第12話・脅迫でしょ?
私は最近ちょっと悩んでいることがある。
『冷血無慈悲の戦闘狂』シュバイツェルン帝国の【氷帝】の名を聞けば、世界中のみんなが恐れる存在。
そのお方が、最近はずっと城にいるのです。
まぁそのことは、別に良いんですけど。戦争が無いに越したことはないけどね。世界平和が一番!
それは喜ばしいことなんですが、ちょっと別の問題が発生しておりまして……。
先日、私が活魚だと火を通さずとも食せれると言ってしまったお陰で「活魚ゲットの大遠征」を行ったおバカな皇帝様ですが、まあ私の責任とも言えますが……。
それに反省し二度と言わまいと思っていた矢先にですねぇ……。例の如く話は遡ります。
──ある日の夕食時の会話
「ところで、マリアーヌよ。次に欲しい食材は何かないか?」
「へ?」
何いきなり? 欲しい食材? 無理無理。あったとしても絶対アンタにだけは言わないし、言えないわ!
あんな
あ、でも「ミソ」って欲しいのよね……。島に定期的に来る商人さんは帰る時、離れに住む私に毎回必ず土産にって食材や調味料などをプレゼントしてくれていた。そのプレゼントの中にあった調味料の「ミソ」あれがあれば……あれで作る「ミソスープ」って美味しかったのよね……。
商人さんがくれる物は各国から取り寄せた品物が多く、珍しい物が沢山あった。
「ミソ」に「コメ」に「ショーユ」どれもとても珍しく私はいつも楽しみにしていたっけ?
「何だ? その顔は。何か思う物があるような顔だな?」
「え?」
ヤバイ! 「ミソ」を懐かしむのが、もしかして顔に出ていた? ダメダメダメ! 絶対ダメェ!
無駄な遠征は絶対なしよ!
「い、いえ。特に? 気のせいではありませんか? 陛下?」
「気のせい? 今お前、俺に気のせいでは? と申したのか?」
陛下の表情が一気に変わった。そしてそれに伴い一気に温度が下がる。
ひええええええーーまたやってしまった? 私もしかしてまた、余計なこと言った?
私殺されちゃう?
「マリアーヌ、もう一度
これ絶対に言わないと、ヤバイ雰囲気よねえ? 忘れました~~とかって笑って誤魔化すとか通用しそうな人じゃないし……。言わないと殺されちゃうわよねぇ? 今日はレッジンさんもランパートさんもこの部屋に今いないし……。私が逆らったらジョエル君の命も危ないわよねぇ? これって……。
──最悪だわこれ……。
「言え!」
きゃああああああああーーーー
や、やめていただけませんか? 寒いです。へ、陛下……。
髪の毛、凍りそうです。
ほら? また花瓶の花が粉々ですよ? 陛下?
「えっと……たいした物じゃないので……わざわざ言う程の物じゃなくて……」
「言え!」
どんどん部屋の温度が下がって行く。部屋にいた給仕の女中さん達はみんなブルブルと震えている。
ジョエル君は部屋の隅でガタガタと震えながら縮こまっていた。
ごめんよ。みんな……私のせいで……。
「言います! 言いますから! 陛下! 寒いってばああ! 温度戻して!」
──徐々に室温が元に戻りはじめた。
あなたホントに止めてもらえませんかねぇ? 私達を冷凍保存する気ですか?
────そう私は「氷帝」の半ば脅迫とも取れる尋問によって「ミソ」の存在を吐かされたのでした……。
私のせいですか? これ? これって脅迫ですよね?
ごめんなさい! 兵士さん!
この、私の不注意? 事件から1週間後。
例の如く「大遠征団」が帝国軍港に集結されたのは言うまでもない。
本当にごめんなさい……。
あれってイジメよね? ある意味?
ランパートさんとレッジンさんに今回も私が謝りに行くと、ランパートさんは「良いんじゃない? 旅行気分で? 陛下が喜ぶなら? それにマリアーヌちゃんも食べたいんでしょ? なら俺も食べたいかな」って笑顔で言うし……。
レッジンさんに至っては「『ミソ』以外に欲しい物はないのか? あれば何でもこの俺様が手に入れて来てやるぞ?」と豪快に笑っていた。
やっぱりコイツら頭おかしいわ……。
兵士さん本当にごめんなさい!
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