第12話 心の傷

私は涙が溢れる。



「…っく…龍介……」




心も身体もズタズタだ。


龍介との約束の為に


頑張ってきたのに……


こんな形で


奪われてしまうなんて―――――




ゆっくりと立ち上がるも


身体がフラつきダルくて重い。




『男は好きじゃなくても抱ける』



龍介の言葉が脳裏に過る。



「…本当…そうだね…」




両足を引き摺るように


ゆっくりゆっくりと


一歩一歩頑張って


足を踏ん張って歩き


前へと進む





「…何も分からない…20歳の…お子ちゃまで…色気…なんて…ないのに…背伸びして…大人のイイ女演じてただけだった…」



「本っ当!」



ビクッ



「背伸びしすぎなんだよ!お前はっ!」




振り返る視線の先には




「…龍介…」

「電源…切ってんじゃねーよ!」



「………………」



私は背を向ける。



「…どうして…言わなかっんだよ!」

「何の事?」


「後付けられてたって…?…お前はストーカーされてた前科あんのに、そんな大事な事は話せよな!誰か分からない奴に付けられてたんだろ?」



「……………」





「それが、この結果だ!」

「…龍介に…龍介に関係ない…っ!」



振り返ると同時にグイッと引き寄せられ後頭部を押され強引にキスされた。



「関係ないって…?」



至近距離にある龍介の顔にドキドキ加速する。




「何の為の約束だよ…何かあった時、傷付くのお前だろ?」



「………………」



スッと離れ、向き合う私達。



「…全く…それ聞いてたら…止めてたっつーのに…」

「…私が…どうなろうが…関係ないくせに…」


「あるんだよ!何の為、頑張ってきてたんだよ!努力が水の泡だろ!?」



「……………」



私は下にうつ向く。




フワリと抱きしめられる。


ドキン



「…砂耶香…怖かったろ?そんな中、痛い思いもして…俺の為に頑張ってたお前を傷付け…お前は傷付けられた…」


私は首を左右に振る。



「もう…無理しなくて良いから…いつものお前で良いから背伸びすんのは辞めろ」


「背伸びしなきゃ…龍介は…好きになってくれないじゃん…」


「背伸びは必要ねーから…ありのままの自分でいろ…」



「………………」



顔を上げると視線がぶつかる。



ドキッ



目をそらそうとするも、キスされた。




「…帰るぞ…」



そう言うと私をおんぶして帰る龍介。




「身体…大丈夫か?」

「…どうかな…全然…覚えてないから…」

「…そっか…」

「…龍介…」

「ん?」



「…好き…」

「…バーカ…言わなくても充分伝わってるっつーの」

「…ねえ…龍介…」

「何?」

「…いつか…龍介だけの女にしてね」



「今も充分俺だけの女だろ?」

「まだだよ…」

「どうして?」

「龍介と関係持ってないから…」

 


