Report.24: 引き寄せられる縁




 建造物だった。


 まるで岩壁から彫り出されたような巨大な壁のように見える。その外壁の岩を這うように、あるいは突き破るように太さもまばらな木の幹が生える。本体たる大樹から枝分かれして生じたそれらは、上の方で再び合流して樹洞の天井を形成していた。

 その幹に埋もれる外壁に見え隠れしながらかたどられるのは、頭部が何らかの獣の形をした彫刻だ。ファンタジーで云う所のいわゆる『獣人』と呼ばれるような造形。しかしかたどられたそれらは、まさに遺跡の壁画で連想されるような造形をしていた。目の形は糸目のが多いけど。

「何でこんな所に———」

 あの会議の映像で見た遺跡に似ている気もするけど———考古学分野には明るくないのでどう判断すれば良いのやら、だ。

 そういやその考古学者のいる第二陣が今日あたりに到着するって言ってたっけなぁ。


「やれやれ、無人惑星で二度目の未知との遭遇とはな」

 そんな若干現実逃避的な事を考えていると、後ろの足元から声がした。振り返ると、ちょうど誰かがよじ登ってきた所だった。水質班のひとり、ラムゥン・ジラソルだ。この間の立ち話の時は腕に巻いていた、ハニカム模様のバンダナが今は頭に巻かれている。結び目は右耳の後ろ辺りに来ていて、まさに『海の男』という感じだった。


 次いで顔を見せたのはその護衛のセルヴェージャ・エピード。今朝 合流して驚いた。この前あんな事があったから来ないものと思ってた。

 次に上がって来たセルヴェージャ・ガルデンも「ほう」と眼を開く。顔の形も体形もエピードと同じ。けれど、エピードが山葵わさび色の髪に一筋の深緑メッシュを入れている対して、ガルデンのは苔色(海藻の海松みる色にも似てる)と色彩が異なっている。さらにその髪には薄い蜜柑色や暗い紅色、黒などの渋い色のビーズや、白い羽飾りを散らしていて割とお洒落で———これなら顔が同じでも視覚的に間違わずに済みそうだった。


「自然に飲み込まれる遺跡の話は聞かない訳ではありませんが———どうなのですか?」

 そんなお洒落な外見とは打って変わって誠実そうな澄んだ声。ちょっと硬い気もするけど、ガルデンは好青年という印象だった。


「あっと・・・ 地殻変動とかで元の位置からだいぶ動いてたなんて話は聞いた事ありますね」

 プラシオが戸惑いがちに答えた。ようやく我に返ったらしい。

 僕もそれに続いて心当たりを口にする。

「僕も植物に飲み込まれた遺跡の資料は見た事があります。 けど———」

 僕はもう一度建造物を見上げた。

「流石に地上100Mまで持ち上がった遺跡は知らないですね……」


 最早 完全に植物に飲み込まれている。

 というか、もういっその事『幹をくり抜いて造った』と錯覚しそうなレベルだ。建物の材質は素人が見ても石だと判るのに———それ程までに、この樹洞と馴染んだ遺跡。僕は慎重に考えを口にした。

「元々は地上にあった筈の建造物が、樹の成長と共に持ち上げられたんでしょうか」

「そんな事あり得るモンなのか?」

 僕の推測にエピードがジラソルへ水を向ける。

「フツーは無いだろうな。けどこの惑星ほし、色々と常識が通じん所があるからな……」

 ジラソルさんも首を捻っている。


「ひぅっ・・・!」

 そこで息を殺したような悲鳴が樹洞の中を木霊した。

 振り返るとそこには今日のメンバーの紅一点(アズリィルを除けばだけど)アルマニヤク・ヴァージニアの姿があった。腰を抜かしたのか四つん這いになったまま、前方の遺跡に目が釘付けになっている。出発する時はまだ大丈夫そうだったのに、今は顔が真っ青だ。ガルデンが傍に寄って行ってその背中に手を添えた。


