第3話 早くも再登場。女神イスフィリア

 

 みなさんこんにちは。秋本修弥、改めヒナタです。


 目の前に駄……、間違えた女神イスフィリアが再登場しました。

 いろいろ問いただしたい事が多いけど、教会に行かなくても会う事ができるのが不思議です。


『ヒナタさん、本当にごめんなさい。私が間違えてあなたを転生させる肉体を間違えてしまいました……』


 そんなことだろうと思ったよ。

 男の勲章が無くなってて驚いたんだから。


「やっぱりね。さすが駄……女神イスフィリアだ。もしかして本来転生させる肉体は近くにいた男性だったとか?」

『駄? はい、そうなんです。間違えて一緒にいた女性に修弥さんの魂を入れ替えてしまいました。一度植えついた魂は私でも元に戻す事ができないので、せめてもの償いでユニークスキルを与えることにしました』


 そういうことか。

 うーん。文句を言いたいけど、神様に言うのも申し訳ないし、転生させてくれただけでもありがたい。

 っていうか、ユニークスキルって女神様が与えてくれたものだったのか。


「なるほどね。事情は理解したよ。でもこのユニークスキルって何なの?」


 神様も悪気があってやったわけじゃないからな。

 ここはの対応としてこれ以上は責めないようにしよう。

 ……女性なんだけどね。


『そう言っていただけるとこちらも助かります。ユニークスキルはヒナタさん特有のスキルです。この世界では、ヒナタさんしか持っていません。それにユニークスキル自体持っている人はかなり稀なんですよ!』


 それはありがたいな。

 なんか特別って感じがするし。


「そうなんだ。でもなんで強奪っていうユニークスキルを与えてくれたの?」

『えっと、それは始めにヒナタさんが無限収納のスキルを手に入れられるはずだったのに、私のミスにより取得できなかったので……』

「……ということは、この強奪っていうユニークスキルを使えば無限収納のスキルを取得できるってこと?」

『その通りです!』


 なるほどね。それならよかった。

 無限収納スキルは今後の生活では必需品になりそうだしね。

 それを取得出来るとなるとこれから多少は楽になりそうだ。

 でも……あれ?


「でもそれだとわざわざユニークスキルを与えなくても無限収納のスキルを与えてくれれば良かったんじゃないの?」

『えっと…………私なりのお詫びの証です!』


 めっちゃ考えてから答えた。

 多分その発想がなかったのかな?

 この女神様ってやっぱりちょっとだけ抜けてる気がする。

 でも結果的には私が利益を得る形になったわけだし問題はないか。


「……そう。なら折角だからこの強奪スキルについて教えて」

『えっと、強奪というスキルは、死んだ人間や魔物が持っていたスキルをヒナタさんが使えるようになるというものです。とは言っても死後1日以上経過していたりとか、肉体が酷く欠損している場合は強奪のスキルの対象外です』


 なるほど。思ったよりも便利なスキルだ。

 今後たくさんのスキルを得られるのはかなり強力だよね。

 でも便利だけど多少は制限はあるということね。

 まぁよく考えれば死んだ人間や魔物から制限なくスキルを奪えるなら、墓場にでも行けばスキルを強奪し放題になるからね。


「分かったよ。便利なスキルを与えてくれてありがとう」

『いえ、これくらいのことは……』


 でも気になることはある。

 さっきの男性に使った時は何もスキルは得られなかった。

 これはどういうことだろう。


「なら、さっきいた男性のスキルは奪えなかったんだけど、それは死んでからもう1日は経過してるってこと?」

『先程の男性からスキルを強奪できなかったのは、男性に触れていなかったからだと思います。強奪スキルを使用するときは、対象物への接触が必要になります!』


 なるほどね。

 なら戻って試してみよう。

 私は来た道を戻り、男性の体に右手を触れながら詠唱した。


「強奪」


 ……特に変化はないな。

 とりあえず、ステータスを確認してみよう。


名前:ヒナタ

種族:人族

年齢:15歳

職業:魔法使い

HP :64/64

MP :99/127

スキル:水魔法LV3

    風魔法LV2

    火魔法LV4

    無限収納

ユニークスキル:強奪


 おぉ!

 無限収納だけじゃなく、火魔法まで!

 ありがたや。

 名も知らないこの男性はしっかり火魔法で火葬にしよう。


 あれ? 

 ステータスをよく見るとMPが回復してる。

 時間経過によって回復していくのかな?

 それにユニークスキルを使ってもMPは減らないみたいだ。


『スキルは正常に使用できたみたいですね! 私のミスでヒナタさんにはご迷惑をおかけしましたが、これでチャラですね!』


 いや、そういうのはこっちから言うものでしょ。

 まあ、いいけどさ……。


「そういえば気になったんだけど、こっちの世界の人は私みたいにステータスって見る事ができるの?」

『ステータスについてはヒナタさんのように自由に閲覧はできません。ステータス確認用の宝珠があるので、普通の方はそちらで確認することができます。ヒナタさんの場合は、私からの償いの一つとして、ステータスを常に確認できるようにしました。強奪スキルもあるので確認できないと不便ですしね』


 つまりこの世界の人は私みたいに自由にステータスは見れないということか。

 かなり不便そうだけど、私は女神様から与えられたんだ。

 何か特別って感じがして嬉しいよね。

 それにかなり助かる。

 女神様のミスで女になったけど、いいこと尽くめだ。


「そこまで考えてくれていたのか。ごめんね駄女神なんて呼んで……」

『そんなことを思ってたんですね……。まあいいですよ。そう思われても仕方ないことをしてしまったので……。でも普段はこんなミスはしないんですよ! 本当ですよ!』

「分かったから。色々想定外のことだったから焦っちゃったんだよね」

『……そうですよ! その通りです!』


 なんかこの女神様の鈍臭いところ結構好きだな。

 女性になるという異常事態を巻き起こしてくれたけど、まあすぐに慣れるでしょ。


「あ、気になったんだけど、さっき女神様に会うのは教会がどうこうとか言ってなかった? どうしてここにいるの?」

『う〜ん……。それは秘密ですね。でも私はこの世界のどこにでも降臨できるわけではない……ということだけは説明しておきます』


 なんか含みのある言い方だな。

 でも無理に聞き出す内容でもないか……。

 何より女神様に楯突くような発言をして神罰が下るとかは勘弁してもらいたい。


「そうなんだ。でもわざわざ説明のために降臨してくれてありがとう」

『いえ! 女神として当然の義務です! では私はこれで失礼しますね!』


 そう言って、女神様は姿を消していった。

 それにしても強奪は便利なスキルだ。

 女神様には感謝しないとね。

 女になったけど……しょうがないよね。

 こうなってしまったからには諦めて女として生きていくしかないよね。

 とりあえず今この瞬間にやるべきことは、目の前で死んでいる男性を供養することだ。

 そして私は男性に向かって火魔法を唱える。


「ファイヤーボール」


 野球ボールくらいの火球を発現させ、男性を火葬した。

 私はスキルを頂いた感謝を述べながら手を合わせ、燃え尽きるまでその場で佇んでいた。

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