第2話 現状確認

 

 みなさんこんにちは。秋本修弥です。


 不幸なことに地球で死んで異世界に女性として転生しました。

 うん、やってくれたな。あの女神。

 ちょっと不安要素があったけど肉体を完全に間違えてんじゃねーか。

 何が心配ありませんだよ。ったく。


 それにしても、ここはどこなのだろうか。

 あと、足元の男性と私の元の所有者は何故ここで死んだのか……。

 私自身は特に外傷もなく服に血もついていないけど、死んでいる男性は血塗れだ。

 これは転生によって新しい身体になったことが原因かな。

 この人達がこの洞窟で死んだ原因は誰かに襲われたか、それとも……魔物?

 女神様も魔物がいるって言っていたし、可能性はあるよね。

 でも、現段階ではいろいろとわからない事がありすぎる。


 そういえば、女神様がスキルがどうたらって言っていたよな。

 無限収納が使えるとかなんとか。

 とりあえず現状を把握するためにも異世界で定番のやつをやっちゃうか?


「ステータスオープン」


名前:

種族:人族

年齢:15歳

職業:魔法使い

HP :64/64

MP :127/127

スキル:水魔法LV3

    風魔法LV2

ユニークスキル:強奪


「うわっ! 本当にでた!」


 目の前に突然ステータス画面が出てきた。

 さすが異世界。まさにファンタジーだよ。


 でも……あれ? 名前がない。

 勝手に付けちゃってもいいのかな。

 さすがに前世の名前でシューヤはないよね。性別は女だし。

 ……うん。あとで考えよう。


 えーと、人族で15歳か。

 若返ったもんだな。

 あとはHPとMPか……比較対象がないから高いのか分からないな。

 パッと見ると低く感じるけど、まぁこの世界の平均値を知る機会はいつか来るでしょ。

 それと職業は魔法使いと。

 ……ん? なんでもう決まってるんだ?

 スキルが魔法スキルしか無いからなのかな。

 え? 前世が魔法使い? ど、童貞ちゃうわ!


 ……冗談はこの辺にして、魔法は水と風が使えるみたいだ。

 よし試してみようかな。

 右手を前に出してみる。

 知っているアニメとか漫画だと詠唱したりしているけど、詠唱とかって必要なのかな。

 でも、とりあえず言ってみるか?

 異世界漫画でよく言うアレを……。


「ウォーターボール」


 あ〜! 言っちゃった! 恥ずかしい!

 34歳にもなって何やってるんだ……。あ、今は15歳か。

 でも誰も見てないからいいよね。

 しかし恥ずかしい発言をしたおかげか、結果的には手から野球ボールくらいの水球ができた。

 そしてすぐに、魔法で出した水玉が地面に落ちる。


「本当に魔法が使えた……」


 よかった。スキルがあるのに使えなかったら意味ないからね。

 でも、すぐに落ちちゃったな。

 よし、今度はこの水球を遠くに飛ばすイメージでやってみよう。


「ウォーターボール!」


 お! 飛んでいった! 

 そうか、さっきは水球を出すことしかイメージしなかったからそのまま落ちちゃったんだね。

 やっぱり魔法を使うのにはイメージが大切なのか。

 よし次は風魔法も試してみよう。できれば、攻撃性のある魔法がいいよね。


「ウインドカッター!」


 風の刃が飛んでいく。

 洞窟の壁にあたり、少しだけ壁が崩れている。

 とりあえず、攻撃性のある魔法が使えるため安心する。

 これでもし魔物が出ても多少は戦えるかもしれない。自分の身は自分で守らないといけないからね。

 この世界は前世と違い、危険な場所が多くいつ自分が死ぬか分かったもんじゃない。

 洞窟を無事に抜けたら魔法の勉強をしたいもんだね。


 あれ?

 女神様は確か無限収納があるって言っていたよね?

 ステータス画面にはそんなスキル無いんだけど。

 もしかしてあれか? 転生する肉体が違ったから無限収納スキルを持っていないってこと?

 マジか……。無限収納スキルって結構便利だと思ったんだけどな。

 今後、食料とか資材を持ち運ぶのにスキルで収納出来ればかなり楽ができると思ったのに……。

 このままだと、手で運ぶことになるってことか……。女性の筋力だと大きな荷物とかは無理だな。

 ……ちょっと残念。でも魔法スキルがあったことに喜ぼうか。自分の身を守るために必要だからね。


 とりあえず出口を目指すべく歩き出そうと右足を前に出した。

 その際、ふと足元を見ると先ほど自分が出した水球が地面に広がり水溜りになっていた。

 覗き込むと自分の顔が映っている。


「かわいい……」


 髪は銀髪で肩くらいまであるセミロング、そしてくりくりとした碧眼のぱっちり二重。

 なんか西洋人みたいな見た目だ。この容姿なら日本でアイドルにもなれそうだ。

 胸は……掴めるくらいはあるからCかDカップくらいだろうか。

 なかなかの恵まれた容姿みたいだ。


 あ、名前を考えるんだった。

 別に後でもいいような気がするけど、早めに決めておいた方がいいよね。

 でも、この世界の名前って日本とは違うと思う。

 女性の名前で違和感がないようにしたいけど、こういうの苦手なんだよな。

 ……よし、決めた!


「ヒナタにしよう!」


 初恋の人の名前に決めた。

 え、気持ち悪い? うるさいわ。

 とりあえず、ステータスを確認してみよう。


名前:ヒナタ

種族:人族

年齢:15歳

職業:魔法使い

HP :64/64

MP :97/127

スキル:水魔法LV3

    風魔法LV2

ユニークスキル:強奪


 お、名前が書かれている。

 自分で決めても反映されてよかった。

 今日から私はヒナタとして生きよう。


 それに魔法も使ったからかMPが減っている。

 しかしあの魔法1回で10も消費するのか。

 あまり連発はできなさそうだ。

 あと魔法の練習に夢中で忘れていたけれど、最後に書かれているユニークスキルってなんだ?

 しかも強奪って。犯罪の匂いがするスキルだな。

 少し試してみよう。

 どうやって発動するか分からないけど。

 右手を前に出してみる。


「強奪!」


 うん、何も起きないよね。

 そりゃそうだ。

 このスキルはあとで考えることにするか。


 少し長居してしまったので、この場所から移動しようと思い男女が通ってきたであろう足跡を辿って進んでみる。

 数分進んだところで、前方に何か気配を感じた。


「え、なに?!」


 咄嗟に目を凝らして目の前に集中する。

 何か黒い影がこっちに向かってゆっくり進んできているのがわかる。

 こわい。逃げたい気持ちもあったが、足がすくんで動けない。

 さっきまで周りには何の気配も感じなかったのに、あの黒い影は急に現れたように感じた。

 少しずつ近づいてくる。

 私も警戒しながら目を凝らして相対している。

 すると……




『よかった〜! 見つけたよ、秋本修弥さん! あれ? 今はヒナタさんかな?』


 ……駄女神イスフィリアだった。

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