第十二話 「высокоскоростной(高速)」
「(・・・何をやってるんだ?)」
"ザッ ザッ ザッ ザッ.....
【Я сделал это! Еще
один хит!
(やった! また、"当たり"よ!)】
【Непрерывно или...?
("連続"か・・・?)】
「(・・・・)」
隆和は、ルームランナーを下り、
ツベフォフの姿が部屋の中に無い事を確認すると
そのまま部屋の隅で何かはしゃいだ様に
カードゲームに興じているレベデワの元まで
歩いて行く
「Что делаешь?
(・・・それ、何やってるんだ?)」
「Аймой.как
насчет бега?
(エイモイ―――、ランニングはいいの?)」
「土豪(トゥ ハオ)...土豪(トゥハォ...)」
レベデワの言葉を聞きながら、隆和が
先程まで自分がいたルームランナーの方を見ると、
林が何か意味不明の言葉を叫びながら
苦しそうな表情で走っているのが見える
「Ах, я уже далеко
забежал.
(・・・ああ、もう大分走ったしな)」
「Правильно...
Тогда продолжай...!
(そう... それじゃ、続きを....!)」
「Уже?
(も、もうか?)」
"スッ"
「(Э[エー]....)」
テーブルの反対側に座っている
男に向き直ると、レベデワは
テーブルの上に何十枚と並べられた
何も書かれていない裏返しになった
"カード"を一枚引き抜く
「....」
「...как это?
(・・・・どうだ?)」
「(....?)」
「....Подожди секунду.
(....ちょっと待って....)」
「Если вы можете это
догадаться, то это
6-й правильный ответ.
(それを当てる事ができれば、
これで、6枚目の正解だ・・・・)」
「(・・・・)」
"ギュッ"
「・・・・!」
テーブルの二人に目を向けると、何故か
レベデワは頭に輪状の器具の様な物を付け、そして
その輪から紐(ひも)の様な形状の線が
出ているのを気にしながら、
今自分がテーブルの上に置いた
カードを真剣な表情で見つめている
「... Фу...
(.....うっ...」
「...Что случилось?
Это было просто
совпадение?
(....どうした?
さっきまでのはただの偶然か?)」
「(何かどっかで見た事あるな...)」
「Подождите минутку.
эта карта...
(ちょっと待って...さっきのカードが....)」
「О, это ы.
(ああ。"ы(ゥイ)"だ。)」
「Ну тогда....!
(それじゃ....!)」
"スッ"
「···Ой!
(・・・おお!)」
「«Э», верно?
("Э[エー]"でしょ?)」
「...! Правильный ответ.
(・・・・! 正解だ。)」
「(・・・・)」
自分が引き抜いた一枚のカードの表に書かれた
ロシア語のアルファベットをレベデワが口すると、
向かい側に座っていた髪の短い、
ロシア人と思われる男性が驚いた表情を浮かべる
「...почему-то я просто
"подумал", что.
(....何となく、そう
"思った"だけなんだけど...)」
「...это довольно "Г"...
(...かなりの"Г(ゲー)"だな...)」
「... что это?
(・・・それ、何なんだ?)」
「А, тебе любопытно?
(―――ああ、気になるの?)」
「…Трамп что-ли?
(・・・トランプか何かか?)」
レベデワが手にしている、背表紙が紫、
そしてその反対の表の面に
ロシア語のアルファベットが書かれた
カードに隆和が目を向ける....
「Это одно из
червей, «Э».
(これは、心和の一つ、"Э[エー]"よ。)」
「Э...
(Э[エー]...)」
「да....
(そう....)」
"パラ...."
テーブルの上一面に並べられた紫色の
トランプ程の大きさのカードをめくると、
レベデワはそのカードに書かれた
"記号"を読み上げる
「(Э(エー)....)」
「Особенно, хоть это и
не имеет большого
значения, это время
«кокова» для
приобретения знаний,
необходимых для
работы и жизни в
этом объекте и
навыков, которые
пригодятся вам в
будущем. Это время
как «обучение»
носить...
(特に、大した意味はないのだけれど、
この"心和"の時間は、この施設内で
作業や生活をするのに必要な知識や将来的な、
自分自身に役立つような能力を身に着ける
"研修"の様な時間なの...)」
「...подготовка.
(..."研修"....)」
「....Да
(....そうね)」
"Х(ハー)"
裏返しになったカードをレベデワが
更に一枚めくると、そこには
"Х(ハー)"のアルファベット文字が見える
「...кух..., уютно...!
(....くっ...、ぬくっ....!)」
"ジャパッ ジャパパッ!
「Андрей...!
(アンドレイ....!)」
「Кух...! А теперь
отступите...!
(くっ....! さ、下がってろ....!)」
「...ч-что...!
(・・・な、何を...!)」
"ジャバッ! ジャババッ!"
「・・・・!」
「Ах, Андрей!