「本当に大丈夫なのか、アルマニヤク」

 サルドの声が厳しく問いかける。登木直前や最中でも繰り返し行われ、聞こえてきていたものだ。樹洞ウロの壁際に寄って立つ彼は、声と同じく厳しい表情で腕を組んでいた。眉間に皺も刻まれていて、まるで睨んでいるようだ。


「だい じょうぶです!」

 つっかえながらも気丈に応えるヴァージニア。表情は確かに力強い。けれど肝心の声は震え、裏返ってしまった。それでも何とか立ち上がり背筋を伸ばす彼女を改めて見る。


 目線は僕より若干低いくらいだろうか。女のヒトにしては高身長だ。おとなアズリィルはもちろんマリオンよりも大きく見えた。


 ———最初に顔見せした時はもっと違った印象だった筈だけどなぁ。


 マリオンのさらりとして手入れの行き届いた黒曜石の髪とは対照的に、彼女の銀色の髪は今 くすんで灰色に見えた。全体的にボサボサと跳ねているのを見るに、傷んでもいるようだ。足元も『ようやく立っている』といった有様で、微かに震えているのが判る———初対面の頃の印象は霞んで見る影も無い。


 サルドはその様子に鼻を鳴らすと、樹洞ウロの外を見下ろした。ぬっと下から手が伸びてきて、最後の一人が登って来る———デュモンだ。

「よっと。 ふう・・・これで全員上がったか」

 エピードが密かに舌打ちしたのがばっちり見えてしまった。感じ悪い。


「さて、何も無ければ休憩地点としても良かったが、長居はできそうにないな」

 サルドが遺跡を見上げて思案する。


 ———今日はもうここで引き返すしかないのかなぁ。


 僕もそれに倣って目の前の建造物を改めて見上げた。明らかな人工物。先日の海底遺跡の件といい、僕らの手に余るのは火を見るより明らか。

 あの時は海獣に襲われたと言っていたし、もしかしたらこの遺跡の付近にも何らかの怪物が潜んでいるかもしれない。急いで撤収した方がいい。

 頭ではそう解ってる、けど・・・。

 今日の探索は道半ばに終わってしまった。中途半端だ。久しぶりに基地周辺から離れてここまで来れたのに。いったい何処に向ければ良いのか分からない『悔しさ』や『落胆』がお腹のあたりをぐるぐると掻き回す。

 何より申し訳ないと思うのは———


「すみませんジラソル。プラシオも———せっかく付き合ってくれてたのに」

「気にすんなって」

 プラシオが笑って掌を振った。ジラソルも微笑み頷く。

「そうだな。今回は残念だったが、またしばらく出掛けられないようだったら遠慮なく言ってくれよ」

 二人が優しい。目頭が熱くなってきた。


 プラシオもジラソルもそれぞれ僕とヴァージニアの付き添いだ。

 単独調査禁止の弊害———今回のチームに限らず、どうしてもチームの誰かにとって専門外の場所に赴く事は避けられなくなっていた。今回はそれがプラシオとジラソルに当て嵌まる。

 いやヴァージニアだって、同じヘリに乗って近くまで一緒に来る事はあったとしても、こんな所まで着いて来る必要は無かった筈だ。

 誰が見ても怯えているひとつ歳上の女の子。今の彼女を見れば、海底遺跡で巨龍に襲われたあの日———目の前で自分の護衛ガルデンが負傷した時。どれ程の恐怖が彼女に降りかかった事だろう。発見してしまったこの遺跡のせいで、心的外傷トラウマを呼び起こさせてしまったかもしれない。


 ———仕方がない か。


 せっかく登ってきたのに。残念しかない。

 半分だけでもサンプリングできた事を『良し』と、前向きに考えるしかなかった。

 ジラソルが僕の頭をくしゃっと撫でで行き、続いてプラシオが肩を叩いて降りる準備に取り掛かる。僕も もう一度遺跡を見上げて、ようやく足を外の方へ向けた。拭いきれない未練の息を吸い込んだ時———


