第27話 エーアイ聖国【1】

整形美容患者を、予約制に変えたお陰で診察に余裕が出来た。

相変わらず、あのシカメさんは予約を切らさない。

最初の顔からすると、輪郭が残っているだけ、もう十分美人だがまだ満足して居ない様子だ。

女の美に掛ける執念は凄い!

言い寄って来る男、ナンパ男が後を絶たないって、嬉しそうに話してくれる。


明日は休息日、診察終了のタイミングで、セバのじっちゃんがやって来た。

「エーアイ様、領主様が今夕食事を共にしたいと、仰って居ます、『ご都合が宜しければ、お待ちして居ます』との事で御座います」


「夕食と言う事は、3時間程余裕が有りますね、シャワーでサッパリして行きます」

「2時間半の19時半にお迎えに参ります、リズ様達もご一緒にどうぞ」

「リズ達も?何か問題でも発生して居ます?」

「領主様から、お話が御座います、わたくしからは申し上げられません」





領主との食事、一応全員正装で行く事にします。

「アルの話とは何だろう?」

「ご主人様、建国に関してでは有りませんか?」

「建国?以前、アルが言ってた『エーアイ聖国』の事?嫌だな…」

「主人様!良いではないですか!主人様が法王で、執務全てアルフォンヌ様が執り行う!良い国になりますよ」

博識なミズは、根拠の無い事は言わない、だが私は人では無い、王なんて務まるか?


質素な領主邸、美容整形院の隣の建物だが、セバが馬車で迎えに来た。

走った方が速い気がするが、招待客の体裁を保つ為?偉くなると大変だ。

あっと言う間に到着!隣だからね、乗り降りにかえって時間が掛かる位無駄に思える迎えだな。


玄関では、アル本人が迎えてくれた。


食事は旨いが、豪華な物では無く、アルらしい普通の食事だった。


珍しく食後に、冷したワインが出された。

リズ達は、平気で旨そうに飲んでるが、私は飲酒が初体験だ。

人間の身体は良く出来て居て、首の所で毒物をシャットアウトして脳を守る、しかしアルコールと言う毒物は脳まで届く性質を持っている。


データー知識が邪魔をして、私は飲酒を恐れている。

私に、好奇心は無い、有るのは知識欲だ。

恐怖に知識欲が勝利して、私は酒を口にした。

口内が冷され、飲み込むと冷たいワインが喉を通るのが分かった。

そこまでは良かった、胃に納まった冷たいはずのワインは発熱した。

たった一口のワインが、身体中を発熱させて、ついに脳に達した様で、瞬間寝ていた、気絶とも言う。


「エーアイは、酒が合わない体質か…建国の話がしたかったのだが…」

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