第11話 過激な復讐

 今日は黒曜に会いたい気分ではなかったのでBGMを聞かずに寝た。


「なんで反撃しないの」

「やっぱり居るのかぁ……」


 なんで反撃しないのかと言われても人には得手不得手があるのだ。喧嘩なんて産まれてからやった事が無い。兄弟げんかも絶対に負ける。身体を鍛えてない訳じゃないが、圧倒的に筋力が足りないし、体重も軽いのでパンチ力は女子に毛が生えたくらいだろう。


「黒曜は過激だなぁ……」

「私のお兄さんに暴力を振るっといて、はいお終いって納得がいかない」

「相手を停学に出来るんだからそれでいいでしょ」

「良くない!」

「過激だなぁ」

「私が代わりにボコる。お兄さん、その近藤先輩とやらをここに呼び出して!」

「いや、難易度高いって」

「この夢は私とお兄さんのモノ、多少の無理は利くよ」

「うぅん。出来るかなぁ」

「近藤先輩、いや近藤を呼び出して」

「この夢で近藤先輩を思い描けばいいの?」

「その通りだよ」


 今日いや、日付的には昨日会った近藤の姿を思い浮かべる。髪は明るい茶髪、黒の瞳で服装は着崩していた。声は低く、身長は高い。


「うぅん。難しいな」

「大丈夫。私がフォローするから」


 痛みを与えられた事への恨み、人を殴ることを躊躇しない沸点の低いクズを思い浮かべる。


「な、なんだここ」


 不意に近藤が現れた。どうやら黒曜のフォローで呼び出せたみたいだ。


「ふ、ふ、ふ。ここで会ったが百年目。年貢の納め時だよ」

「一船さん? 何その格好。めっちゃエロいんだけど」

「エロい目でみてくるな鬱陶しい。お兄さん金属バット出して」

「はいはい」


 金属バットを召喚して黒曜に渡す。金属バットを肩でトントンしながら黒曜が笑う。


「ちょっと、調子に乗り過ぎだよ!」


 問答無用で近藤の脇腹にフルスイング。骨の折れる鈍い音がした。一切の容赦がない。


「な、なんで」

「お兄さんをボコったんだって。許されると思ってるわけ? 死ね、夢の中だから本当に死ぬわけじゃないから安心してね」

「ゆ、夢?」

「そうだよ、でも痛みはあるでしょ?」

「夢なら痛いはずが……」

「残念。これは明晰夢。痛みくらい感じるよ」

「ひっ!」

「ご愁傷様です」


 その後狂ったように黒曜は近藤をバットで殴り続けた。腕を脚を、肩を、頭を。ゾンビで慣れたのかその振るうバットにはためらいが一切ない。


「も、もう止めて……」

「お兄さんをボロ雑巾にしといて許されるとでも?」

「そ、それは……。一船さんが俺を振るから」

「お兄さんを痛めつける理由になってないでしょ!」


 脳天に一撃喰らわせると近藤は目を覚まさなくなった。これは夢なので起き上がれないだけかもしれないが……。やりすぎでは……。


「ふう、少しは身の程を知ったかな」

「やりすぎな気もするけど」

「夢の中かでは本体には影響出ないから」

「夢見は最悪だろうね」

「ゾンビみたく殺しちゃう?」

「それは止めとこ。ホントに精神が壊れたら大変だ」

「お兄さんは優しいなぁ」

「黒曜にいっぱい殴ってもらってちょっとスッキリしたよ」


 黒曜が抱き着いてくる。褒めて欲しいみたい見たいなのでいい子いい子してあげる。


「どうする? 今日もヤル?」

「いや、こんな死体みたいなのがあるとこでやりたくないかな」

「死ね、近藤!」


 怒りに任せた一撃が炸裂する。近藤は光の粒子になって消えた。

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