第10話  約束のシルシ

「砂耶香ちゃん♪」と、先輩。

「うわっ!ビックリした」

「ねえ、今日、飲みに行こうか?」



私の目の前に現れ、驚く私に、ヤケにニコニコと微笑んでいる。


しかし、気にも止めず、その場のノリで




「はいっ!飲みに行きましょう!!」

「よし!成立!」

「成立?」

「約束、成立でしょう?他に何か言い方ある?」

「あ、そうですよね?」





そして、その日の夜―――――




「ごめん!砂耶香ちゃん!」


と、両手を合わせ謝る先輩。



そこには、他数人の女の人がいて、合流する。



「あ、あの…麻由霞…さん…?飲みに行くって…」


「うん。2人でとは言ってないでしょう?でも、一応謝る。だけど、たまには大人数で飲むのもいいでしょう?」


「それは……」



《…でも…なんか違う気もするけど…》



「ねえ、いくつ?」と、一人の女の人が尋ねてきた。


「えっ?あ、20歳です」

「可愛い〜♪一番年下ね」

「えっ?そうなんですね」

「じゃあ、取り敢えず中、入ろうか?」


「うん、そうね」と、麻由霞さん。



そして広いテーブルに移動する女の人達。




《…どうして…?こんな広いテーブル…?》



4人〜8人が座れる広いテーブルだ。




すると、そこへ―――――




「ごめん。おまたせ〜」



私達の前に、数人の男の人が現れた。




「えっ…?何?もしかして…これって…」


「たまにはこういう経験も良いでしょう?」


と、麻由霞さんが、耳元で囁き声で言った。



「私…帰り…」




グイッ


引き止める麻由霞さん。




「逃れられないわよ。せっかく来たんだから」

「でも…私…初めて…」



「どうかした?」と、一人の男の人。


「いいえ」と、麻由霞さん。



「…あの…私…トイレ…」

「だったら荷物置いて行ってね」

「麻由霞さーーん」




《麻由霞さんが悪魔に見える》



私は荷物を置き、行こうとした時――――




「ごめん今日は」

「ああ」

「悪いな」




声がする方に目を向けると――――




ドキッ 



「あっ…!」



「あれ?」


と、そこには見覚えのある顔、龍介がいた。


後退りする私。




「あれ…?砂耶香ちゃん、トイレは?」


麻由霞さんが私に気付き尋ねた。



「いや…その…」

「何、何?大きい方?」

「ち、違いますっ!変な事言わないで!」

「じゃあ何?帰る口実?タチ悪っ!第一印象ガタ落ち!」



「あのねーーっ!」

「じゃあ、何だよ!」

「龍介には関係ないでしょう?」 



騒ぐ私達。




「何?二人、知り合い?」と、一人の男の人が尋ねた。



「あっ!コイツですか?マンションの隣人なんですよ」



龍介が答えた。




「隣人!?……へぇ〜…」


と、麻由霞さんが、意味深に言った。




私達は合コンを開始。



飲んで騒いで盛り上がる。


そして王様ゲームの時だった。


王様が命令したのを守るルール。




龍介は、他の女性のメンバーとキスする。



「龍介君ってキス上手」

「そう?」

「何か忘れられないキスって感じ」 

「それは…言われた事ないな〜」




《…複雑…》




そんな私とは当たる事などない王様ゲームだった。




《運悪い…私と龍介の接触…何もなかった…》




時間は刻一刻と過ぎ、みんなイイ雰囲気になり私は龍介の事が気になりつつも他の男の人と話をしていた。


そして、お開きとなり外に出る私達。


龍介は外に出ても他の女の人とイイ感じだった。




「気になるの?龍介の事」



一人の男の人が尋ねた。




「えっ…?あ、いや…別に、そういうわけじゃないけど…アイツの事、知ってるつもりだし…彼女の方が心配で…」



「二人共、イイ大人だし大丈夫だって。それに初めてじゃないんだし関係くらい持っても平気だよ。酔った勢いもなくはないし」


