Report.5: 幼女は一枚上手でした




 食事と後片付けが終わり、後の事を若干目がギラついているように見える整備班に引き継いだ僕は、デュモンとも別れて宿舎寮へ続く廊下の分岐路で待っていた。


 足元には今 アズリィルはいない。

 マリオンが施設のバスルームへ連れて行ってしまったのである。


 部屋には着衣のまま入れるナノシャワーも装備されているし、ポッドにだってメンテ用の機能がついているのだから、僕としてはそれで充分だと思った。その通り言ったら全力で止められ。居合わせたアウインにまで加わられたらもうすっかり断れる雰囲気は消え失せてしまっていた。何でだ。


 ———まだかなぁ。


 女の子のお風呂って長い。

 壁にもたれて窓の外に目を向けると、自分がうっすらとガラスに映るようになっていた。


 それもその筈。さっきまで茜色だった窓の外には今、地平線にうっすらと黄色と暗い緑色が残った夜の始めの空が広がっている。地平線の輪郭になっているのは、昼間見た目測樹高約数十Mの高木の森だろう。確かここは、地球よりも日照時間が少しだけ長いんだったっけ。今回の調査で季節の有無とかも判るのかな?

 事前調査では衛生軌道上からの映像解析しかできてない。僕も地球で見たけど、その精度は低く、とても充分とは言えない代物だった。珍しい事らしい。

 だからこうして、この惑星の地上で実際の夕日を眺められた事すらも、人類にとって重要な一歩になるんじゃないだろうか。


「お待たせ〜」

 そんな事をぼんやり考えていると、マリオンがアズリィルを抱きかかえながらやって来た。

 隣にいるのは食堂でも彼女と一緒にいたルチルとリモーネか。確かマリオンとは同期で、それぞれ衛生班と気象調査班のヒトだった筈だ。

 体温が上がっているのか、天井の両側に並ぶ間接照明の下ではあるけど、4人ともいつもより血色が濃い肌の色をしていた。ほんのり湯気もまとっているようだ。基礎体温35℃前後の低体温・色白のシリカノイドだけど、しっかりあったまった姿は平常時のヒューマノイドと変わらないものらしい。


「はい バトンタッチ」

 そう言ってマリオンが僕にアズリィルを預けてくる。慌てて受け取ろうとすると、幼女はほとんど目を瞑ったままの状態で進んで僕の腕に移ってきた。これ絶対寝ぼけてるな……。

「はぁ〜 ちっちゃいけど重かったぁ」

 それは悪態とかではなく とても喜んでいるような感じだった。くふくふとほころぶように静かに。彼女と一緒に他の2人も笑っている。


「えっと マリオン、 たちはこの後どうするんだ?」

 途中で突っかかった事を誤魔化すようにアズリィルを抱え直す。何だか自分の心拍数が上がっているような気がした。

「私たち? これから3人でパジャマパーティーよ。レッドは ———あら、そう言えば電空大丈夫だった?」

「……やっぱりあちこちバグってた」

 プラシオに打ち明けたのと同じように返す。後ろの2人がさっきからクスクスと声を抑えて笑うのにはちょっと居た堪れなさを感じた。僕 変な事言ってるかな?

「そうなの…… じゃあ今日は無理そうね」

 眉尻を下げて残念そうにちょっと首をかしげるマリオン。なぜだろう、なんだか撃沈された気分だ。腕に抱えたアズリィルの重さが(そんな筈は無いのに)ずっしりと増した感じがする。


「明日からの探索 頑張りましょ、レッド。おやすみなさい」

 マリオンがそう締めて廊下の向こうへ消えていく彼女たち3人を見送った。ポツンと取り残される僕。・・・と、幼女。


 うーん 女の子。

 ワカラナイ。


 僕は自分の腕の中にいるアズリィルに目を落とした。

 しばらくの間、ふわふわと3人を見送っていた幼女がハッと我に帰る。そしてこちらを見上げ———くそっ 何だよその盛大なため息は。ため息吐きたいのはこっちだ。


 その後、部屋に着くまで仏頂面で抱えられたままだったアズリィルは、後ろで扉が閉まるなり床に降り立ち、くるりと振り返って口を開いた。 が、そこで何か声が発せられる事なく不発に終わる。その場で眉間にシワを寄せ口に袖を寄せ、何やらうなり始めた。


