第5話 煙焔落城


はてさて本筋の方では長州様のお屋敷を後にし、目的の商家に向かっているわけですが、話は此処で折り返し。


此処で幕間、語りで御座います。


歴史というのは面白いモノで、習う時期で内容が大きく異なる事もあれば、育つ土地で少々変化する場合もありますな。


そして、そもそもの明治維新というもの自体が、革新的な出来事であり近代化の先駆けと讃える声もあれば、文明の破壊であり稚拙な簒奪であり帝国化に至る理由とさえ言う方も見受けられます。


その事自体は個々人のご判断と私は思いますが、様々な思惑が渦巻く中で悲劇的な出来事があったのは事実。

中でもよく語られるのが、白虎隊でしょうか。


幕府に殉じた会津藩。


個人的な見解としましては、幕府に殉じた、というより、それ以外の選択肢を奪われたと思えてならない藩です。あくまでも個人的な意見ですが。


会津藩に降りかかった災禍は身の毛もよだつ出来事で御座いました。

戦争というものの醜さ、悲惨さを物語るものです。


しかしながらその理由を、維新側、つまりは薩長のみに求めるのはどうかと私なんかは思ってしまいます。

会津側の落ち度もあれば、悲劇というものであれば薩摩・長州が関ヶ原後に被った冷遇も大概でしたので。

予防線のように聞こえるでしょうが、決して悲劇や惨劇自体を是ともしなければ、それを行った罪を減ずるつもりはありません。


しかしながら、未来に生きる者としましては、惨劇や悲劇をそれ単体だけで見るのは勿体ないでしょう。

その物事前後の出来事を知る術が我らにはあるのですから。


歴史を見る上で個々の出来事を見るのか、流れを見るのかは好みなのでしょうがね。


やってはやり返され。


力なき者は歴史の流れの中で息絶え、それを見る者は、その当時の常識という価値観に縛られる。

明治維新というものは、人の業といいますか、そういう人の醜さが集約した出来事だと思う事がしばしばあります。


国を憂う若人が高い志で立ち上がり、万難を排して老害を打ち破ったサクセスストーリーと見るのか、国難に瀕した国で、利己心に満ちた愚か者が夥しい被害をまき散らして為した国盗りと見るか。


或いはその両方か。

或いは他に要因があると言われるか。


または全く違うと言われるのか。


それこそ人それぞれでありましようし、学者先生のご意見でも分かれるのではないでしょうかね。


まあ、そんな出来事を都合良くピックアップし、面白おかしくするのが物語であり、それ故に私は嘘っぱちの歴史物と冠している次第に御座います。


まあ大層な事を言っておりますが、いつも通りの場つなぎのよもやも話で御座います。

会津の名を出したのも話の伏線ですな。


著名人も出てこぬお話で御座いますが、どうか最後までお付き合い頂けますよう伏してお願い申し上げます。

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