第2話 恐怖のリサイタル!


 きょうも平和なスクールライフをエンジョイした放課後、女番長のサチコが皆をよびだし、その理由をチヨコが説明した。


「いいこと!? 来週はここで、サチコさんのリサイタルをおこなうから! 皆さん、そのつもりで!」

「えっ!? サチコさんのリサイタル!?」

「また隣の学校の人たちがサチコさんの歌を聞きにおしよせてくるわ!」

「今回はかなり盛り上げるから、集客はたのむわよ!」

「ふふっ! 楽しみにしてるぜ☆! サチコさん!」

(あっ! 太郎くんがサチコさんにウインクを! うらやましい!)

「……チッ!」


 舌打ちしたサチコがハナコに怒鳴った。


「ハナコ! よそ見してんじゃねえぞ!」

「はっ! いけない! わたしったら、また目をつけられてしまう!」

「ハナコ、あんたは100人集客するんだ!」

「え! そんなの、無理だよぉ……!」

「出来なかったらわかってんだろうなぁ!?」

「あっ……!」


 顎を掴まれ、強制的に視線を合わせられる。


「罰として、いつものスタジオで、勝負下着を着たあんたの撮影会をするからな!」

「そ、そんな! サチコさんがわたしに着せる勝負下着は、いつも大事なところが見えるすけすけのやつだから、すごく恥ずかしいのに!」

「嫌なら集客するんだな! ま! むりだろうけど! 行くぞ! チヨコ!」

「失礼いたしますわ! オーホッホッホッ!」

「ああ、なんてこと! 100人なんてそんなのむりに決まってる。またいつものようにエッチなすけすけの下着に着替えさせられて、サチコさんプロデュースの個人撮影会が始まってしまう! こうしちゃいられない!」


 ハナコがさんぽセルを引きずらせ、泣きながら家に帰った。


「ドジえもーん!」

「おう! どうしやがった! ハナコ!」

「じつは、サチコさんにリサイタルをやるから100人集客してくるように言われてしまったの! そんなの無理にきまってるのに!」

「おう! また無理難題をおしつけられたってわけか!」

「このままじゃ、わたし、いつものようにエッチな下着を着せられて、サチコさんのカメラに収まることになっちゃう! ドジえもん! なにかいい道具はないかしら!」

「任せろ! サチコめ、この時代からブイブイ言ってたってわけか。そんなサチコに、こいつをお見舞いしてやろうぜ!」


 たららら、ららら、ごまだれー!


「ペーペ!」

「ペーペ? なーに、それ?」

「これは渇ききった二つの仲を潤すとんでもねえすごい道具なんだ。この道具のために、あたしはローンを組んだからな」

「へえー! で、これはどうやって使うの?」

「ラブホテルに来るカップルにこれを一つ一つ渡すんだ。そのついでにチラシを配れば、効果抜群だ!」

「なるほど! なんてすごい道具なのかしら! わたし、さっそく配ってくる!」

「おう! やってやんな!」


 ドジえもんから貰った道具、ペーペが入ったダンボールをホテル街に運び、一組一組にハナコが配っていった。


「よければどうぞ。ついでに来週大阪サチコさんのリサイタルをやります。ぜひ来てください」

「ハニー。こんな街でローションを配ってるなんて、あの女の子なんだったんだろうな。おっと! なんてこった! このホテルにはローションが置いてないじゃないか! あの女の子は僕らの恩人だ!」