 ≪先に行っておるぞ≫


 途端に軽くなる背中に立ち眩む。「はっ?」と振り返れば、幼女が遺跡の中へ駆け込む姿に目を剥いた。

「ちょっ——— アズリィル!」

 降りる準備を始めてしまった為、皆 僕よりも樹洞の出入口側だ。遺跡と僕の間には誰もいない———誰も、アズリィルを止められない。

 あっという間に遺跡の壁を塞ぐ樹木の向こうに見えなくなってしまった。あの暴走天使め。


 ぽん、と肩に手が置かれた。ジラソルだった。

「・・・どんまい?」

 気不味そうな顔と目が合わない。

 プラシオも顎に手を置いてふむと頷いた。

「やっぱ、お前の彼女 思い切りが良過ぎじゃね?」

「いやだから。彼女じゃないから」

 何コレ居た堪れない。


 ———帰ったら説教してやるっ。


 キッとアズリィルが消えた辺りを睨みつける。

 この前のサルドを参考にしたねっとりした物を用意しよう。参考にできそうなサンプルはたっぷりある———主に彼がデュモンとレインに聞かせてた奴だ。喰らえばいい、巻き添えの成果。


「好奇心いっぱいだな、お姫様は」

 そのデュモンがやれやれと端末に手を伸ばした。

 エピードが横からそれを止める。

「待て、俺が追う。これ以上アンタの稼働時間が減ったら足手まといだ」

「だったら俺のフェリスを出す。何が起こるか判らんからな———こうなった以上、前衛に立てるドローンは温存しておくべきだ」

 それをさらにサルドが止めて、端末を操作し始めた。すぐにこの前見た茶虎色のマヌルネコがサルドの足元から出現する。


「キャンティ殿 其方、指揮官候補だったか」

「指揮官候補?」

 ガルデンが言った事に首を傾げると、エピードが口を開いた。

「適正をクリアすると現場と上の繋ぎ役や有事の際の司令塔として昇格する事があるんだ———そいつみたいな『やらかし』の無い、完璧な奴って事だな」

「こら、エピィ。一言多いぞ」

 ジラソルがエピードをたしなめる。


 ———棘が鋭いなぁ。


 気に入らないのは充分解ったけど、他所でやってほしい。幼女の単独行動のせいで、点けなくても良い火種に火を点けられたみたいだ。雰囲気悪い。

「あの似非天使め……」

 そう考えると思わず愚痴が出た。

 たとえこのまま帰ったとしても、今日 到着した連中の誰かが確実にここに来る筈なんだ。何たって今後は考古学者がいる。場所が場所だけに、僕も再びここに来れる可能性は高い。


 ひょっとしてもう来れないと思ってる?

 確かに僕、この前の戦闘の時アレから遠出できてなかったけどさ。

 焦らなくて良いって言ったのは誰だよ。


 先走って行ったアズリィルの事をもやもやと考えていると、横からぽんっ、と肩を叩かれた。意外な事に ガルデンだった。


「そう気を腐らせぬ事だ。落ち込んでばかりいると、保たぬぞ」


 落ち込む。

 落ち込んでいたのか。僕は。

 しかもそれをガルデンに慰められた。

 自分の護衛対象ヴァージニアがあんな状態なのに、さらに僕にまで気にかけてくれて。

 デュモンもだけど、メンタルケアまで出来るなんて護衛班って凄い。

 そういえばマリオンの護衛のアウインからも、不器用な心配、してもらったっけ。


 僕はすっかり誰かさんを棚に上げて、気分を持ち直した。そこにもう一度「そうそう」と、ガルデンから声が掛かる。

「行くと決まれば警戒は怠らぬ事だ。先程ラムゥン殿が仰ったように、この惑星ほしは色々と常識が通じぬ。あの子供が心配なら、尚の事 気を引き締めねば———落ち込む暇も浮かれる暇も無いぞ?」