 そんな幼女に首を傾げつつ 入って右手の個室のひとつに入る。そこは着衣のまま入れるナノシャワー室である。入ってカウント10で終了だ———やっぱりこっちの方が早いし、便利だと思う。

 シャワー室の隣は簡易キッチンだ。


 ———ポッドに入る前に何か温かい物でも淹れようかな。


 ヤカンが仕舞われた棚に手を伸ばそうとして、がくんと反対の腕を引っ張られた。何事かと幼女を視界に捕らえてうっかり怯む。


 幼女の目が据わっていた。

「アズリィル……さん?」


 僕が目を白黒させている間にポッドの前まで連れて行かれ、手を引かれるままに中へ引きずり込まれ———痛い!お約束のように頭を打ったぞ!

 そのまま幼女がモニターを操作し———って何で使えんの僕教えてないんだけど!?


 何やら操作を終えてモニターを消した幼女は、目を瞑って小さな手を胸の辺りで組んだように見えた。『見えた』とは袖はそのままにして 服のちょうど胸辺りの所でもぞもぞと動いていたからだ。その表情はまさに『やる事やりきりました』と言う感じである。

 思わず『電空に入りたいなら口で言ってくれ』と不満を溢しそうになって、そう言えば幼女の時はほとんど喋れなかったのを思い出す。仕方なくアズリィルに倣って僕も目を閉じる事にした。そこでふと気付いた事がある。


 ひょっとして、電空内なら幼女形態でも流暢に喋れるんじゃないか?



   # # #



「しゃて、しゃきほどにょつぢゅきじゃが」


 盛大に噛んだ。

 ダメだったか……。

 アズリィルがわなわなと震えだす。直前まで自信満々だった金色は涙で潤いだし———突然のロケット頭突き!?

 ハラがっ・・・!


「じんきゃいのはっちぇいかんきょうはどうなっちぇおゆのじゃ!」

「っっ痛ぅ……僕に当たらないでくれよ!」

 くっ 一瞬でも油断した僕が間違いだった。八ツ当たり暴力天使め!

 せっかく治まった幻痛が、今度は腹に出そうな予感ていたたたた痛い! 追い討ちやめろこら!


 チャリーン


「誰か来た!」

 耳元で響いたベルの音に反応して天使の攻撃(?)範囲から撤退し、エア・モニターを展開する。後ろで「ぬぅ、いぎゃいとまちょもにはにゃちがちゅつまにゅな」と呟いて1人で撃沈しているのが聞こえてきたような気もしたけど気のせいだ。同情なんてしない。


 表示されたモニターで許可すると、入り口のドアの向こうで何か大きな物が落ちる音と悲鳴。それも二つ。


 ———これも、バグってた・・・。


 ギリッと歯が鳴る。

 持ち主が入る時のポイントは正常だったからてっきり大丈夫かと思ってたのに……。油断したなぁ。


 恐る恐る入り口の扉を開いてポーチを覗けば「ありがとなデュモン」と痛そうに肩をさするプラシオと、それに応えて床に大の字になったまま腕を挙げるデュモンの姿。慌てて一気に扉を押し開けた。


「あ レッド、出現ポイントが天地逆転してたぞ」

 僕が近寄るより先にプラシオが立ち上がった。何が起きたかを添えて。

「げっ 大丈夫だったのかそれ!?」

「おう、デュモンこいつが受け身取ってくれたからな」

 このポーチ部分の天井は大体 低い家の二階の天井に届かないくらい———つまり6、7Mはある。初期設のままにしておいたのが仇になったか。こうなるとマリオンが来れなくなって良かったと思うしかない。フクザツだなぁ。


