第4話 謎の電話

それから、数カ月が過ぎ、私は一人暮らしも慣れて来た頃だった。


私のマンションの固定電話が鳴り響く。




「はい、もしもし」



プツ

出てからすぐ電話が切れる。




「ん?」



プーッ プーッ プーッ……



「何?……間違い電話…かな?」




その日、掛かってこなかった。




次の日の夜―――――




「あー、疲れたーー」





Trrrr…



ビクッ

タイミング良く鳴る電話に驚く。



Trrrr…



Trr…ガチャ





「はい、もしもし」



「………………」



「もしもし?」



「………………」




プツッ

電話が切れる。



プーッ…



プーッ…




「…一体…何?」




そしてまた、次の日の夜――――




Trrrr…



Trrr……



「はい」



「………………」



「もしもし…あなた誰!?間違っていませんか?イタズラ?用事がないならかけて来ないでよ!」




ガチャ


電話を切る私。




その直後――――




Trrrr…



ビクッ




Trrrr…




Trrrr…



Trr……ガチャ




電話に出る私。




「…はい…」

「いつも君を見てるよ」




ゾクッ



「えっ…!?」




プツ




プーッ…



プーッ…





「何…?今の…」





私は外に出る。



ガチャ


周囲を見渡す。





「砂耶香ちゃん?」




ビクッ



「きゃあ!」


「何だよ!人を化け物みたいに。つーか、青い顔してどうしたんだ?」




そこには龍介君がいた。



「…ビックリ…したー…あっ!ねえっ!今、仕事から帰った?」


「ああ」


「怪しい人、見なかった!?」

「は?怪しい人?」

「そう!電話かけてる人、見なかった?」


「電話?いや…えっ!?何、何?ストーカー?お前みたいな……」



グイッと胸倉を両手で掴む。



「うわ…」


「変な事、言わないで!私だって女なんだから!」

「そ、それは…」




スッ

離す私。



「最近、電話鳴って切れたりで、おかしいなーって思って…帰った途端も…タイミング良く電話鳴って…最初…イタ電かと思ったんだけど…」




頭をポンとされた。



ドキッ



「…余程、暇人なんだろうな?」



そう言うとイタズラっぽい笑みを見せる。



「えっ…?」

「深く考えなくても良いんじゃ?」

「なっ…!ひ、他人事だと思って!」


「だって他人じゃん!ただの隣人だし、彼女でも何でもねえのに、心配する理由分かんねーんだけど」



「…あーー、そうだよね!お騒がせしました!さようなら!」




私は自分の部屋に戻った。




「…ストーカー…ね…」



俺はポツリとつぶやいた。




そんな私は不安な毎日になるのだった。





次の日の夜―――――




パチッ


部屋の電気をつける私。


その日、掛かってこなかった。



色々と済ませ



「ふー…今日は掛かってきてもないし、掛かってこないから、アイツが言う通り私の思い過ごしかな?考え過ぎだよね」



安心して一息ついたのも束の間





Trrrr…




ビクッ




固定電話が突然鳴り響き驚いた。





「えっ…?…ま、まさか…ね…」




私は恐怖の中、恐る恐る受話器を取る。




「はい…もし…もし?」

「今日は遅かったね?」



ゾクッ

受話器から聞こえる声。

奴だ。


まさかとは思ったけど……


そのまさかの相手だったなんて……




「仕事、長引いちゃって…」

「寄り道してたんでしょう?」

「えっ…?」

「真っ直ぐ帰ってないよね?」




《えっ…?待って…それって…》




「駄目だよ。真っ直ぐ帰らなきゃ」



「………………」



「いつも君を見ているからね」




プツ



プーッ…



プーッ…




電話が切れたようだ。




「…私…見られ…てる…?」




ガクッ  スー…



私は体をゆっくりと崩していく。





「………………」



「砂耶香ちゃーーん、あがるよーー。お土産、一人じゃ食べれないから、おすそ分け…って…どうしたの?青い顔して……砂耶香ちゃん?」


「えっ…?あ、ううん。な、何でもない。何?」

「……あ、これ。お土産、一人じゃ食べれないから」


「お土産?へえー、沢山の女の子から貰った物なんでしょう?ていうか、勝手に入ってきてるし」


「あがるよーーって言ったし!」

「嘘!!」

「本当だし!」

「そう?じゃあ、ありがたくいただきまーーす」




帰り始める龍介君。





「なあ、大丈夫か?」

「えっ?何が?」

「すっげー、青い顔してたから」


「あーー、全然大丈夫だよ。ていうか、私の事だし他人事なんでしょう?ただの隣人だし、彼女でも何でもないんだから気にしなくても」


「まあ…そうだけど…」


「ほら!帰った、帰った。じゃあねーー」





私は追い出すように帰した。




「………………」





本当は怖くて仕方がないのに


平気なフリして


笑顔を見せる







―――数日後の夜―――




相変わらず


その数日間も 


同じように電話は掛かってきていた






「どうしよう…?電話番号を変えても…同じって話だし……警察?…でも……」





スッと背後から抱きしめられる私。



ビクッ





「きゃあああっ!」



振り返る私。



ドキーン


至近距離にある顔に胸が大きく跳ねる。




「りゅ、龍介っ!!」

「おっ!呼び捨て良いねーー!」

「な、何、いきなり抱きつ……っ!」




キスされた。


ドキッ



「元気の出るおまじない」


「げ、元気の出るおまじないって……キ、キス…!?」


「えっ?良いじゃん!減るものじゃないし」


「減るよ!減る!しかもファーストキスだったんだけど!!」


「えっ…?」


「あっ…!」



「マジ…?えっ…?20歳なんだろ?学生の時、一人か二人は付き合った事あんだろ?」


「ないよ!」




「……意外……」

「えっ?」


「そうかー、ファーストキスなんだ…そんな事よりも、警察に行きな。俺も一緒に行くから。酷くなる前に手打った方が良い」


「だ、大丈夫!沢山の彼女達から誤解されたらかなわないから」


「そんなのは、どうでも良いだろ!?これはあんたの問題で命が掛かってくるんだぞ!?」


「それは、他の女の人から恨まれる事だってあるでしょう!?どれだけの彼女いるわけ!?私の事は放っておいて!ていうか…あんたの命も危ないんだから…」


「ストーカーなら、そうだろうな。だけど、女の一人暮らしなら、親は心配すんのも当然だろう?何かあったら遅いから警察に行け!」


「…あんたって…イイ奴なのか悪い奴なのか分かんないよ!」


「とにかく、明日、警察だからな!良いな!」




そう言うと私の部屋を後に帰った。





「……………………」




次の日、龍介君の付き添いで警察署に行く。


どうやら龍介君は警察署に知り合いがいるらしい為、話を聞いて貰った。


部屋に戻り、



「俺も一応、気を付けておくから、お前は普通にしてろ!」


「…うん…。分かった…ありがとう…」

「お礼は体で…」




バコッ


クッションで、打つ私。



「ってー」


「痛くないでしょう!?好きでもない男に軽々しく渡さないから!」


「何を?」


「な、何を…って…それは…」


「もしかして…!お前…処…」



再び違うクッションで押さえる。





「へ、変な事、言わないで!違います!とっくに済ませてます!」


「はあぁっ!?いやいや、キスが初めての、お前がおかしいだろ!?順番違うくね?大事なものは先に捧げて、チューしてねーのって」


「う、うるいなっ…早く出てって!」


「はいはい」



私は追い出すように部屋から出した。




















































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