「ぼくたちにも下さい!」

「わたしたちにも!」

「すごい! きっとこれで100人集まるわ! さすがドジえもんの道具! ヤバみの極み!」


 そして迎えた当日。

 商店街のアイドルであるサチコの応援をしにはるばる遠くの町からやってきた人たちがごった返し、その数、5万5千人。


 松コプターをつけたドジえもんがそれを見て、ハッと気がついた。


「あ、てか、サチコは人気者だから集客しなくても人あつまるじゃん。……やべ。またドジッちまったぜ」

「すごい! いっぱいあつまった! サチコさん、これでわたしの個人撮影会はなくなったね!」

「なに馬鹿なこと抜かしやがる。これがあんたが集めた客だって証拠はないだろ。約束通り、リサイタルおわりに個人撮影会するからな!」

「えー! そんなー! 助けてドジえもーん!」

「あれ!? ハナコの奴、どこ行っちまった! ちょっと目を離した隙にいなくなりやがった! こいつは……ドジっちまったぜ! 一旦帰るか。そうしよう。お腹すいた」

「ドジえもーん!」


 その日のリサイタルは過去最高にすばらしいものとなり、観客たちはサチコの美声に涙した。そして終了後の撮影会では、ハナコが涙した。


「こ、こんなエッチな下着……着れないよぉ……」

「さっさと着やがれ! ハナコぉ!」

「むりだよぉ……! 恥ずかしいよぉ……!」


 言葉では言えない恥ずかしい箇所が取り外し可能となっていて、ボタンを外せば丸出しという特殊下着。


「こんなの……着れないよぉ……!」

「お前の意見なんて聞いてねえ! さっさとそのエッチなぱんつを穿いて! エッチなポーズをしやがれ!」

「ひどいよ。サチコさん。わたし、この一週間、毎日ペーペを配って集客がんばったのに。わたしなりに、いっぱい……努力したのに……ぐすん……!」

「っ!」


 サチコの横暴さに、とうとうハナコが涙を落とし、それを見たサチコが息を呑んだ。


「こんなの……ひどすぎる……」


 涙を流すハナコがサチコに言った。


「サチコさんなんて……きらい……!」

「!!!」


 ショックと言う名の衝撃がサチコの頭部に落ちた。


「大きらい!」

「ハナコぉ!」


 走り出したハナコ。しかしこの場所に住処を決めた石に邪魔をされた。ハナコの足が石とぶつかり、その場で派手に転んでしまう。


「あでっ!」


 わお! ぱんつが丸見え! きょうはシマシマおぱんつ!


「いたた……あっ! 膝こぞうが擦りむけて、血が!」

「ったく」


 サチコがハナコを抱き上げた。


「きゃっ!」

「動くんじゃねえ! あんたの腰の骨が砕けるくらい落としてやるぞ!」

「ひい! なんてひどいことを!」


 サチコが撮影用のベッドにハナコの体を倒した。


「そんなに……そんなにわたしがきらいなの!? サチコさん……!」

「う……うるせえんだよ! おらぁっ!」

「きゃあっ! やめてぇ! 乱暴はいやぁ!」


 ハナコがぎゅっと目をつむると、その上から被さってきたサチコに強く抱きしめられた。もうこうなったらどこにも逃げられない。顎を掴まれ、むりやり唇を重ね合わされる。


「んふぅ……んむ……!」


 サチコの舌がハナコの舌に絡まり、ハナコが逃げようともがくが、やはり逃げられない。呼吸が出来ず、酸素不足な体がやがて震えだし、サチコが唇を離すと、ようやくハナコの中に酸素が入っていき、強く咳き込んだ。


「げほげほっ! はぁ……! はぁ……! けほっ!」

「ハナコ、覚えておけ。あんたはあたいから逃げられないよ。そういう運命なんだ」

「そ、そんな……!」

「処女を奪わないだけ、感謝するんだな」

「ど、どうしてわたしばかりにそんな意地悪するの? わたし……なにかサチコさんにしてしまったの?」

「……」

「あ、あやまるから……! もう、意地悪しな……んふぅっ……!」


 じゅるるるる!


「あっ! そんなキス、だめ! あん! いやん! うふん! おほん! あはん!」


 しばらくの間、無言のサチコから窒息寸前の口付けを沢山与えられ、撮影会は中止となった。結果オーライとはいえ、ハナコは心身ともども疲れた状態で家に帰った。


「ドジえもーん! あの道具はすごかったけど、またサチコさんにいやがらせをされたの! だからまた違う道具出してー!」

「サチコのちくしょう、この頃からやり手だったってわけか。処女はまだ無事みたいだな。だが成人したら一気にやりやがったからな。あの女。任せな。ハナコ。あたしがドジをしない限り、きちんと未来を変えてやるからな。面白くなってきたじゃねえか」

「さすがドジえもん! 頼りになるぅー!」


 一階からハナコとドジえもんを呼ぶ声が聞こえた。今夜のご飯は肉じゃがだ。


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