第8話 ゾンビ映画の爆発的ヒットの要因

 昼休み、昨日の夢のせいかパンしか受けつけない俺は、購買でメロンパン一個とクリームパン二個。一つは瑠璃用どうやら夢見が悪かったらしい。さもありなん。

 

「ゾンビ映画って匂いで気付くでしょって思うのよね」

「それな」


 自動販売機で買ったイチゴ・ラテを飲みながら瑠璃は声を荒げる。どうもお肉もダメになったらしい。それは明晰夢ですね。俺と黒曜の見た夢とはまるで違うけれど臭そうと云うことは一致していた。


「最後はガソリンスタンドでガソリン調達してきて全部燃やしてやったわ」

「それは豪快だなぁ、火傷しなかった?」

「熱風で髪がチリチリになったわね、あれはリアルな夢だってわ」

 

 実際ガソリンで付けた火は揮発性が高く物凄く危険だ。危険物乙種四類の免許が無いと運搬出来ない。父の危険物乙種四類の教科書に載っていたがガソリンは色が付けられている。ピンク色に着色しないと灯油と間違えてしまって石油ストーブに入れると百パー火事の原因となる。

 閑話休題。


「それもこれもお父さんが晩酌でくさやと日本酒飲んでたのが原因だと思うのよ」

「合うんだってね。大人になったらやってみたい」

「お父さん夕食抜いて晩酌始めちゃうの、それがお母さんの頭痛の種なんだよねぇ」

「家族で同じものを食べた方が食費は安いからね」

「おこづかい貰って晩酌代も貰うんだよ。ホント考えらんない」

「酒代だけでおこづかい飛ぶからねウチの父さん欲しい本を母さんにねだる父さんをみて堪え性ねなぁって思ったよ」

「誠一君のお父さんは欲しいものは当日買うタイプ?」

「いや、予約特典目当てで予約するタイプ」

「でゾンビ映画の火付け役になったバイオハザード無印は全ての初見ファンに恐怖を刻み付けたと」

「かゆ……。うま、だよね」

「その後のタンスから出てくるゾンビにビックリして上半身ショットガンで吹き飛ばしたり、ゆうちゅうぶでやってたわ」

「俺は父親の私物でやって振り返ったゾンビのビジュアルがトラウマで父さんの勧めで暗い部屋でヘッドホン付けてプレイしてたから恐怖が半端なくて泣きながらクリアしたよ」

「うわぁぁ……」

「怖くて暗所恐怖症に……。真っ暗だと不安で寝れない」


 よしよしと頭を撫でられる。羨望の眼差しが突き刺さる。悪目立ちはしたくない。が、昨日というか今日は欲望が抑えられないかもしれない息子も臨戦態勢だし。気付かれないでくれよ……。


「誠一君具合悪い?」

「嫌なんで?」

「顔が真っ赤」

「同級生の子によしよしされたら年頃の男の子は真っ赤ににもなるよ!」

「そう? 誠一君はかわいいね~」

「男にかわいいは褒め言葉じゃないからね、言っとくけど」


 よしよしを止めてくれずクスクス笑う瑠璃は物凄く可愛かった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る