「えっ…?そんな簡単に出来ちゃうものなんですか?」


「えっ?」


「初めてじゃなかったら出来るんですか?」


「砂耶香…ちゃん…?」


「…私…分かりませんっ!そんなの好きでもないのに体を預けたり、関係持つなんて考えられません!」




注目される私。



「…ごめんなさい…私…20歳でも…まだまだ考え方…子供(ガキ)ですよね…失礼します…」


「あっ!砂耶香ちゃん!?待って!…二次会…」



足を止め振り返り頭を下げ走り去った。



「アイツ帰ったんですか?」

「ああ」



「………………」



「龍介君、二次会」





俺の腕に腕を絡めてくる女の人。



「あー…ごめん…この後、用事あって」

「用事?え〜、今から?断れば…」


「ごめん、それは出来なくて。ちなみに俺、結婚してるから、ゴメン!」


「えっ!?結婚!?嘘!?」


「つまり、そういう事だから」




俺は、足早に去った。




私は、ボンヤリしながら帰っていく。


そして、歩道橋でボンヤリする。




「私には理解出来ない…成り行きだとか酔った勢いとか、そんな簡単には…」


「でも、好きな相手同士なら預ける事、可能なんじゃね?」





ビクッ


カチッ



ライターの音が聞こえ振り返る視線の先には

煙草を吹かす人影。



ドキン



「龍介…?…どうして…?女の人とイイ雰囲気だったじゃん!二次会に行くフリして抜け出してホテルでも行けば良かったじゃん!」



「本当、そうだな〜。もったいなかったかな〜」




ズキン




「…人の気持ち…知ってて…行けば?今なら連絡すれば交換しているだろうし呼び出せるでしょう!?私は平気だし!大丈夫だから!」




私は足早に去り始める。


俺は、携帯用で煙草を消した。




「………………」




私は腕を掴まれグイッと引き止められた。




「何?離し……」




振り返ると同時に掴んでいた手を離したかと思ったら、グイッと腰を抱き寄せられ、もう片方の手で後頭部を押されかなりの密着な体勢で唇を塞がれた。


唇が離れ―――――




「嫉妬してんの見え見えなんだよ」



ドキン…


至近距離で言われ、再びキスをし深いキスをされ、離れるにも離れられない程の強引なキスだった。




「………………」




唇が離れる。



「…ズルいよ…」

「何が?」


「私の気持ち知ってて……深入りすんなって言っておいて夢中にさせてんの龍介じゃん…」


「試用期間中だからな」


「えっ…?」



「砂耶香が、どれ位まで我慢出来るのか。俺以外、男は沢山いんだろ?俺は所詮、バツイチ男。子供だっている身分。もっとマシな男見つけろ!それまで、付き合ってやるよ」


「付き合ってやるって…夢中にならない方がおかしいよ…!」


「だったら、俺を夢中にさせれば?」


「…えっ…?」


「元奥さんと、より戻す気ねーし。チャンス大ありだろ?夢中にさせなければ抱く事もない」


「…どんなに…私が抱いてって言っても?龍介を好きでも私を抱かないって事?」


「当たり前だろ?初めてな女ほど抱けねーな…初めてじゃなくても、その考え、他の女と一緒だな。男は簡単に好きでもねー女は抱けんだよ!何度もあったよ。結局、身体を求めて、都合のいい女ばっか。元奥さんと子供いる事言っても関係ないってな!」



「………………」



「好きだから抱いて。口では簡単に言える。関係持ったからって俺が彼氏ってわけでもない。確かなものなくったって抱かれたい理由が分かんねーな!もっと自分大切にしたらどうなんだよ!好きになる保証もねーのに、俺みたいな人間と関係だけ持とうなんて」



「好きだから自分を預ける。好きな人に全部(すべて)見てもらいたいって…自分を知ってほしくて、どんなに自信なくったって…後悔してもいい。好きな人と1つになれる事が幸せなんだよ」