 僕はデュモンが起き上がるのに手を貸した。デュモンの方が体格が良いから僕の方がちょっとよろける。こうして見ると、やっぱりデュモンの方が背も高いなぁ。確か歳も4つ上だった筈だ。

「まあ一応本職だからな。これくらい大した事ねぇよ———しっかしここで痛いのなんて珍しいな……」

 デュモンがガサガサと頭を描きつつ、不思議そうに出現位置だったらしい石造りの天井を見上げた。それでハッと我に返り青褪める。

「ごめん…… 実は衝撃に対する変数値が現実リアルに戻ってるんだ」

 まるで『カバンの中に放置したバナナが腐ってた』と打ち明けた気分である。短い筈の沈黙が痛い。


 デュモンのひらっと挙げられた掌が優しい。

「まあその・・・良いことあるよ?」


 ———あると良いなぁ。


 屋外でもないのに風が吹いた気分だ。気まずい。


「んじゃまあ バグ出しするか?」

 この空気を吹き飛ばすようなプラシオの明るさ。救われるなぁ。


「俺は増築部分に再チェックかけるから、お前は動作環境やってくれ。メモの共有頼む」

「うん。ありがとう……元に戻すのは自分でできそうだからリストアップだけ頼むよ」

 申し出に頷きつつ、電空の環境設定を呼び出し共有する項目を選択する。流石にバグの修正までお世話になる訳にはいかなかった。自分の物なのだから、自分で直せる所は直したいのだ。


「うっし。じゃあ俺も体張るぜ」

「えっ」

 そこで予想外な事にデュモンが申し出てきた。思ったより大きな声が出てしまう。勢いよく振り返ったせいでちょっと首が痛い。

「動作環境のチェックだろ? 俺なら受け身も巧いぞ」


 ———そりゃあ本職だもの。


 さっきプラシオを守ってくれたように、護衛班なだけあって身体を張る事には確かに巧いだろう。巧いけれどもだ。


 既にさっき、幻痛として残りそうな衝撃を受けさせてしまっている筈である。


 もし万が一 明日にまで響く幻痛ものをさらに負わせてしまった日には目も当てられない。そしてそれで怒られるのはおそらくデュモンだけだろう———そんなの申し訳なさすぎて、しばらく顔向けできなくなるじゃないか。


 ———デュモンって時々自己犠牲精神が旺盛なんだよなぁ・・・。


 活き活きとした顔が眩しい。尻尾でもあればブンブンと振れまくる様が見えるようだ。

 どうしたものかと頰を掻いてふと視界の端にアズリィルを捕らえた。例の蘇芳の色のビーズクッションに沈み込んでモニターを・・・。

 何で勝手に開いて見れてるんだどうやったんだアズリィルさん。


「申し出だけありがたく貰っておくよ。その代わりアズリィルの相手をしてほしいな……なんて」

 声は少し裏返っていた。

 顔だってもしかしたら引き攣っていたかもしれない。


 そうだ。たとえ中身は幼女ではなくとも、誰かに接待・・・ではなく面倒?いや話し相手? をしてもらえた方がいい。このまま放っておく方がなんか怖い。

「む そうか。そりゃ確かに———悪かったな嬢ちゃん」

 気さくに声を掛けに行ったデュモンの背を見てほうっと一息吐く。

 これで勝手な事は されなくなるだろう。たぶん。


「じゃあ就寝時間までにとっととやっちまうか」

 プラシオは展開された共有メモや彼自前の設計図のエア・モニターを従え移動を始めた。入口付近から始めるらしい。

 僕は作業用のエア・モニターの横にデュモンが展開したのと同じ物を展開した。これで検索システムの動作履歴を録る。これで何かあったらすぐに確認できるだろう。


 まずは歩き回って行動動作チェックかな?

