繰ゆる糸うずたかく
歌が聞こえた。
湖をすべり、流れる草の海を軽々と越えて。
私はそれを聞いて、泣きたくなった。
風が吹いて髪がうるさく顔を叩くけれど、それが何だというのかしら?
歌が聞こえる。
さよならと、海は寒いと、岸はただ灰色だと。
ああ、でもそれが何だというの。
あなたのいないこの大地は、緑に溢れて花が咲き誇っている。
あなたがいなくてもここはとてもとても美しいわ。
さよなら。
さよなら、歌を聴けて嬉しかった。
振り返ってきらめく波の白光の眩しさに私は目を細めた。
その向こうに霧の様に掻き消えたあの船の行方を、私は今も知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます