第4話 初めての魔物討伐

 

 みなさんこんにちは。ヒナタです。


 現在私はこの洞窟の出口を目指して彷徨っています。

 なぜ彷徨っているかって? 

 至る所に道がつながっていて迷っているからですよ……。

 もう数時間は歩き続けているな。

 そろそろ休憩しないと体力が持たないよ。


「この辺りで休憩しようかな……」


 正直、結構疲れた。

 食料もないから、水魔法で水を出してこれを飲むしか胃を膨れさせる方法がない。

 このままここにいると餓死しちゃう。

 とりあえずしばらく休憩したらまた出口を目指そう。




 30分程度休憩したことで疲れが取れたのでそろそろ先に進もうと思い、立ち上がる。

 でも出口を探すのって難しいな。私は始めからこの洞窟にいたわけだから出口がどこなのかさっぱりわからない。

 もしかしたら出口とは反対方向に進んでいる可能性だってあるわけだし。

 あー、あと何日もこの洞窟で生き延びないといけない覚悟を決めるべきなのかも……。

 でも足を動かさない限りは洞窟から出られない。うん、とりあえず歩き続けるんだ。


「ん?」


 洞窟を歩いていると、奥の方で何かが動いているような音が聞こえてきた。

 何かいる……。さすがに女神イスフィリアではないとして、まさかの魔物か?

 転生してすぐに魔物遭遇とかちょっとキツいんですが……。


 そんなことを考えていると、音が近づいてきている。

 その音が次第に大きくなってきて目の前に大きな影が見えてきた。

 恐怖を感じながらではあるが、私はその影を凝視した。

 あれは……。


「蛇……?」


 爬虫類は前世で好きだったので見慣れたものだったが、目の前にいる蛇は全然違う。

 とにかく見たこともないくらい大きい。全長8メートルはありそうだ。この大蛇は好きになれない。

 こちらを見て威嚇してきている。

 女神イスフィリアもすぐに命を失うかもなんて言っていたけど、あれはフラグだったのか。

 あれ、もしかして私が転生した時にこの洞窟で死んでいた男女はこの大蛇に殺されたのかな。

 だとしたらいきなりピンチじゃない?

 予想だけど、洞窟で死んでしまった男女は戦い慣れた人達だよね。

 異世界漫画でいう傭兵とか冒険者みたいな。

 そんな人達が殺される程、この大蛇は強いということは私みたいな戦い慣れしていない庶民は瞬殺される。

 ……そんなことを考えていると、大蛇がものすごいスピードで大口を開けながら迫ってきた。


「嘘……。はやっ!?」


 咄嗟に回避したが、かなり危なかった。

 なんか大蛇の牙から紫色の液体が垂れてきている。まさか、毒か……?

 さすがに毒はやばい。本当に死んじゃう。

 とりあえず大蛇の攻撃を回避しながら、魔法で反撃していくしかなさそうだ。


 すぐに大蛇が大口をおけて食べようとしてくる。というより噛み付いて私に毒を接触させたいんだろうな。そうすれば、即死か動けなくなるかもしれないしね。

 とりあえずあの牙は回避して、魔法を放って反撃するしかない。


「ファイアーボール!」


 大蛇の鱗に直撃した。

 鱗? 皮膚? いや、これはもう鱗だよ。

 めっちゃ硬いじゃん。

 傷一つついてないよ。

 なら次は……。


「ウィンドカッター!」


 再度、大蛇の鱗に攻撃を仕掛ける。

 やはり結果は同じだった。

 私の中では最後の攻撃性魔法だったが、大蛇にとっては痛くも痒くもなさそうだ。

 うん、困った。こういう時ってどうすればいいの。

 もう攻撃手段はないんだけど。

 まだこの世界の魔法について詳しくもないから、攻撃が効かない鱗に無闇矢鱈と魔法も使いたくない。

 魔力も消費しちゃうしね。

 攻撃方法に迷っていると、今度は大蛇が私に向かって尻尾を振り払ってきた。


「うっ……! 尻尾も使ってくるのか……」


 なんとか回避はできたがピンチなのは変わりない。

 少し冷静になろう。

 こういうときの異世界バトル漫画の定番は、外がダメなら内から責めることだ。

 次は鱗ではなく大蛇が口を開けた時に火魔法をぶち込んでみよう。

 でも、火球ファイアーボールだとちょっと弱いよね。

 使えるかわからないけど試してみないと私が死んじゃうし。

 魔法はイメージで発動できるのは先程実証済み。

 仕方ない。何もできずに死ぬよりマシだ。

 その後も何度も尻尾の攻撃を回避していくと、とうとう大蛇が私に向かって大口をあけながら向かってきた。


「今だ! ファイアーランス!!」


 槍状にイメージした火矢を大蛇の口に向けて放った。よし、なんとか魔法が発動した!

 やっぱりイメージさえしっかりしていれば魔法は発動できる。

 この大蛇を倒して生き延びられたらいろいろ試してみたい。

 そんなことより、今はあいつを倒さないと!


 火槍ファイアーランスを口に受けた大蛇はもがき苦しんでいたが、致命傷にはならなかったみたいだ。

 かなり怒ってる。目つきが鋭くなって私を睨みつけている。

 こわい。足が震えてうまく動けない。

 このままじゃまずい、本当に死んじゃう。


名前:ヒナタ

種族:人族

年齢:15歳

職業:魔法使い

HP:54/64

MP:50/127

スキル:水魔法LV3

    風魔法LV2

    火魔法LV4

    無限収納

ユニークスキル:強奪


 ステータスを確認すると残魔力50か。

 戦い始めた時にいくつ残っていたか確認していなかったから、どのくらい消費したのかわからない。

 今更後悔しても遅いが、もう一か八かで攻撃してみよう。

 火槍ファイアーランスだと威力があまり出なかったから、次は風魔法でやってみる。

 これでダメだったら本当にマズイ。


 その後も大蛇の攻撃は続くが、先程の火槍ファイアーランスを警戒してか、口をあけずに突進してきたり、尻尾で攻撃するようになってしまった。

 この大蛇頭が回るみたいだ。

 こうやって私の体力を奪って動けなくする魂胆か。


 こんな調子で30分くらい経っただろうか、私の体力も限界を迎えた。

 膝をついて屈んでしまった。足に力が入らない。

 そしてこれを好機と捉えた大蛇が大口をあけて私の目の前に迫ってきた。

 ……もう賭けるしかない!


「エアショット!!!」


 咄嗟にイメージして風魔法で空気を圧縮した大きな弾丸を、私の残魔力を目一杯込めて大蛇の大口に放った。


「グォォォ……」


 大蛇の身体を貫いた。

 うん。すごい威力だったよ。

 血塗ちまみれの大蛇が目の前にいるよ。きもちわるい……。

 でもよかった。勝った……。もう体力も魔力も限界だよ。

 やばい、その前に大蛇に強奪スキルを使わないと。


「強……奪……」


 私は倒れるようにその場で意識を手放した。

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