(あ、アンドレイ!)」
突然、先程までレベデワにカードを渡していた
短髪の男が、なぜか必死の形相で
テーブルの上に置かれた
"洗面器"のような物に右手を入れ、
その手を激しく震わせる....
「Кроме того, еще
немного...!
(も、もう少し....っ!)」
"ブ....ブブ... ....ブブブブ....ッ
「Также, немного больше?
(も、もう少し?)」
"ジャバッ! ジャバッッ!!
「Ах, Андрей!
(あ、アンドレイ!)」
アンドレイ、と呼ばれた男は目の前に置かれた
水が浸(ひた)された洗面器に右手を放り込むと、
その右手に力を込め高速で右手を振動させる!
"ブルッ ブルルッ!"
「Ах, Андрей!
(あ、アンドレイ――――!)」
"ジャバッ!"
「...Кх!
(....くっ!)」
"+2.1℃"
「(温度計....)」
「кух...!
(くっ....!)」
"ジャパッ!"
「Ах, температура
(あ、お、温度が――――っ)」
"ブルルルルルッ!"
「кух...!
(くっ....!)」
「・・・・!」
"ジャパッ!"
何を思ったか分からないが、男は
震わせていた右手を洗面器から外すと、
その手を自分の顔の前に掲げ、手に付いた液体を
観察する様に眺め少しすると、洗面器の中に置かれていた
"気温計"の様な物に目を向ける....
「...температура
воды.2.2℃....
повышение на 0,1°C...
(...水温.2.2℃....
0.1℃上昇...)」
「Разве это не
удивительно!?
Андрей! ?
(―――す、すごいじゃない!?
アンドレイッ!?)」
「・・・・」
「Ах, Андрей!?
(あ、アンドレイ!?)」
「···Ой
(・・・ああ)」
「(何やってんだ、こいつらは...)」
"ガタッ!"
「Эксперимент по
увеличению трения
воды из-за
высокоскоростной
вибрации правой руки
был подтвержден!
(右手の高速振動による、
水温の摩擦上昇実験、検証完了ね...!)」
「... ах... я трясла
рукой в воде
намного сильнее,
чем обычно...!
(....ああ...いつもより、かなり激しく
手を水の中で振動させてたからな...!)」
「(摩擦....!)」
「До сих пор при
испытаниях и опытах
этого "Ч" не
следовало признавать,
что температура воды
будет повышаться
из-за
высокоскоростной
вибрации правой
руки...!
(今までこの"Ч(チェー)"の試験、実験で
右手の高速振動による水温の上昇は
認められなかったはず....!)」
「Наконец-то у вас
есть результаты.
(―――ようやく、"成果"が出た、って所だな)」
「(・・・・)」
"ジャパッ"
「Что с вашей картой?
(そっちの、カードはどうだ?)」
「... Т, снова хит
(・・・・"Т(テー)"、また当たりね)」
「Кажется, смысл
"Г" возрастает
все больше и больше...
(どんどん"Г(ゲー)"の感覚が
高まってるみたいだな・・・)」
「Кажется так.
(そうみたいね・・・!)」
「・・・・」
"ジャパッ"
二人が何か喜んだ様子で話している横で
隆和は、先程まで男が右手を浸けていた
洗面器の中に入っている水を手ですくいとる
「Не пора ли
закончить сегодняшнее
теплое время?
(・・・そろそろ、
今日の心和の時間も終わりか?)」
「уже пора?
(・・・もうそんな時間?)」
「(2.2℃....)」
洗面器の中にある温度計、そして、男の行動、
この二つの行動から考えると
どうやら今目の前にいるこの男は
自分の手を洗面器の水に浸け、
高速で振動させる事により摩擦熱を発生させ
"洗面器の中の水温を上昇させる"
と言う実験を行っていた様だ...
「(摩擦で水温が上昇したんじゃなくて
自分の体温で水の温度が
上がっただけじゃねえのか・・・)」
♪
♫
♫
♪.........
「・・・・!
「Давай проведем
сегодняшнее радостное
время вот так.
(さあ、今日の心和の時間は
これくらいにしよう)」
「Цвефов!
(ツベフォフ!)」
部屋の中に置かれたスピーカーから
今まで流れていた音楽とは別の、
落ち着きを感じさせる様な曲が流れ出し、
部屋の中にいた作業員達が入り口を一斉に見る
「... Важно повторять и
повторять работу,
чтобы сегодняшняя
сердечная гармония
привела к следующей
сердечной гармонии...
(・・・今日の心和も、
次の心和に繋がる様繰り返し、
反復して作業をする事が大事だ・・・)」
「(・・・・)」
哀愁を感じさせる様な、あまり
耳にした事の無い様なロシア音楽と共に
部屋の中に現れたツベフォフを見て
「(・・・訳がわからん)」
隆和は、右手を洗面器につけ、手を高速で
"振動"させる....
"ジャパッ!
"ジャパパッ!
「(上がれ....!)」
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