 プラシオが入り口から時計回りに歩くようだから、僕は正面の元祭壇やステンドグラス側から同じく時計回りに回ろう。一緒に本棚周りの動作チェックもして———ああそう言えば上空での行動も見逃しがないか一応チェックしておかないと。他には小部屋と照明、環境システムに———


 ≪おい 赫いの≫


 頭の中で声が聞こえて立ち止まる。

 顔を上げて左右へ視線を向けるが、近くには誰もいない。


 プラシオはモニターを従えて、増設した柱や本棚をあちこちコンコンと叩いて既に強度チェックを始めているし、デュモンはアズリィルを抱える形でクッションに腰掛け、一緒にモニターを見ている。


 ———変だな。空耳か?


 耳を押さえて首をかしげ、作業に戻ろうとした所で更なる声。


 ≪聞こえておるようじゃの———フフッ これは良い物を見つけたのう≫


 僕は飛び上がった。

 今のは比喩だ。

 比喩だけど!


 ———電子通信コール!?


 嘘だろ? 読書中に邪魔されるのが嫌だから、この図書館内ではその機能はオフにしてあるのに———これもバグか?


 電子通信コール機能の設定箇所を検索!


 あった!


 けど、おかしい。

 しっかりオフになっている。どうして———いやそもそもあいつ、電空ここに入ってくる時、教えてもないのにポッドの操作できてたな。

 さっきだって勝手にモニターを開いて———まさか・・・。


 僕はこの10分間の動作履歴を呼び出した。

 今デュモンとアズリィルの所には検索用モニターしか出ていない。

 モニター表示履歴には・・・やっぱり残ってない。


 まさか。モニター無しで設定を変えられたのか!?

 履歴にも何も痕跡を残さずに!?


 ≪どうやら妾とこの空間の相性は良いようじゃのう≫


 その言葉にハッと顔を上げればニヤリと笑うアズリィルと目が合う。それは およそ幼女ができる顔じゃなかった。


 ———やられた!


 いつもの僕なら『モニター無しで操作なんかできるもなのか』と感激する所だ。けれど今は、とてもじゃないけどそんな気分になんかなれそうにない。あれ、なんだろう———目頭が熱いな?


「うっし、じゃあこの本を『取り寄せ』っ と、ありゃ」

 そこでデュモンの声に我へと返り、慌てて検索設定を呼び出した。

「レッドー 『取り寄せ』が飛んでるぞー?」

「・・・っ 確認した!」

 返事をしながらもう一つのモニターにバグをメモする。後ですぐに見つけられるように問題のある箇所に目印も付けた。


「じゃあ行くか、お姫様」


 ———どこをどう見たらそれがお姫様になんか見えるんだデュモン!


 喉まで出かかった言葉を何とか飲み込む。そんなに丁寧に抱え上げなくても良いんだと声を大にして言いたい。

 本棚列の向こうへ消える2人を見送って、僕は今日 何度目か分からないため息を吐いたのだった。


 誰か、そろそろ僕を褒めてほしい。



   * * *



「これで良し」

「一通り終わったな」

 僕とプラシオは床に倒れていた。


 バグは合計32ヶ所———うん、今日中には終わらないな!


 医務室から帰ったばかりの僕ならここで『ラドンめ』と悪態を吐く所だったけれど、今はもうそんな気は起こらなかった。思い出されるのは食堂でのあの事件———整備班長ラグナによる公開リンチである。

 あれで大分、いやかなり溜飲は下げられた。

 とてもスッキリした。


 同時に恐怖も覚えたけれども。

 まあ安い対価だったと思う事にしよう。


「助かったよプラシオ、ありがとう」

「いいって事よ。あとは大丈夫か?」

「うん、空いた時間に 少しずつ気長にやっておくよ」

 修正予定の箇所が記入されたメモを『共有』から『個人』へ戻しておく。

 こうして見ると動作のバグの方のが多いぞ。通りであちこち打つ訳だよ。構造体やアイテム類はそれほど———いや、何箇所かとんでもないのがあったか。踏んだ瞬間足場が抜ける階段とか。蔵書のカテゴリ位置が一部ごっそり入れ替わってたのは痛いな。探しに行ったデュモンとアズリィルが迷ってた。目当ての本は結局、アズリィルが自力で見つけたみたいだけど。


 ———そういえば、アズリィルはどうしてるかな?


