第20話 聖十字教の末路【1】

「おい!!食料を補充する!供出せよ!」

 王都圏内の外れ、ニシモリ村で大司教が大声を出していた。

 大司教は、30日以上の不自由な行軍に、イライラしていた。


「これは、大司教様!ようこそ辺鄙へんぴなニシモリ村にお越し下さいました!!この先は、アルフォンヌ領のトウキビ村、黒糖酒の産地!!行軍の邪魔になる粗末な物を持つより、先を急がれ強奪されては?討伐する領地でしょう!!」


 村長の言い分は、アルの使用人の入れ知恵です。


「そうだな!貴重な情報感謝する!!先を急ぐぞ!!進め!!!」

(何も知らないクソ司教!!地獄を見ろ!!)

 ニコやかな顔の裏で、村長は大司教に呪詛を吐いていた。




「黒糖酒を奪ったら、その次の村は高級牛肉の産地コウベエ村!酒を飲みながらコウベエ牛の食いほうだい!!じゅるり!村はまだか!!」


 急がされ、殆ど駈け足でたどり着く糖キビ村は、全くの無人砂糖キビは全て刈り取られ、期待した黒糖酒は一滴たりと残って居なかった。

「これは、どう言う事だ!!」

「分かりません、人は兎も角食料ですが、麦の一粒も見付かりません」



 こんな調子で、行き着く村全てが無人、広大な牧場は在っても仔牛一頭見付からず、食料は既に食べ尽くし、水を飲むだけの行軍が4日続き、聖十字軍は疲弊してフラフラ、大司教も隠し食いの乾パンを昨日食い終わり、空腹に耐性の無い大司教は、辺りに当たり散らすイライラ限界だった。


 やっとアルフォンヌ領、アル町が見えた。

「2万の軍で、早急に滅ぼし食料を略奪するぞ!!」

 空腹でイライラの大司教、まるで盗賊の頭みたいになっていた。


 2万の聖十字軍は、ノロノロふらふら歩き、やっと防護壁正門前に到着した。


 率いた軍の、士気を高めるつもりか、ただ良い格好したかっただけか、大司教は正門に向かい大声を挙げた。


「儂は、聖十字教大司教である!!悪魔エーアイとその手先アルフォンヌを討伐に参上した!!門を開け素直に討伐されたなら、住民に危害は加えない!!」


「やぁ!大司教の姿をしたサタン!よく参った正体を現せ!!」

 防護壁から見下ろすと、ブヨブヨした巨体が見えた。

 領主が声掛けしている相手だ。

 私は領主と打ち合わせした、大司教をサタンに『再構築』ねじれた醜い角が頭頂に二本、醜い顔に牙が生えブヨっとした真っ黒の裸体、尻には毛の無い尻尾、先端はスペード形をしている。


 メキメキ姿を変えた大司教だった物、力は最弱に設定言葉はくぐもった発声にした。

「ごれは、どぼじたごとだ!!」


 防護壁上に整列した、領地防衛軍や私の護衛隊が、一斉に強弓ごうきゅうやボウガンを構えた。


 領主が再び声掛けした。

「悪魔を取り押さえよ!悪魔に率いられた、お前達は悪魔の劵族で無い証明が必要だ!!」

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