第12話 美容整形院は順調

領主の姉ビクトリアの右目と傷痕は、完璧に完治した。

永く日にあたって居ないビクトリアは、白いと言うより病的な白さだった。


完璧な治療を施しても、永く続いた不健康な状態だったビクトリアは元気そうに見えない。


今後の事を思い、僅に強靭な身体に構築、普通の女性より少し頑丈で、少し力が強いといった仕上がりでは、見た目も全く変わって居ない。

ビクトリアの顔は元々美人顔びじんがおだったので左半分と同じ様に、しかも左右を僅に変える、微調整構築は集中を要した。

顔が全く左右対象では、なぜか気持ち悪い非人間的な顔になる事を、無数の画像データーをもとにエーアイは知っていた。



治療後、手鏡で確認したビクトリアさんは、声も無く涙を流していた。

驚いたのは、領主がビクトリアさんに抱き付き、轟泣きした事だった。



理解不能の行動には、深く考えさせられた。

この姉弟の行動、理解できたなら、私はもっと完璧な人間に近付く事が出来るだろうか?

意識しなくても、人間の行動が出来ると自負して居たが、こう言った事に直面すると自信が無くなる。


夜にでも、じっくり思考しよう。

今は領主や、元奴隷の孤児院の職員達が宣伝したせいで、多くの患者でごった返して居る状態を、解消しないと。


「先生、この傷は治るでしょうか?」

顔の傷で悩んで居た女性の多い事、患者の殆どが女性で、その内の半数以上が顔の傷を治しに来てる。


流れ作業的に処理出来るので、本人の悩みは兎も角治療は簡単だ。

思いの他に時間が掛かるのは、美人にしてくれと漠然と言う患者、本人が美人と思う顔を聞き出すのは大変だった。


「主人様!一度に治療するので無く、少しずつ…そう!一週間毎に5回に分けて部分的に治療する様に」

それはそうだろうな、突然全く別人になってしまうと、生活にも支障をきたすだろう。

「ミズ!気付かず大失敗する所だった、忠告ありがとう」


患者に改めて向き合い

「先ず、目元を綺麗にしましょう!5人の助手を見て、どの娘に似た目が良いか決めて貰えます?」

リズにベスそれに、ミズとキロにカロ5人は、膨大な画像データーからすぐりの、個性豊かな美女にしている。


この若い患者は一重で、はれぼったいまぶたの糸の様な、開いて居るのか閉じて居るのか、分からない目をしている。

選んだのはキロの顔(一気に変えると、親も気付いてくれない、別人になる)ミズのアドバイスは納得だ。

「今日はキロの顔に近付ける為、二重瞼にします」

『再構築』で二重瞼にした。


手鏡で確認した患者は「先生!有り難う御座いました!!美人になりました!!」

(えっ?それで良いの?)

「再度の治療は、来週以降になります…お大事に!」

「有り難う御座いました!満足です」

患者は、物凄く嬉しそうな笑顔で帰っていった。

確かに閉じた様な目が開いては居る、安い美意識だな?分からないものだ。


彼女の心理も謎だ、取り立てて美女になった訳でも無いのに、なぜ満足出来た?

これも、夜謎解き思考の対象だな。

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