第14話・拷問ですか?

 ──「…………」

 えっと……この沈黙は一体何でしょう? 何かの罰ゲームでしょうか? 

 それとも我慢比べとか? 新しい遊びでしょうか?


 そう、私は「陛下が私を呼んでいる」と言うのを聞いて、ランパートさんの案内で陛下の執務室に今来ている。すると、急な来客があり、急ぎでランパートさんが部屋を出て行ってしまったのだ。


 そして、この広い部屋に私は残され。目の前には『氷帝』様だ。

 先程から続くずーーーとお互い無言の状態。

「用事があるから」私を呼んだのではなかったのかしら? それなのに何でしょう?

 嫌がらせでしょうか?


 私がこの沈黙に堪えれなくなり、モジモジしていると陛下が低い声で一言発した。


「なんだ? トイレか? 行って来ていいぞ?」


 はああああああああああ? なんでそうなるんですか!

 違うし!!!!


「違います!」



「…………」

 再び続く沈黙。


 誰か助けてぇーーーー。

 ランパートさん、帰ってきてええええええええええええ!


「何だ? お前ランパートが好きなのか?」


「ブッ!」

 思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまった。

 いきなり何を言い出すかと思えば。バカか? こいつ?

 そんな訳ないじゃない! そりゃぁランパートさんは良い人だとは思うけど……でも恋愛対象かと言えば? てかそんな話ししている場合じゃなくて!


「違います! 私に何か用事があったのでは?」


 はあ。言ってやったわ!



「いや。別にないが?」



 は? 


 え?


 えええええええええええええええ?


 ない? 用事がないのにわざわざ呼んだの?

 嫌がらせですか? それ?



 涼しい顔をして、嫌味なぐらい長い脚組んで、優雅にお茶飲んでる場合か! こら!


「えっと……用事がないのに呼んだのですか?」

 陛下が少し驚いた顔をした。

「悪いのか?」


 え?


 悪いのか? と言われれば……別に悪いことはしていない? いや? 用もないのに呼びつけるのって悪い? いや? 陛下だし……

 どっちよおおおおお! 悪いの? これ? 

 訳がわからなくなった私は、一気にお茶を飲み干した。


「で?」

 私は陛下に問う。


「で? ん? トイレか?」



 ちがああああああああああああああうしいいい!


 この人、頭大丈夫? アホなんじゃないの? 本当は??


「あ、あのう……特に用事がないのであれば……そろそろ夕食の準備もありますし……戻っていいですかねぇ?」

 私は恐る恐るたずねた。

「ああ? そうか? では楽しみにしている。帰っていいぞ。気をつけて帰るように」


 は? 今、楽しみにしているって言った?

 しかも気をつけろと??

 何か悪い物でも食べた? 陛下??

 私はちょっと心配になったが、この空間に堪えれなくなり、急ぎ退出した。



 ──そして、悪夢はその日一日だけでは終わらなかったのです。


 私が昼食の後片付けを終え、夕食の下ごしらえを終え、さぁ部屋に戻って夕食までの間休憩しよっかな? と思ったら決まってこの人が。


「マリアーヌちゃん。ごめ~~ん。陛下が呼んでる。ついて来て?」

 またですか? 新しい拷問でしょうか? そうね私は「人質」決して休憩ささぬようにとの拷問なんですね……。


 私は渋々、陛下の執務室に行く。

 そして当たり前のように、ランパートさんが部屋を出て行き、私は陛下と二人きりにされる。

 やっぱりこれ拷問なんだわ……。


 流石泣く子も黙る世界最強と言われるシュバイツェルン皇帝軍。

 じわじわと攻めて私の心を折る作戦なのね……。


 負けてたまるもんですか!


 ただ、最近では紅茶と一緒に毎回違う茶菓子が付くようになった。

 心情作戦かしら? 飴と鞭? 流石だわ……。

 まぁ折角だから頂くけどね?


「美味いか?」

「へ? ゴホッ、ゴホッ」


 突然話しかけるの止めてもらっていいですか? 喉に詰まるから!


「ゆっくり食べろ? 誰も取らんぞ?」

 そんなこと誰も心配してませんから!

「ほら? これもやるから食え」

 そう言って自分のお菓子を私の前に差し出す。


 いや、そうじゃないし……。

 この人どうすればいいでしょうか……。


「ところで、何か欲しい物はないか?」

 来た! 過去の失敗をいかし私は速攻で答えた。

「いえ御座いません! 何一つ欲しい物なぞ何もないです!」


「ふーーん? まあよい」


「…………」

 拷問の再開ですね? まぁ最近はお菓子も出るので待遇改善ですかねぇ?


「ところで、お前のその服はお前の趣味なのか?」

「は?」

 私は質問の意図がわからず思わず声を上げてしまった。


「いや? その……何ていうか、独特の? 布を貼り付けたというか? お前の趣味か?」

 ああ、これのことか。そう、私の服は全て島で島民達がゴミに捨ててあった物を拾い集め、それを縫い直した物だった。短くなったり、破れたりすると布を貼って補修して着ていたからだ。でも毎日洗濯してたから清潔ですよ? 一応女の子ですからね。


「いえ、趣味と言う訳ではないんですが、他に持っていなくて……」

 私の言葉に陛下が首を傾げる。

 そんなに、おかしなこと言ったかしら?


「……まぁよい。下がっていいぞ。ではまた夕食時に」



 何だったんでしょう? 今の会話は?

 まぁいいか? 私はちょっと不思議に思ったけれど、行っていいと言われた為早急に退出した。








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