顔が広い

「私も平板さんみたいにすっごくければよかったんだけど」


 おしゃれな喫茶店のオープンテラスで由美はため息をつきながら言った。


「平板さんのは天性の才能だからね。でも羨ましいよね。と楽して稼げるもの」


 薫も由美の言葉に同意し、うんうんと頷いた。


「ほんと平板さんが羨ましいわ」


「ほんとよね」


 二人は空を見上げた。そこに平板さんはいた。


 身長が数十メートルある巨人だった。そんなことよりも、とても男だった。身体に比べてもあまりにも広すぎる顔を持っていた。空を覆い、地を隔てるほど広大な顔だった。その顔にはいろんな広告が貼り付けられ、一部は伝言掲示板と化していた。少々落書きもされていた。


 生きる人間広告塔、それが平板さんだ。

 彼の一日は優雅極まりない。朝起きて、夜まで街で好きに遊ぶ、これだけ。それだけで彼には広告収入がたんまりと入ってくる。羨ましい限りの人生だ。目立ち過ぎるきらいがあるが、それこそ広告塔に相応しい資質なのだ。

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