「…………」



「でも…しばらくは無理そうかな?…だけど…もう関係ないか…」



「…関係あるよ」

「えっ…?」

「勝手に決めつけんなよ」



「…………………」



私は龍介をぎゅうっと抱きしめる。




「…ゴメンね…龍介…」

「謝んなよ…」

「だって…」





私達はマンションに帰る。



「一人で大丈夫か?」

「うん…大丈夫…ありがとう…」



私達は別れた。




私はシャワーを浴びる。



「………………」



シャワーをルームを後に、ベッドに横になる。


瞳を閉じるも、さっきの光景が蘇る。




「……………」



すると、私の携帯が鳴り響く。



「…もしもし?」

「砂耶香、大丈夫か?」

「…あ、うん、大丈夫だよ」

「無理しなくて良いからな」

「ありがとう…大丈夫だから…じゃあね」



私は電話を切る。




少しして――――――




私の部屋のドアがノックされる。



「はい」

「砂耶香、本当に大丈夫か?」

「龍介…?」



私は龍介を部屋に入れると、龍介に抱きつく。



「………………」



龍介は抱きしめる。



「…やっば…無理してたんじゃん…今日は傍にいてやるから」



私は頷いた。



龍介が傍に一緒の布団にいるも、私は寝付けない。



「砂耶香?」



「…寝たいのに眠れない…瞳を閉じると…さっきの光景が蘇る…全然…覚えてないのに…あの最初の瞬間だけがフラッシュバックする…」



龍介はぎゅうっと抱きしめ頭を何度も何度も撫でる。




「龍介…私…」 




龍介は優しいキスをした。


そしてオデコに頬と…唇と…


唇が離れると私は、自分から龍介にキスをし深いキスを求めた。




「…ゴメン…」


「………………」



私は背を向けた。




フワリと背後から抱きしめられる。



ドキン



うなじに唇が這い、下へ下へと唇が這う中、龍介の両手が私の胸に触れる。




「…龍介…?待っ…」



龍介の手は更に下へと伸びていく。




「ちょ、ちょっと…龍介…!」



ゆっくりと振り返らせる龍介。


龍介は私の上に体重をかけ、重みを感じる中、キスをされ、深いキスを何度も何度も繰り返す。

 

いつになく優しいキスに

私の胸はザワつき、吐息が洩れた。



「龍介…私…汚れてるよ…都合のイイ女にでもする…?」


「都合のイイ女にする気はねーよ…」


「じゃあ…何?」



私の上に股がった。




ドクン…


さっきの事があってか、恐怖さが増す。


龍介は洋服を脱いだ。



ドキン…


「俺だけ見てろ!俺だけの女にしてやるから身体委ねろ!砂耶香…」



龍介はキスをし、深いキスを何度も何度も繰り返し、首筋に唇が這う。


唇は下へ下へと這い、胸には龍介伸びて手が触れている


私の身体は恐怖からビクビクしている。




キスをされ、深いキスをされながら龍介の手は下半身に手が伸びた。



「ま、待って…龍介…」 

「怖い?」



私は頷く。



「…怖いけど…本当に…委ねて…いいの…?」


「ああ。傷付いた身体と心を俺で満たしてやるから忘れろ」



ドキン……



「…でも…」

「怖い目に遭わせた償い」

「…龍介…」


「砂耶香を抱きたい…つーか…抱かせてほしい…何も考えんな!お前は…俺の女」




ドキン…



私は龍介に、ゆっくりと委ねた。




今日だけ私はあなたの彼女で


あなたの恋人


そう言い聞かせるも、身体はまだまだだ。




「砂耶香…大丈夫…怖がらなくても良いから」

「…うん…分かっているつもりだけど…」





そして気づけば


私の身体は……


龍介に


委ねていた。



「砂耶香…お前…今、すっげーイイ女になってる」



ドキン…


かああああ〜〜っ!




ストレートに言われ顔が真っ赤になったのが分かった


私は両手で自分の顔を覆う。



グイッ


両手を退かされ押さえた。



「普段見せない砂耶香を見せろよ」


「りゅ、龍介…どんだけ他の女の人に…その言葉(セリフ)言ってきたの…」


「…それ…砂耶香の勘違い…」


「…えっ…?」


「…砂耶香…お前だけ…」


「えっ…?待って…元奥さん…あ…ゴメン…言わない約束…」


「特別、許す…アイツは…子供欲しさに、俺を利用した奴…アイツの中に…俺はいない…」


「嘘…」


「アイツは…そういう奴…って事…後で分かった…」


「…龍介…」




気付けば両手は解放されていた。


私は龍介の両頬を優しく包み込むように触れた。




「砂耶香…」


「龍介が…たくさんの女(ひと)と関係持っていたのが分かった気がする…」


「えっ…?」


「龍介は…傷付いてたんだね…女の人が…信じられなくなってた…自分では気付いていない程…深い傷負ってたんだよ…」


「…砂耶香…」





俺は……


今 言われて


初めて気付いた気がした……




彼女に言わるまでは


たくさんの女の人と


関係持っていたことに



寂しさと


女の人への愛情を


考えていなかった……



自分を慰めるかのように


やっていた行動だったんだと――――

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