第7話 来客

それから数ヶ月が過ぎたある日の事。




ピンポーン


私の部屋のインターホンが鳴る。




「はい」




カチャ

ドアを開ける私。




《綺麗な人》



「あ、あの…」

「はい?」

「こちらは…侑城…龍介さん…」

「あー、彼なら隣ですよ」

「えっ…?や、やだ……私…すみません」



「いいえ。彼なら夜迄は帰って来ないと思いますよ」


「そう…ですか…あの…渡して貰う事…出来ますか?久しぶりに来たんですけど」


「それは構わないですけど、あなたは会わなくて良いんですか?龍介…えっと…侑城さんはあなたに…」


「会わせる顔ないし、彼も私に会いたいとは…だから、お願いします」




そう言うと私に小袋を押し付けるようにし帰って行った。




「あ、あの!ちょっと!」



呼び止めるも、女の人は帰って行った。




その日の夜―――――





「龍介ーー」



ガチャ


部屋に訪れるも反応なし。




「龍介ーー」

「誰ーー?」




シャワールームから声がした。



「私。砂耶香」



カチャ

シャワールームのドアが開く。




「きゃああっ!」



私はすぐに背を向けた。



「バ、バカッ!よ、よ、よ、洋服っ!」



真っ裸の龍介の姿を目の当たりにした私。



「今まで裸を見た事ないわけないじゃないっしょ?」


「あるとか、ないとか、そんな事よりもレディの前で裸は辞めてっ!」


「照れ屋さん♪可愛い♪」

「か、からかわないでっ!」

「はいはい」



そして――――




「で?何?」

「あ、これ!預かった」

「俺に?誰から?」


「名前は聞いてない。まあ、部屋間違ったのがきっかけだったけど、渡して下さいって…綺麗な女の人だったよ」



「………………」



「なんか合わす顔ないとか…龍介も会いたくないとか…」


「えっ…?」



俺はすぐにピンときた。


一応、中身を見てみる。



「これ…やっぱり…か…」


「可愛いーー♪子供の写真だーー♪…あ、ゴメン…体が勝手に…」


「…悪いけど処分しといて!」

「えっ…?ごめん、気悪くした?そうだよね…人の…」

「いや、お前は悪くない」

「えっ…?」

「俺はいらない!」



私に押し付けるように返す。



「ちょ、ちょっと!龍介!?どうし……」 

「余計なお世話なんだよ!」



ビクッ



「…龍…介…?」

「とにかく、それ持って出て行ってくれよな」

「どうして?だって…」

「良いからっ!出ていけよ!一人にしてくんねー?」

「…分かった…ゴメン…」




私は渋々、出て行く。



グイッと引き止められるも私は背を向けたまま



「悪い…砂耶香…お前は悪くねーのにキツイ事言って…」




私は頭を左右に振る。



フワリと背後から抱きしめられた。




ドキッ



「またな」



抱きしめた体を離し去り始める龍介。


私は龍介を引き止め、無意識に龍介にキスをした。





「…ご、ゴメン…」



慌てて離れるも、龍介に引き止められ、龍介はキスをした。




「お前…彼氏いんのに…彼氏知ったら怒るぞ」

「…そうだね…」



私は去り始める。




「…砂耶香…もう一度言っておくけど…俺の事、本気になるな。お前が傷つくだけだから」


「…うん…」




私達は別れた。




部屋に戻り、涙がこぼれる。





きっと私は好きになる一歩手前だ。



いや、もっと近いかもしれない





××××××××××××××



「…時間の…問題…かもな…アイツの中では…カウントダウン始まってんな…心の中で…」




俺は砂耶香の想いに薄々気付き始めていた。




だけど


アイツは傷つくだけだ


俺はそう思った




でも……


更にもっと傷つく事が


待ち受けていたなんて


知る由もなく――――










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