第十五話 「Ледева(レベデワ)」
「(Однако...
(しかし――――...
"ガタッ ガタタッ"
"バサッ"
時刻は既に深夜十二時を回り、
店の店主である恒吉や、明美が
店の暖簾(のれん)や、後片付けをしている中で
スサケフスキは焼酎から日本酒に飲み代えた
グラスを傾ける....
「(Этот любитель――――….)
(あのアマ――――....)」
"ダリア・レベデワ"
「(Женщина, которая
присоединилась к
нашей компании как
раз, когда Эмои был
прикомандирован к
Мофсогорлову――――)
(ちょうど、エモイが
モフソゴルロフに出向した頃に
ウチの会社に入って来た女―――...)」
スサケフスキは、局員の補充をするために
新たに三カ月程前に入社してきた新人女性記者、
"ダリア・レベデワ"
とのひと月ほど前のやり取りを思い返す――――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「Тогда на "Мовсогорлов"
никто не ходит!?
(それじゃ、誰も"モフソゴルロフ"に
行く奴はいねぇってのか!?)」
"ダンッ!"
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「Черт возьми... что
это за ребята...!
(ちくしょう~っ....
何だってんだ、コイツらは...!)」
一月程前。
モフソゴルロフに出向した
隆和、中根、そして林の三人の局員の内、
日本人の巨漢社員である
中根 学が持ち回りで社に帰社する事を聞いて、
その中根が抜けた穴を埋めるために
人員を一人、この第一編集局から
補充する様にと河野に言われ、局内の部下達を集め
モフソゴルロフに出向する事を
希望する者がいないかと
スサケフスキが問いかけるが、
みな、普段から酒に酔いながら
強権的に接して来る上司に怖れを抱いているのか
誰一人口を開こうとしない....
「――――«Мовсогорлов»!!
"Мовсогорлов"! ! "Дух!" ?
...Неужели нет никого,
хотя бы одного
человека, который
хочет пойти туда?! ?
(―――"モフソゴルロフ"ッ!!
"モフソゴルロフ"ッ!! だッ!?
・・・誰か、一人でも、向こうに
行こうってガッツがある奴はいねえのか!?)」
「...Евгений...
Извини, но если
ты ищешь "взрослых"
отношений, может, тебе
стоит немного больше
подумать о том, как ты
относишься ко мне...!
(・・・エフゲニー...
悪いけれど、"大人"の関係を求めてるなら、
少し、私に対する扱いを
考えた方がいいんじゃないかしら...!)」
「... Вас интересует
только
"прелюбодеяние".
(・・・"不倫"しか興味がねえのか....っ)」
自分の机の前に集まった、数十人程いる
社員達に向かって呼び掛けるが
その社員達の間からは
どこから聞こえて来るか分からない、
囁(ささや)きの様な
"不倫話"が聞こえて来るだけで、
この局内には誰一人としてモフソゴルロフに
出向する事を望む者はいない様だ....
「(Гуна...!)
(ゴウナ....ッ!!)」
元々、このモフソゴルロフに
局内の人員を派遣させると言う話。
「(Анояро...! Дайте мне
еще один приказ.)
(アノヤロウッ....!
また、俺に命令を...っ!)」
モフソゴルロフに出向した
隆和達の業務とスサケフスキには
殆ど関りが無かったが、
新しくこの社に支局長として就任した
河野が、自分の部署の人員の刷新を図るため、
中根を第四編集局に呼び戻す都合から、
河野は、この第一編集局の中から
一人を選んでモフソゴルロフに出向する社員を
出せと告げて来た....
「...Тасоев... Потому
и говорю...
"Если вы с Евгением
хотите отношений со
мной, вы должны
уладить отношения с
Варрентьевым...!
(....タソエフ...
だから、言ってるでしょう....
あなたと、エフゲニーが
私との関係を求めるなら、それは
ワルレンチェフとの関係性を
清算してからでないと....!)」
「Затем, после
этого, со мной.
(―――じゃあ、その後なら俺と....!)」
「Кто говорит...!
(誰が話してやがるんだ・・・!)」
「В таком случае,
интересно,следует
ли меня
прикомандировать к
Мофсогорлову...!
(―――それなら、私が、
モフソゴルロフに出向していいかしら....!)」
「Вы――――....
(テメェは――――....
「Если не к кому пойти,
могу я вам там
сказать??
(誰も、行く人がいないのなら
私がそっち(モフソゴルロフ)に行って
構わないでしょう――――??)」
「・・・・」
誰が喋っているか分からない、局内の
卑猥(ひわい)な話に神経を尖らせていると、
局員達の中から
"ダリア・レベデワ"
一人の新人の女性社員が進み出て来る
「Конечно ты....
"Лебедева", да?
(確か、てめぇは―――....
"レベデワ"、だったよな?)」
「···да.
(・・・ええ....)」
"ダリア・レベデワ"
「Этот парень.
(こいつは...)」
ちょうど、隆和達がモフソゴルロフに出向する時期に
入れ替わりの様な形で、第一編集局に
配属となった新人女性局員で、普段あまり喋らず
業務的にも何の支障も無いせいか、
スサケフスキもこのレベデワについては
あまり印象が無い
「...если я правильно
помню, вы были
"Лебедевой"...!
(・・・確か、てめぇは、
"レベデワ"だったよな・・・!)」
「···да.
(・・・はい。)」
「(・・・・・)」
一瞬、女。それも新人社員である
このレベデワがモフソゴルロフに
出向する事を志願した事に、考え込むが
【・・・お前、まだ自分の立場が
保証されてると思ってるのか...?】
【.....!】
「(Гуна...!)
(ゴウナッ....!)」
河野の言動を聞けば、
余計な事を考えている余裕は無い
「Хорошо, тогда Теми —
это Мохсогорлов.
(よし、それじゃ、
テメェがモフソゴルロフだ。)」
「····Да.
(・・・・ハイ。)」
「・・・・・」
「Что это за
девушка-новичок...
(何だ、あの新人の女...)」
「Но благодаря тебе
я был спасен.
(―――でも、おかげで助かったじゃない)」
「(Лебедева....)
(レベデワ....)」
集まった社員がバラける様に、自分の机に
引き返して行くのを見ながら
「(・・・・)」
スサケフスキは、何も言わず静かに
自分の机へと戻って行く
新人社員の後姿を見ていた・・・
「(......)」
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