 あれからしばらく『本を取ったら道連れがあったぞ』とか『問題なく読めるぞ』とか、事ある毎にありがた迷惑な報告を電子通信コールで受け取っていたけど、今はすっかり静かだ。いつの間に聞こえなくなっていたんだろう?


 デュモンの方を見れば、クッションに腰掛けて口元で人差し指を立てる姿。その腕の中で幼女が寝息を立てていた。就寝時間まではまだ充分時間があった筈だけど———小さい子は眠る時間も早いらしい。


 うん『小さい子』。

 こうやって見ると普通の『小さい子』だ。


 アズリィルを片手で抱えながらゆっくりと立ち上がったデュモン。座っていたクッションを片手でさっと整えそっと幼女を寝かせた。

 その間に僕は電空内の時間を昼から夜へ進めた。これは照明の代わりの設定だ。

 採光用にと高い所に開けた窓やステンドグラスの向こうが、青空や明るい白から星空やぼんやりとした月明かりに変わる。足元でふわふわ浮遊する柔らかなライムイエローの光は、足元を照らすフットライト代わりの蛍灯グロウライトだ。


「うっし じゃあ帰るか」

 しばし蛍灯の漂う様子を眺めたプラシオが起き上がった。足を軽く払って腰を伸ばす姿に、疲れも心地よさに変わっていく。


「おやすみレッド」

「明日からよろしくな」

「うん おやすみ」


 2人が音もなく消えていった。瞬間的に立ち昇った細い光の筋が粒となって はらはらと空気に融けていく。


 それを見届けた僕は、アズリィルの眠るクッションへ近寄り、床に開いたまま落ちていた本を拾い上げた。開かれたページに栞紐を挟んで本を閉じる。ちょうど蛍灯グロウライトが手元を照らす位置に寄って来て『そういや何の本を見てたんだろ?』と、そんな事が頭を過ぎった。

 ほのかに照らされた分厚く大きな本の表紙。そこに踊る文字に目を滑らせ———首を傾げる。


『世界の幻想生物図鑑』


 例の、けっこうグロい姿の天使の記述がある本の内の一冊である。


 ———何だろう。エゴサでもしたのかな。


 すでに閉じたページをもう一度開こうとした所で あくびが出て手を止める。

 照明を夜にしたせいかな。それともずっと作業してたせいだろうか———急に眠気が降ってきた。

 何を見ていたかは明日にでもアズリィルに聞いてみよう。

 答えてくれるかは微妙だけど。


 僕はローテーブルを出してそこに本を置いた。さらにモニターを操作しようとし、再びあくびが出て手を止める。


 ———出るの面倒だな。


 幸いこの四阿あずまやの床には、さっきの作業中に敷いた毛足長めのカーペット(ふかふか)がある。この辺りにバグは無かったし、このまま寝ても大丈夫だろう。このまま寝堕ちるか。


 アズリィルが寝ている場所に影響が無さそうな位置でクッションを背もたれにして沈み込む。持ち主ぼくが眠れば自動的に電空から堕ちてスリープモードに入るだろうし———念の為に……目覚ましだけセットして・・・うーん ゲンカイ。

 夢うつつに頭の後ろでもぞもぞとクッションが動く感触がした。寝返りでも打ったかな。


「おやすみ」

 どちらの声かは分からなかった。



   * * *



 長かった1日目がようやく終わっていく。


 いよいよ明日。

 僕らは ついに未開惑星の土を踏む。



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