第4話 同級生
一船瑠璃と甘城誠一の関係性は同級生である三日前までは、今は親友と言ってもいい。男女の友情は成立しない。それは瑠璃と誠一もそう思っている。これは休戦条約と言って良い。孤高の姫と孤独な少年は周りを欺くために親友になった。一緒の時刻に登校し、机を並べて授業を受ける。休み時間の間も談笑し、昼食も一緒に取る。おかずの交換もする。瑠璃は一口ハンバーグを誠一は卵焼きを交換し昨夜みたドラマの見どころについて意見を交換する。深夜アニメにも造詣が深く。放課後は感想会を開くことが有る。全ては下心丸出しの男子の防波堤である。
「今期のアニメは豊作だね。レコーダの容量が足り無くなりそう」
「外付けHDDが欲しいよね。あれなら値段次第で無限に取れそうな奴とかあるし」
「でもピンキリでしょ」
「そりゃそうだ。高校生活でアニメがどれだけ重要になっているか、どうかじゃないかな。あとレコーダーはディスクに落とせるしね」
「DVD-Rもピンキリだよ?」
「そりゃそうだ……」
上を見ればキリがない。下見るのは滑稽だ。何事も自分に合ったモノを選ぶのが最善の選択だ。
「入船さんは防波堤のつもりだよね。俺の君持ちの事は気にしなくていいから正直に言ってくれない?」
「変な事言うわよ、いい」
「もちろん」
「やっぱり、言えない!」
なんとなく察して、そうかとだけ答えた。
「甘城君そろそろ名前呼びにしない?」
「そうだぁ……瑠璃、さん?」
「誠一、君」
まだ呼び捨てにするまでの時間はまだある。転勤族でもない限り、だが。
「瑠璃さんは転勤族?」
「いいえ。おばあちゃんが倒れちゃって、引っ越ししたんだ」
他人の不幸を喜ぶ趣味は無いが、おばあさんには感謝するしかない。またこうして出会えた悦びは初日からちっとも衰えていない。それどころか燃え上がる恋心にしては生々しい獣欲と独占欲。二日連続で夢の彼女を抱いていなかったら今頃問題を起こしていたかも知れない。
「目が怖いよ? 誠一君」
おっと獣欲が少し戻ってしまった。怖がらせるのは本意はでない。自分でも脆いと思っている自制心を総動員して欲望に蓋をする。
「孤高の姫には従者が必要だろ。いつでも連絡してくれていいよ」
いつも持ち歩いているメモ帳とボールペンで自分の連絡先を書いて渡す。
「私の連絡先も書いとくね」
瑠璃はボールペンを借りて誠一と連絡先を交換する。これでまた一歩瑠璃に近づけたと思うと歓喜が込み上げてくる。
「寝るのは深夜一時過ぎ。それまではRINEでもくだらない無駄話でも聞くよ。その前は風呂と勉強時間だから」
「上の大学を目指しているの?」
「特にここって場所はないな。高二は中だるみしやすいから気を付けてるだけだよ。そろそろ帰ろう。春先とは言えまだ寒い」
「そうだね。暗くなると不埒な輩も出てくるだろうし」
その手の輩にはスタンガンをくれてやろう。武力で訴えるなら容赦はしない。これでも腕力には自信がないのだ。自衛手段くらい持っている。
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