第17話・山菜狩り

 ふふふ~~ん。ららら~~

 実は、昨晩から私は楽しみで、あまり眠れなかった。

「何か楽しそうですねぇ。マリアーヌ様?」

 フフフッだって楽しみなんだも~~ん。


「ふふふ~わかる? ジョエル君? 今日はこの後、山菜採りに行くんだ~」

「あ。そう言えば今日でしたねぇ? 気をつけて行って来て下さいよ? 迷子にならないように」

「分かってますって。お留守番お願いね~?」

 ふふふ~~楽しみ。


「マリアーヌちゃん準備出来た? 行くよ?」

 ランパートさんだ!

「はいはい! はぁあい! 今行きます!」

「元気だねぇ? て、その荷物……何持って来てるの?」


「あ、これねぇ。山に着いたらみんなで食べようと思って、頑張ってサンドイッチ作ったの! ジョエル君にも手伝ってもらったけどね」

「それはそれは、陛下もきっと喜ばれますよ? では参りましょうか?」


 うわ、皆さんもうお揃いで。え? 馬車は? 馬車ないの?

 ──「え?」

 ちょ、これって?

「何してる、さっさと乗れ!」

 ええ? 嘘でしょ?

 まさか陛下と一緒に? 馬に?

「ランパート!」


「失礼しますね?」

 ちょおおおおおっと待ったぁああ!

 ちょおおおっと

 待ってってばあぁあ

「しっかり、掴まっとけよ!」

 え?




「きゃあああああああ」

「ぎゃああああーー」

「マリアーヌうるさい」

「ずいまぜえええええんぎゃあああ」

「べええがああ、無理いいーーはやあぃい」

「うるさいぞ? 落とすぞお前!」

「速いってえええ怖いいい」

「チッ」


 ……今舌打ちしましたか?


 ──ん? あれ? スピード落としてくれた?

 意外と優しいところあるかも?


「おい、寝るなよ?」

「……寝てませんし」

「キャッ」

 風が……

「大丈夫か?」

「すいません。風で木の葉が」

「これでも被ってろ!」

 え? マント?

 ──陛下の匂い……。

 ハッ、何考えてるのよ私ったら。



「着いたぞ」

 え?

 ちょ、ちょっと……

 そう言って陛下が私を馬から抱き上げて下ろしてくれた。

 私は自分の頬が赤くなるのを感じ、恥ずかしくて俯いてしまった。


 初めて見る美しい森の景色に私は見とれていた。モレシャン島の山々とは全く違う、本物の大森林。木々は天高く伸びていて、薄い霧が深い緑色した木々に白いベールを纏わす。

 木々の隙間から見える青空に、緑の木々と、赤や黄色に色づいた葉がまるで絵画のように互いを魅せ混じり、風にそよそよと揺られ心地良い音と風が吹き抜ける。少し肌寒さを感じ、陛下に借りたマントを私は深く被り直した。


 木々の良い匂いがする。思わず私は深呼吸をして、その匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

「はぁあ。気持ちいい」

「絶対俺の側を離れるなよ? 一人で勝手に動きまわるなよ?」

「分かってますって……」

 子供じゃないんだし……




 ──「きゃぁ。見て見て、鹿がいる! 鹿よ鹿! ねえこっち鹿いた!」

「マリアーヌ様、危険ですから、お一人で移動は……」


「きゃああ見て、うさぎよ! うさぎいたああ!」

「あのバカ!」

「いやん。可愛いい~子うさぎも一緒、あ、待ってぇ~~」


「おい、誰かアイツに首輪つけろ!」

「マリアーヌちゃん! そっちはダメだって! それ以上奥入ったらダメだってばああ!」






 ──「きゃああああああああああ」


「チッ、あのクソ女が!」

「陛下お待ちを!! 我々が」



「た、助けて……く、熊が……」

「マリアーヌそこを動くなよ絶対。そのまま目を閉じてろ! 直ぐ終わる」

「へ、陛下……」


 ──アイスクラッシャー!!


 ズシャン! ドドドドッドドドドーーン

 ドスン!


「レッジン!」

「はっ!」


 え? 助かった? 

 て、陛下が助けてくれた?

 私はまだ震えが収まらない自分の手足を見て、先程の光景を思い出し怖くなった。



「馬鹿もんが! あれほど言ったろ勝手に動くなって!」

「ずいまぜぇんグズッ。グスン、ごめんなざぁぁいグズッ」

「ったく。山を甘く見るな! この時期は冬眠前に獣達も餌を溜め込む為に出てきている。入口付近なら問題ないが、奥に踏み込む馬鹿はいない。その為に兵士を多く連れて来てるんだ。馬鹿もんが!」


「ごめんなさい……つい嬉しくなって」

「ガキかよ」

「だってぇ……」

「だってじゃねえ! 行くぞ!」

 そう言ったかと思うと、私を陛下が抱き上げた。

 

 え? ちょ、ちょっと歩けるって。下ろしてぇえ。

「動くな。じっとしてろ。落ちるぞ!」

「は、はい……すいませんご迷惑お掛けして」

「ったく、はしゃぎすぎだ。そんなに嬉しいならまた連れて来てやるから。ちゃんと俺の側にいろ」

「はい……」

「何処も怪我してないか?」

「はい……ねぇ?」

「ん?」

「本当にまた連れて来てくれる?」

「フッ。いい子にしてたらな?」

「やったーー!!」


「ちょ、お前動くなって。本当に落ちるぞ!」

「えへへへへっ」

「気持ち悪い笑い方すんな!」

「えへへへへっ。ふふふふふっ」

「気持ち悪いから止めろそれ」





 ──「おい、陛下が笑ってる……」

「ああ、俺達の目がおかしいのか?」

「多分な。あの陛下が……」

「ああ、気のせいだ。きっと……」




 その後、レッジンさんとランパートさんにも私は、みっちり怒られました。

 グスン……。

 でも、無事山菜も沢山採れたので楽しかったです。

「えへへへへっ」


「今度その笑い方したら、斬り殺すぞお前!」

 えええええええええ? 



 でも? 何か最近陛下が私に優しくなったかも?










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る