました

蒼い空

第1話 パーティ追放、死

昨日、俺は突然パーティを追放された。

気付くと俺は酒瓶を枕にして公園のベンチで寝ていた。

昨夜の記憶は、隣の知らないおやじに愚痴りながら絡み、やけ酒を飲んでいたところまでだ。

記憶が無くなるまで飲んだのは久しぶりだな。

それにしても頭が割れそうに痛い。


「よっこらしょっと。今日からどうやって生活していこうか。」


ベンチから立ち上がり、よろよろとあてもなく歩き出した。


「あー。。。 頭が。。。 もう酒止めよう。。。」


半目で歩いていると何かにぶつかってしまった。


「おい! こら、おっさん! どこ観て歩いてんだ!」


顔を上げるとオークのような見た目の大男に睨まれていた。


「痛ったたた。これは骨が折れたな。どう落とし前をつけるつもりだ?」


「すまない。2日酔いでフラフラしてたんだ。勘弁してくれ。」


「そんなんで許されると思ってんのか? 俺は骨が折れたって言ってんだ。治療代払えよ!」


「すまんな。俺は昨日無職になって、やけ酒飲んで全部使っちまったんだ。だから一文無しだ。」


「はぁ? ふざけんなよ! ちょっとこっちこいや!」


俺は首根っこをつかまれて人気の無い路地裏に連れていかれボコボコにされた。

意識が遠のいていく。

嘘つかずにお金渡しておけば良かったかな。

本当はアイテムボックスの中に全財産が入っていたんだよね。

それにしても、あいつ手加減なしで殴りあがったぞ。

骨が折れたやつがこんなに殴れるわけないじゃんか。

逆にこっちが至る所の骨折れてるじゃないか。

やばい、このまま死ぬかもしれん。。。

頭の中に今まで経験したことが浮かんでくる。

楽しかった思い出も辛かった思い出も次々と。

これが死ぬ前に見ると聞いた走馬灯ってやつなんだろうな。



★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 



俺の名前はケイン。

田舎の村で生まれた。

そして、10歳の時の洗礼の儀で神から授かった祝福は「アイテムボックス」。

当たりスキルとして村では大騒ぎとなった。

アイテムボックスは非常にレアなスキルで、異空間に荷物を収納することができるスキルだ。

運び屋として貴族や商人に重宝される人材となる。

だが、俺のアイテムボックスは容量が小さく、リュック1個分しか入らない。

それでも重さを感じることなく手ぶらで旅をできるのだから俺としては十分だと思っていた。


俺は同世代の村の子供たちとパーティを組み、冒険者になることを決めた。

メンバーは剣士のバン。

魔法使いのサリー。

僧侶のカリン。

そして、俺は運び屋のポーターだ。

冒険者にはランクがあり、Fから始まりAまである。

その上に伝説級のSがあるそうだが。

数年後、俺たちのパーティはCランクとなった。

俺はカリンと恋人関係になり、バンとサリーも付き合うことになった。

2組のカップルで良い関係であったと俺は思っていた。

しかし、バンは俺の恋人のカリンにもちょっかいを出し始めた。

それで何度も喧嘩になった。


「おい! 運び屋のお前は戦闘にも参加しないくせにカリンといちゃつきあがって、目障りなんだよ。」


「カリンが嫌がってるじゃないか。止めてくれよ。」


「うるさい! 悔しかったらゴブリンくらい倒してみせろ!」


「止めてよ、二人とも。私のことで喧嘩しないで。」


そんなある日、中級ダンジョンのボスを倒した後に事件が起きた。

ボスを討伐すると宝箱が出現する。

そこには武器やアイテムが入っていて、高価なものや珍しいものを得ることができる。

今回入手したアイテムは「マジックバック(小)」というものだった。

これはバックの大きさ以上のものを収納することができ、重さを感じないというものだ。

こんなに小さなバックなのに俺のアイテムボックスの容量を超えていた。

すなわち、このバックのおかげで俺のパーティ内での存在意義が無くなったのだ。


「ケイン、お前は用済みだ。お荷物のお前はもう必要ない。」


「そんなこというなよ。俺たち幼馴染じゃないか。これからも仲良くやっていこうぜ。」


「今後、俺たちのランクが上がる時にお前が邪魔だと言っているんだ。これはパーティ全員で決めたことだ。」


「えっ! カリン、本当か?」


「ごめんなさい。。。」


「フフフ。分かったらさっさと俺たちの前から消えろ。」



★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ 



それから昨夜のやけ酒となったのだ。

俺はカリンと幸せな家族を作りたかっただけなのに。


そして、幼少期まで記憶が遡ったところで異変が発生した。

幼少期の自分の記憶と他人の記憶がオーバーラップし始めたのだ。

見たことの無い高い建物が並び、見慣れない服を着た無数の人々が行き交う町。

一体ここはどこなんだ?


「ケインよ。思い出したか? お前は地球という異世界で暮らし、トラックに引かれて死んだ後、この世界に転生したことを。そして、お前に託した使命を。」


真っ白で何も無い空間で、ぼんやりとした人影が話しかけてきた。


「えっ? 転生? 使命?」


「折角転生させたというのに使命を忘れ、さらに死んでしまうとは。」


「お役に立てず、すいませんでした。」


ああ、やっぱり俺は死んだのか。


「仕方ない。もう一度チャンスをやる。前回はお前が望んだアイテムボックスを与えたのだが、それだけでは不足だったようだ。もう一つスキルを授けてやろう。何を望む?」


ケインは戦う術が無かった。

ゴブリンすら一人で倒すことができなかった。

だから。


「戦える力が欲しい。大切な人を守れる力が欲しい。」


「漠然としているがまあ良い。お前には使命がある。儂の加護も与えるから今度こそ使命を果たすのだ。」


「ところで今更ですが、あなたはどなたですか? それと使命とは?」


「本当に今更だな! 儂はお前たちが言うところの神という存在だ。それと使命はお前よりも先に転生させた勇者「千聖ちさと」の封印を解くことだ。千聖は邪神によりどこかのダンジョンの最深部に封印されている。儂には邪神の妨害で場所を特定することができない。頼んだぞ、ケインよ。」


「わかりました。今度こそ、使命を果たせるように頑張ります。」


「ああ、忘れていた。お前の身体はもう無くなっていたんだった。新しい身体を探すからちょっと待て。」


しばらくすると神が戻ってきた。


「丁度良い身体が見つかったぞ。崖から落ちて重症を負った少年だ。まもなく息を引き取るからお前を憑依させる。見た目は変えてあるから彼の人生を背負う必要はない。新たな人生を送るが良い。」


「わかりました。それとできれば神様に偶にアドバイスを頂きたいので連絡手段をいただけませんか?」


「本当に仕方ないやつだな。教会で祈れば話ができるようにしておこう。他には無いだろうな?」


「ありがとうございます。私の活躍を見守っていただけると有難いです。」


「加護も与えたし、儂の使徒でもあるから力になってやろう。」


神様に見守ってもらえていれば今度の人生は順調に進むだろう。

今度こそ使命を果たすと決心するケインであった。


「準備は良いか? 3度目の人生が幸運であることを祈る。我が使徒ケインよ。使命を果たすのだ。」


俺は瀕死の少年の身体に憑依した。





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