 ばちこんとウィンク。

 僕は思わず笑った。

 口調は堅物でも、ガルデンは随分気さくなヒトのようだった。



   * * *



 建物内に足を踏み入れると、そこはすぐに階段になっていた。冷んやりとした空気。壁に沿って、所々植物に突き破られながら、上へ上へと上っていく。

 木や壁、天井には寄生木なのか、ヒトの手が届かない高い位置には、まん丸なコブ状の苔のような物が集まって生えている。ここは水中じゃないけど、何だか毬藻マリモみたいだ。アレが陸上に上がったんだろうか。

 光源は瓦礫や樹の隙間から辛うじて差す筋状の光だけ。少し歩いて目が慣れて来たとはいえ、暗いものは暗い。


「こう暗いと気が滅入ってくるな」

「なんだ、意外と臆病じゃないか。図体の割に大した事無いんだな」


 先頭でデュモンとエピードの険悪な会話が聞こえる。先頭を買って出たデュモンに張り合って、止せば良いのに何故かエピードがほぼ横並びで歩いている。空気が重い。

「エピード。お前そろそろ良い加減にしろよ」

 続いてジラソル。彼が出した『浮遊燈』がすいと横切って不機嫌な顔をほんのり照らす。明るすぎると逆に周りが見えにくくなるので、光度は足元を照らせる程度と今は控えめだ。

 この『浮遊燈』も調査班の装備のひとつ。僕とプラシオの傍でもふわふわと漂っている。色はそれぞれ微妙に異なっていて、ジラソルのは淡い藍玉色アクアマリンなのに対し、プラシオのはライムイエロー、僕のは明るいセピアっぽい色をしていた。


 ジラソルの後ろ———僕とプラシオの前を並んで歩いているのが、ガルデンとヴァージニアのふたり。

「大丈夫ですか、ヴァージニア」

 ガルデンが隣を歩くヴァージニアに声をかけるも反応が無い。

 すぐ後ろを歩く僕とプラシオもどうしたんだろうと彼女の背中を注視した。再度ガルデンが声をかける。

「・・・ヴァージニア?」

「ひゃいッ!」


 屋内に悲鳴が木霊した。響いたそれにまた肩が揺れる。彼女は自分の声の大きさに自分で驚き、キョロキョロと周囲を見て———全員の視線が一時ヴァージニアに集まっている———髪を何度も撫でて縮こまる。

「 なっ なんでシょう」

 声まで小さくなった。ジラソルが振り返ってヴァージニアの様子に眉を顰める。

「顔が真っ青だぞ、ジニア」

「やはり無理してませんか? 遺跡の出口まで引き返しましょう」

 ガルデンが彼女の肩をさする。が、ヴァージニアはその手からサッと離れてしまった。

「だいっ だいじょぶですっ。わたっ わたっしも 行きますっ」

 わたわたグルグルと手をあちこちに動かし、最終的に彼女は自分の胸の前で手を叩くように拳を合わせた。手を鳴らしたような打つけたような、どちらか分からない音が鳴る。痛く無いのかなアレ。

 何事も無ければまるでコントのような仕草に、ジラソルが悪戯っぽく笑った。

「怖かったらガルに くっついてても良いんだぞ」


「へーきですっ!!」


 です!!

 です!

 です…



「 ゴメンナサイ・・・」

 反響した声が聞こえなくなった辺りで、ようやく絞り出された か細い声。両手で顔を覆うヴァージニア。耳が出ていたら赤くなってそうだ。ジラソルもやりすぎたと思ったのか「すまん」と申し訳なさそうに頭を掻いた。


「無理そうでしたら遠慮なく言ってくださいね、ヴァージニア」

 彼女はこくりと頷いてガルデンを見上げた。

 二人の立つ位置は丁度光が指す場所だった。暗い屋内から切り出されたようにキラキラと輝いている。まるでラブシーンの一場面のようで———僕らはいったい何を見せられているのか。