「それは両思いで、恋人として付き合っている時に出来る事だろう?」


「愛なんて確かなものなくったって、恋したりして1つになってオシャレして自分を磨くんだよ!女の子は、相手に相応しい人になりたいんだよ!」


「本気で好き合ってるならな!」


「……確かに龍介は結婚してるし、沢山の女性と関係持ってるかもしれない!でも、関係持っているからこそ磨きがかかってるから魅力的なんじゃん!」




「………………」



「恋は一生懸命になれるんだよ!」


「だったら、お前が変えてみせろよ!好きなんだろう?夢中にさせてみろよ!」


「…えっ…!?」


「……なんて…20歳のお前が俺を本気で、一人の女を愛せるようにさせるなんて無理だろうな」




目をそらし歩道橋からあさっての方向を見る龍介。




「龍介も変わらなきゃ駄目だよ!努力してっ!そして私だけ見てよっ!」



「………………」



「どんなに私が努力しても龍介が、そのままなら何も変わらないよ……一生かけても一人の女なんて愛せないよ!」




私は背を向ける。




「…私…色気も何もないし、20歳だし…まだまだ子供(ガキ)だから上手く出来ないかもしれない…」



向き合う私達。




「でも…龍介を振り向かせたいって…私を一人の女として見て欲しいって…」




「………………」



「その気持ちだけは負けない!誰よりも龍介への気持ちは負けない!だから私だけを愛して欲しい……」



「…砂耶香…お前…どんだけの自信ありなの?」



「だって私に応えてほしいから…私の愛を受け止めほしいから!ゆっくりで良いから……だから…本気で私だけを愛そうと思った時…私を抱いて…」




「…どストレート…どんだけ純粋で真っ直ぐなの?」


「好きだから…自分の気持ち正直に言ってるだけ…」




「……………」



「龍介が認めてくれるまで…龍介にも私の身体を預けないから…どんなに、そういう気持ちに例えなったとしても…ずっと我慢するから…」



「砂耶香…」



「だから…龍介も…協力……ごめん…そういうわけには…いかないか…それじゃ龍介には無理だし、私の為になんないね…」


「別に」


「…えっ…?」


「だって振り向かせたいんだろう?俺が変わらなきゃ駄目なら同じようにした方が良くね?我慢すれば良いわけだし…但し、一言だけつけ加えるなら俺がお前を抱こうとする時あるかもしんねーけど、お前が耐えれるか?っていうのも、お手並み拝見だろ?」



