第7話 浸食

 毎夜のローテーションをこなしベッドにダイブ。BGMを聞きながら眠りに落ちる。


 目の前の光景に唖然とする。ゴ〇ラでも暴れたのかと思うような壊れたビル。火事で立ち上る黒煙。ひと気はまるでないのに異臭が鼻に着く。死臭だろうか? 嗅いだことないけど昔飼っていた猫がガンに侵され、膿から垂れ流しされる腐った細胞の匂いにそっくりだ。

 彼女を探す。瑠璃によく似た子。あの子はここに居るのか? 

 出来れば居て欲しくない。こんな地獄みたいなところに……。野菜ジュースを飲んだ夜の夢は悪夢が多いと云う都市伝説を鵜吞みにした結果がこれか?


「いたいた。お兄さん~!」

「……。やっぱり名前が無いのは不便だな」

「瑠璃でいいよ?」

「いや、俺専用の瑠璃だから他の名前がいいかなって」

「瑠璃じゃなくて黒曜がいいな」

「石繋がりでいいんじゃないか?」

「私黒曜改めてよろしくね、お兄さん」

「よろしく黒曜」


 周りを見渡しても黒曜以外に人は居ない。ただ異臭が強くなった気がする。風向きが変わったのか、異臭の原因が近づいているのか分からないが戦うのは不利だ。黒曜の手を握り走り出す。


「お兄さん、この匂い臭い」

「細胞が腐った匂いだ昔嗅いだ事がある」

「ゾンビかな?」

「なにちょっとワクワクしてるの⁉ まさかのゾンビファンとは!」

「生命の神秘にワクワクしちゃう」

「いや、あれ元ネタはブウドゥ教の呪いだから罪を犯した人間の死体を動かして労働させる奴だから」

「バイオハザードは?」

「アンブレラ社はありません!」


 逃げている間に武器を召喚する金属バットを召喚する。野球はバッティングセンターや体育の授業で形状と重さが頭に入っている。問題なく手元に金属バットが現れる。

 高所から異臭の原因を探そうと比較的無事な建物から下を伺うとヘドロの塊みたいな不気味な生き物(?)が現れる。匂いは段々強くなり目に染みてきた。


「こりゃ、金属バットじゃなくて火が要るな」

「クチャいよう」


 黒曜は鼻を摘まんでいるいる。消火器の中身をガソリンにしてドライアイスを入れて再密封。マッチだと途中で消えてしまう為父のジッポライターを思い浮かべる。中身を見た事も有って問題なくは想像で出せた。消火器は見つけたが開かない。この中身はガソリンだと思いこむ。

 化け物に向かって消火器の中身をぶちまける。狙い通り中身はガソリンになってくれた。ぶちまけられるガソリン、トドメのジッポライターに火を付ける。窓の外に投げる。

 立ち上る火柱腐った肉の焼ける匂いで卒倒というか世界が暗転して目を覚ました。

 今日は黒曜を襲えなかった。二度寝する気も起きなかったので早めに勉強を始めた。空が白み始めた頃に腹が減ったので母親が毎日朝食で食べている食パンに手を伸ばす。食パンの上にマヨネーズを塗りハーフサイズのベーコンを乗せてその上にスライスチーズをの乗せるとトースターでチーズが解ける頃合いを見て取り出す。電気ケトルのスイッチをいれてインスタントコーヒーを淹れる。水でも溶けるタイプなのでぬるま湯でも溶ける。猫舌なのだ。ベーコンの焼けるいい匂いのせいで夢の匂いがどれほど悪臭だったか改めて思い知った。今度は会うことが有ったら凍らせようそう心に決めた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る