第9話 領主の依頼

 領主館は、驚くほど普通だった。

「冒険者ギルドの方が立派に思える程、普通の家だな」

「領主様は、質素な暮らしを好まれますので」

 私の独り言が聞こえた様で、執事のセバが返事した。


「質素を好む割には、奴隷美女を30人も一気買いして」

「彼女達は既に解放されて、奴隷では御座いません」

「金貨1500枚か2000枚注ぎ込んで、全員解放したの?」

「そうです。

 こちらで領主様がお待ちで御座います」


 私達は、応接室に通された。

 部屋に入ると、領主は立ち上がって迎えてくれた。

「エーアイさん?招待に応じてくれて、感謝する」

 私の名前の疑問は何だろう。

「初めまして、招待有り難う御座います、何か変ですか?」


「座ってくれ」

 勧められたソファーに腰掛けた。

 リズ達は後ろに立ってる、こう言う場の作法は任せて、口出ししない方が良さそうだ。


「エーアイさんが、思っていたのと違い、お若い方だったので少し驚いて失礼した」

「そう…ですか」

 作法どころか、人間の常識を知らない私は、ボロが出ないよう出来るだけ話さない様にと、リズ達に注意されてる、領主早く本題の話を始めろ!


「エーアイさんを招待したのは、奴隷商でやった事を聞いたからだ」

「腕を治せば良いのですか?」

「セバから聞いたのか、取り合えずやってみてくれ」

「失礼して、腕を見ても良いですか?」

「どうせ動かん腕だ、自由にしてくれ」


 動かなくなって、随分経ったのだろう、細い右腕だった。

 逆に、左腕はムキムキの腕だ。

「治ると思いますが、身体は今のままで良いのですか?」

「身体?どこか悪い所が見付かったか?…違うなエーアイさんは、小さな身体で200キロのビッグボアを、森から担いで帰って来たとか、身体を強靭に出来るのか!!」


「はい、出来ます」

「治療費は、強靭な身体に出来るなら、金貨100枚支払う」

「奴隷で散財されたのでしょう、領主様には大サービスで金貨5枚で結構です」

「いや、私の身体はそんなに安く無い、せめて金貨50枚受け取ってくれ」


「埒があきません、取り合えず治します『再構築』」

 左腕の無駄な筋肉を利用、右腕と左腕を同じに調節、身体の強化の為、見た目の身長は変わらないが、前よりスリムになった。


「終わりました、右腕は自由に使えるはずです、身体もビッグボア程度なら担げます」

「本当だ!腕が動く!!奴隷商の言って居った事はまことで有った!エーアイ殿感謝する!!」


(こう言う治療院を開けば、安全に楽に稼ぐ事が出来るぞ)


「エーアイ殿、依頼だが診療所など全て私が準備する、欠損部位の修復や女性の為の美容整形の仕事を引き受けてくれぬか」


 私の心を読んだ様な、願っても無い依頼を領主が言った。

 私に限って、聞き間違いはない。

 二つ返事が私から出た。

「僕も、今同じ様な仕事をやろうと思い立った所です!やります!やらせて下さい」


「診療所や、必要な物は全て領主負担、私の治療のお礼として、エーアイ殿に進呈する、我が領地の為働いてくれ」

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