第33話 手の無い浮浪児達

王宮の門は半開き状態、通路は雑草が繁っている。

馬車馬の餌のみは豊富、荒れ果てた庭は、草原に居るかの如くだった。


今私達は、王宮、無人のエントランスに立っている。

磨かれた甲冑、高価な壺絵画などの、在るべき装飾品が全く無い、ガランとしたほこりっぽい広い部屋、アルがセボスに何か指示をしてる。

「はっ!」と一言残し、セボスは走って行った。


リズ達5人は、各々それぞれ別方向に走って行った。


埃っぽい、ガランとした部屋が続き、腐敗臭のする厨房に行き着いた。

「王と王妃が、ここで亡くなっていたと聞いた」

「成る程、この臭い!改装工事しないと、ここで作った料理食べたく無いな」

「エーアイこれからは、ここを美容整形院にする!そのつもりで『再構築』自由にやってくれ」

「嫌だよ!こんな所に住みたく無い」



何処かに行っていた、セボスが帰って来て、アルに小声で何か話てる。


「エーアイ!王都唯一の住民達が、酷い状態だ!救出に行くぞ!」


私達がエントランスから、王宮の庭に出ると、元気な声が聞こえて来た。

「「「「「エーアイ様!ただ今到着致しました!」」」」」

王宮庭園に、100人のチビッ子護衛隊が整列して待っていた。

アルフォンヌ都心から、走り通しでやって来た様だ。

「ご苦労だった!これからスラム街に行って来る!声掛けするまで、確り休憩していて!」


「「「「はっ!声掛け有るまで、待機して居ります!!」」」」




全速で走ると、1分かからずでスラム街に着いた。


雨風が凌げるだけ野宿よりましかと思われる、一軒のあばら家に30人程の痩せ細った子供達が転がっている。

「子供達全員右手が無いのは?」

「窃盗常習者として、罰を受けた様だ」


この辺り一帯、雑草が一本も生えて無い。

「この子達、雑草を食べて飢えを凌いでいたのか?」


子供達全員、手首から先の右手が無い『再構築』のついでに、少し丈夫で力を強くして置いた。

15歳位の、群れを取り仕切って居たと思われる少年が、私に礼を言った。

「兄ちゃん?どうやったか知らんが、身体を元気にしてくれてありがとう!この半分は明日を待たず死んでた」

「手も治して置いたぞ!」


私に言われて、初めて気付いた様で「おっ?おぉーーっ!!」泣き崩れていた。

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