 やがて歩みを再開した二人の後を、プラシオと二人で続く。

 ヴァージニアの掠れた声が聞こえてきた。

「小さい子が一人で行ける所です。わたしもがんばル、なきゃ———でないと・・・」


 ———あんまり大丈夫そうじゃないなぁ……。


 現実逃避気味に目を逸らす。

 そこは丁度 壁に亀裂が入っていて、青瑠璃色の切り取られた空が見えた。空を切り取っているのはこの大樹の本体らしき幹の壁だ。そのさらに向こうに地平線がうっすらと淡く藤色に霞む———年月を経た石壁や、その壁を這うように生える木の幹の有様で忘れそうになるが、やはりここは地上100Mなのだと認識させられる景色だった。

 ふと何かが過った気がして眉を寄せると———

「スコッチ」


 後ろから声をかけられた。殿しんがりを務めるサルドだ。

 くいっと視線で正面を向くように促され、流されるままそちらを向く———いつの間にかプラシオたちが階段を上り切っていた。意外と長く足を止めてしまっていたらしい。

 足早に階段を上がって追いつくと、光が漏れる壁に突き当たっていた。正確には、樹木と瓦礫で埋まった行き止まりだ。


「行き止まり・・・か?」

 ジラソルの『浮遊燈』がふわりと飛んで壁を照らす。

「いや、ラガーの膝下辺りに穴がある筈だ」

「どれどれ———おっ あったぞ」

 サルドの情報通り、樹木と瓦礫には隙間が空いていた。ちょうど小動物が通るには充分の大きさだ。まさにアズリィルのような小さな子供がギリギリ入れそうなサイズ———なんだけど、嘘だろアズリィルさん。

「もう一度言うけど。お前の彼女 スゴすぎね?」

「彼女は違うけど、度胸がヤバいのは認める」


 動物しか通らないような獣道。

 しかも動物が営巣の為に拵える巣穴の入り口のようなひっそり具合。確かに本当は幼女どころかヒトですらないって知ってるけどさ。アズリィルって一応 女の子だろ? 『女は度胸』なんて古い言葉はあるけど、限度ってあるじゃんか———これならビビりまくってる今のヴァージニアの方がマトモに見えるよ。


「この先はどうなってんだ?」

「広い空間になっている。今のところ害になるような物は見当たらない」

 デュモンの問いにサルドが片手で顔を半分覆いながら知らせてくれた。

「お姫様は」

「この先で大人しくしている」

 サルドの両目を覆うような形状に展開されたスクリーン。一見ただの半透明のゴーグルにしか見えないけれど、彼の視線が泳いでいるのは分かる———何か表示されているみたいだ。さっき出した『フェリス(マヌルネコ)』の視界が映ってるのだろうか。どう見えてるのかな。気になる。


 デュモンが左の鎖骨の辺りから、右手でカードを引き抜くようにナイフを取り出した。持ち替えてこちらを向く。

 今更だけど、この惑星の全てが今はまだ保護対象だ。原則・現状維持———予定外に発見してしまった遺跡はもちろん、こんな木の枝一本でも、無闇矢鱈に傷を付けるのはなるべく避けたい。

 けれど今はそうは言っていられない状況になってしまった。要救助者(本当は違う筈だけど)幼女の救出の為だ。仕方ない。

 まあ良いけどね。ここを通るぐらいのものなら。


 念の為 腕の端末でサンプリング状況を確認する———よし、この通路もここを塞ぐ木も記録できてる。これなら帰ってから電空ラボの再現機能が使える。

 僕が頷くと、デュモンも頷き返す。藍玉色の『浮遊燈』に照らされた彼の手元がグリップを握るのが見えた。

 キュィィ・・・という微かな音———『音響刃フォノン・ブレード』の駆動音だ。


 対象にゆっくり近づいていった黒刃は、まるでチーズを切るようにすらりと木を裂いた。



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