一言で言うなら、美しい百合小説です。ただ、耽美的過ぎはしない、広い読者層が楽しめる、ちょうどいい塩梅の書き口。作者さまの高い力量にしみじみ脱帽です。軽妙な関西弁の会話と互いを思いやる心が、ミルフィーユのように繊細に重なりあいながら進んでいきます。前後編に分かれており、その構成もまた秀逸です。前編だけでも完成されており、後編は後編で良いフックがあり、読ませます。そして読後に待っているのは清々しくやさしい心持ちです。心からおすすめします。