第13話 お説教

「なんで襲わなかったの?」


 黒曜の第一声はそれだった。身体が痛かったし、瑠璃の好感度を下げるのも悪手だと思ったからだ。これで瑠璃に嫌われたら俺は泣く。


「内心期待してたみたいだよ?」

「それは惜しい事したな」

「今日はエロいことは無しだから」

「この劣情をどうしろと?」

「明日瑠璃を襲えば?」

「出来ないと思って言ってるだろ」

「私だってモヤモヤはしてるんだよ……」


 黒曜は瑠璃と繋がっているようで二重人格的なところもある。黒曜を襲わないと瑠璃は悶々するのだろうか?

 試しにやってみるのも面白いかもしれない。


「黒曜は悶々して大丈夫なの?」

「私は瑠璃の欲望担当だけど、同時にお兄さんの欲望の一部でもあるんだよ」

「手を出さないと明日瑠璃は悶々すると?」

「どうだろう。お兄さんが悶々するんじゃないかな」

「悶々させてる元凶が何いってんだ……」

「瑠璃を襲わなかった罰だよ」

「嫌われたくなかったんだよ」

「同級生の家を特定して精の付く料理作ったのに手も出されない乙女心が分からないお兄さんはハッキリ言ってヘタレだと思う」

「うっ」


 個人情報を垂れ流す担任じゃないし、どんな手を使ったんだろう。その辺は明日聞いてみよう。今日は気が動転して聞くのを忘れていた。


「エロいことしないなら何する?」

「瑠璃攻略会議?」

「実際俺って瑠璃に好かれてるの?」

「クラスメイトでは一番仲が良いのは確かじゃない?」

「男女の感情は無いと?」

「どうだろう。意識はしてると思うよ? 瑠璃の夢にもお兄さんは出てきてるみたいだし」

「なにそれ初耳なんだけど」

「瑠璃は知られたくないと思ってるから、お兄さんも言っちゃダメだよ」

「夢の中の俺は何してるんだ」

「一緒に冒険?」

「エロいことはないのかぁ……」

「そこは瑠璃の防御反応じゃないかな」

「頑張れ夢の中の俺」

「そこは現実のお兄さんが頑張りなよぅ」

「好感度がMAX過ぎてなにしたらいいか見当もつかない」

「メロメロだね」

「その格好がエロ過ぎる。現実世界で制服姿見た時動悸がヤバかった」

「あ~。ギャップにやられたのか」

「現実世界で会えるとは思わなかったし」

「毎日夢で会えるとも思って無かっただろうしね」


 黒曜は瑠璃とは違う。それが分かっていてもお兄さんと呼んでくるのは素直に嬉しい。何故頑なに名前を呼んでくれないのかは分からないが。


「今日のお礼はした方がいいよな」

「日付的には昨日だけどね。甘いものなら何でも好きだよ瑠璃は」

「黒曜は嫌いなのか?」

「まあ、夢の中で食べても太らないけど瑠璃に影響が出たら大変だし」

「食欲が止まらなくなるとか?」

「しばらく見たく無くなるみたい」

「どんだけ食ってるんだ」

「ほら、夢だし」

「便利だよな夢」


 本当にエロいことさせて貰えなかった。悶々としたままの明日の自分が心配だ。


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