第14話 後遺症

「誠一君、今日さ距離遠くない?」

「気のせいです」


 常に前かがみにならないだけマシだと思って欲しい。悶々とした気持ちを抱えながら授業を受けるのは苦痛だった。匂いにも敏感になっているらしく瑠璃の匂いで息子がガチガチになる。


「そういえば近藤先輩が入院したらしわ」

「あの人の噂流れるの早すぎない?」

「問題のある人だったし噂にもなりやすいんじゃない?」

「で、原因は?」

「不明よ。夜中に奇声を上げたと思ったら泡を吹いて目を覚まさなくなったみたい」

「へ~」


 絶対黒曜の一撃のせいだと思ったがそんな事口に出せる訳が無い。これは完全犯罪になるんじゃなかろうか? 


「元々停学になる予定だったし学校が平和なのは良い事よ」

「そうだね。俺も痛い思いはしたくない」

「誠一君筋トレしたら?」

「度胸がないから喧嘩にならない、筋トレしても無意味」

「ほっそいわよね誠一君。女装とか似合いそう」

「中学の文化祭でやった。何人かに男でもいいとか言われてトラウマになってる」

「……。ごめんなさい」

「別に気にしてない。女顔なのは自覚してる。筋肉もそんなにないし」

「ぜひそのままでいてね」

「成長期だから約束はできないなぁ」

「もう誠一君の成長期が終わっていることを期待したいところだわ」

「いやだよこんな身長で社会に出るのは」

「いうほど低くないじゃない」

「それは瑠璃さんが低いから、男子の平均身長にも届いてないんだよ俺……」

「年上の女性に可愛がられるかもよ?」

「俺は同い年か年下好きなんだけど……」

「世の中ままならないものね」


 年上にいい思い出が無いのが理由かもしれない。親戚のお姉さん方には可愛がっているのかいじっているのか分からないところがある。腕力が無いのに買い物には付き合わされるし。連れまわすだけで何も買わないんのが謎なんだが。ああ、着せ替え人形にはされた事があったな。


「ねぇ、やっぱり距離遠くない?」

「今までが少し近すぎたんです。そお言う事なんです」

「あれあれ~、女性として意識しちゃったぁ?」

「異性としては最初から認識してるよ。瑠璃さんが意識してなかったから乗ってただけ」

「なに? 欲情しちゃた?」

「その通りですから離れて下さい」


 腕に伝わる今は凶悪な感触に理性がぶっ飛びそうになる。止めて下さい。俺の理性は紙装甲なんです。


「あ、おっきくなってる」

「いっそ殺せ」

「健全な男なら当然の反応だから、気にしない気にしない」

「俺は周りの反応が怖くてしょうがないよ」


 殺意を乗せた視線が男女問わず突き刺さる。殺意だけで息が詰まる。夜道には気をつけよう。まだ、死にたくはない。

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バニー体操服ブルマに誘惑された 神城零次 @sreins0021

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