月光

歩き出した千恵子の目の前に大きな満月が見えた。

涙で潤んだ目で見た満月の輪郭は、ぼやけて歪んでいた。

「それでも美しい月に比べて、私は何と醜い姿だろう」

「もう、彼は追って来ないだろう…」

「明日から、どうやって彼と業務を遂行しようか…」

千恵子は全てを諦めて、お腹の子供の為に生きていく事を改めて決心した。


「待ってくれ!」

後ろから浩二の叫ぶ声が聞こえ、駆け寄る気配を感じる。


月明りが、離れている二つの影が一つの大きな影に溶け込む様子を映しだしていた。

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