繰ゆる糸うずたかく

歌が聞こえた。




湖をすべり、流れる草の海を軽々と越えて。




私はそれを聞いて、泣きたくなった。




風が吹いて髪がうるさく顔を叩くけれど、それが何だというのかしら?






歌が聞こえる。




さよならと、海は寒いと、岸はただ灰色だと。




ああ、でもそれが何だというの。




あなたのいないこの大地は、緑に溢れて花が咲き誇っている。




あなたがいなくてもここはとてもとても美しいわ。




さよなら。




さよなら、歌を聴けて嬉しかった。






振り返ってきらめく波の白光の眩しさに私は目を細めた。




その向こうに霧の様に掻き消えたあの船の行方を、私は今も知らない。

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