「…でも…」




私の片手を掴み龍介は自分の小指と私の小指を絡めた。



「約束…お前20歳のまだまだ、お子ちゃまだから」

「えっ…?いや…お子ちゃまって…」



絡めた指を離し、グイッと抱き寄せたかと思うとキスされた。



「指切りなんてすぐ忘れる」

「キスも同じじゃん…」

「ご不満かよ!じゃあ、関係持つか?」

「それじゃ意味ない!」



「………………」



グイッと肩まで洋服をずらす。




「きゃ…っ…」



キスで唇を塞ぐと、更にグイッと抱き寄せると耳元で



「ちょ…龍…」

「黙ってろ!」




ドキン



首筋にキスされた。


だけど、何処か、くすぐったいようなピリッとしたような感覚があった気がした。




「………………」



「消えた時、もしくは消えかける頃、またシルシ付けてやる」


「シルシ…?何?」


「お子ちゃまには、まだ、理解出来ねーだろうな。帰って鏡見てみろ!」




そう言うと帰り始める龍介。



「あっ!ちょっと!待ってよ!」

「やだ!お子ちゃまなんて誰が待つかよ!」




私達は騒ぎながら帰る。


帰ってお風呂から上がり、ふと鏡を見た。


すっかり忘れていた私は、首筋の赤いマークに




「あれ…?これ…?何だろう?」



私は洋服を着ながら記憶を辿る。




「………!!!」



『帰って鏡見てみろ!』



龍介の言葉が脳裏に過る。




「な、な、何…?これ…!?」

「キ・ス・マ・ー・ク」




ビクッ



「きゃあああっ!」



背後からの突然の声に驚く私。


振り返る視線の先には龍介がいた。



「龍介っ!!な、何でいんの!?」

「さあ?何ででしょう?」




そう言うと私を抱きかかえ、お姫様抱っこをし、そのままベッドに乗せ両手を押さえつけた。



ドキン



「ちょっ、ちょっと!龍…」



キスをする龍介。



「龍介っ!待っ…」

「お酒の入った勢いでHしたくなったから」

「えっ…?」



キスをし、深いキスをされる中、洋服の下から手が伸び胸に触れる。


首筋に唇が這い、下へ下へと進む中、



「ちょ、ちょっと!龍介っ!」

「何?駄目?」

「だ、駄目っ!約束!」



「………………」



スッと離れた。



「…ごめん…」

「なんで砂耶香が謝んの?」

「だって…」

「お前…バカ?」

「ば、バカ…?って酷っ!」



「試してんだから抵抗しなきゃ意味ねーだろ?優し過ぎ!お互いの為になんねーじゃん!心鬼にしろよ。バーーカ!」


「バカ、バカ言うなっ!」




クスクス笑う龍介。




龍介は私のベッドに横になる。




「ちょ、ちょっと!何してんの?」




グイッと引き寄せ、私を布団に潜り込ませ私を抱きしめる。



ドキン…



「龍介…?」



私は龍介の胸に顔を埋めるような体勢になっている。



「俺は、お前の気持ち知ってるから。俺が少しでも、お前との時間過ごして、お前の色々な部分見ていくのも大切だろう?お前が俺の事を好きになってくれたようにさ。何もしないでいるよりは良いだろう?」



「龍介…」



私は顔を上げ視線がぶつかる。



ドキッ



私はまともに見れず視線を外そうとすると、顎を掴まれキスをされた。


そして、すぐに唇が塞がれ、掴まれた顎から手が離れたかと思うと、グイッと更に腰を抱き寄せると、もう片方の手で後頭部を押され唇を割って入る熱があり深いキスをしてくる。


私は、それに応えた。


唇が離れる。




「…砂耶香…」

「何?」

「成長したな」

「えっ…?」


「初めてのキスから、大人のキスまで…関係持ったら、どんながお前見れんの?」


「えっ…!?な、何言って…もうっ!スケベっ!」




クスクス笑う龍介。



「見たいなら、私の事好きになれば!?いくらでも抱かせてやるわよ!」




私は背を向けた。



背後から抱きしめる龍介。




ドキン…



「そうだな…お前が俺の事を本気(マジ)にさせる事が出来たなら、お礼に俺が、お前の全部(すべて)奪って手取り足取り教えてやるよ」



「…うん…」

「うんって…」

「間違ってないでしょう?」

「まーな」



すると、洋服の上から私の胸に手が触れる。



「ちょ、ちょっと…龍…」



うなじから唇が這う。




「…龍介…ちょっと…辞め…」


「無防備だな〜。色々な体勢があるんだし、簡単に、お触り出来る事、頭に入れておけよ。砂耶香」



そう言う龍介の手は止まらない。



「龍介…辞め…」

「息が荒くなってるけど?」




龍介の手が止まる。




私は振り返る。



「意地悪…しないでよ…バカ…」



キスをされ、深いキスをされ、吐息が洩れる。


私の上に龍介の身体の重みを感じ龍介に身体を委ねそうになり、無意識に手が龍介の背中に回した。



「砂耶香…良いの?」

「…えっ…?」

「このままだと俺、抱いちゃうよ」




私は慌てて押しのけベッドから降りた。




「………………」




恥ずかしくて両手で顔を覆った。




「もうっ!バカっ!」

「あんだけで身体委ねそうになるって…大丈夫?」

「龍介が悪い!」

「俺は悪くない!」



「………………」



「もう帰って!」

「やだ!」




グイッと引き寄せる、布団の中に再び引き摺り込ませる。


そして抱きしめた。




「もうしねーよ」



頭を撫でる龍介。




「寝るぞ。砂耶香」




龍介は、私を抱きしめたまま眠る。



「……………」






ねえ…… 


龍介……


あなたはいつになったら


私のことを好きになってくれる?


夢中になってくれるのに


どれくらいかかる…?



お互いの気持ちに


バランスが


とれる日は来る……?



































































































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