第十一話 「Кокорова (Ⅱ)[心和(Ⅱ)]」

"グイイイイイイィィィ――――


「・・・っ ―――ハッ ハッ、」


"ダンッ! ダンッ ダンッ! ダンッ!


「――――カナリ、いい動キヨ...」


「り、林さん....っ」


Абсолютная-Ø。


Раздел поддержки

(ラジエル・ポディエシュキ=サポート区画)


と呼ばれる区画にあるトレーニングルームの室内で


何台も置かれたルームランナーの中から


一台を選び、その上で隆和が汗を流していると、


隣のルームランナーで自分より


やや速い速度で走っていた林が軽く驚いた表情で


話しかけてくる


「・・・サイショ、エモイつぁん見た、


 そのトキ、トテモおそかタよ....」


「―――ま、まあ....


 もう....この施設に来てからっ ハッ...


 二カ月は経ってるからな...ハッ...!」


"ダンッ ダンッ ダンッ ダンッ


「そうでつ....」


「(多少、体力みたいな物はついたが....)」


"ピッ ピッ!


「まタ、ソクド、あげるノ?」


「・・・・」


当初、このルームランナーで


ジョギングをする様になった始めの頃は、


普段のデスクワークの仕事に慣れ切っていたせいか


10分程走るのにも苦労していた隆和だったが、


ある程度の期間このトレーニングルームで


ジョギングを重ねる内に


体の方も大分慣れて来た様だ


「(き、けっこう、走れるな...)」


この二、三カ月の間、土木作業、更には


心和と称される終業後の時間に


かなり走り込んでいたおかげか、


気付けば、あまり息を切らす事無く


快調にマシンの上を走れる様になった....


「...この間、林さんは何か


 テストみたいな物やったんだろ?


 ――――ハッ、ハッ」


"ダンッ! ダンッ ダンッ ダンッ...!


「そうでツォ.... っ っツォッ


 ま、....マーー....っ」


「・・・・」


自分より、かなり機械の速度を上げていたせいか


苦しそうな表情を見せている林を見ながら、


隆和は明かりのあまり無い、広い室内に目を向ける


「(・・・・)」


"ピッ ピッ"


「・・・・」


"ダンッ! ダンッ ダンッ


「(・・・


 この間の林さんの話だと、


 前回林さんが受けた"心和"の時間は、この


 Абсолютная-Ø内の施設や


 規則の確認みたいな物を


 筆記テストみたいな形式で


 やらされたみたいだが...)」


"ピッ ピッ"


「(・・・・)」


"ダンッ! ダンッ ダンッ ダンッ


「え、エモイつぁん.... ハッ ハッー」


「(何だってわざわざ終業後の時間に


  こんな場所に集まって


  ランニングなんかするんだ....?)」


通常、この心和、と呼ばれる講習の様な時間には、


このАбсолютная-Øと呼ばれる


地下施設の最高責任者である


アルフォンソ・ツベフォフが、


講師の様な形で加わっているが


どうやら、今日は他に何か予定でもあるのか


ツベフォフの姿は見えない


「ツォ... つっ、ツォ....っ!」


"ダンッ ダンッ ダンッ ダンッ!"


【Значит, эта карта...


 "ы"...?

(それじゃ、このカードは....


 "ы(ゥイ)"....?)】


「(レベデワ・・・)」


"ダンッ ダンッ ダンッ ダンッ!"


【Правильно... Похоже,


 вы подняли "Г " Оиты...

(正解だ.... 大分、


 "Г(ゲー)"を上げて来たみたいだな....)】


「え、エモイつぁん、ちょと、


 ソクドおそクしようヨッ!?」


「(・・・何やってるんだ?)」


【Ведь....почему-то это


 было похоже на "ы"

(やっぱり.... 何となく、


 "ы(ゥイ)"の様な気がしてたのよね)】


「・・・・」


"ピッ!"


「ア!」


「・・・・」


ルームランナーの上から、


部屋の隅のテーブルに座っているレベデワを見ると


何故かカードの様な物を手に持ち


テーブルの反対側に座っている男と


何か話をしている様だ....


「(・・・・)」


"ピッ ピッ!"


「・・・・」


「ちょ、ちょト! え、エモイっつっあんっ!?」


「・・・何だ?」


隅にいるレベデワが気になったのか、


ルームランナーの停止ボタンを押し


隆和が床の上に下りると、隣で走っていた林が


何故か声を上げる


「い、イヤ... シュウギョウキソク.... 


 ―――デハなかタ。


 ・・・こノ心和の時間のノルマである、


 こノジョギングの時間を、


 ヤメることハなりマセン...」


「―――今日は、特に


 ツベフォフ氏の姿も見えないし、


 少しくらい休んでも構わんだろ」


「・・・イ、イエ...」


「・・・・」


"トンッ"


「エ、エモイつぁん...」


「(・・・・)」


【Тогда следующий...!

(それじゃ、次は...!)】


【На этот раз будет


 сложно...!

(今度は難しいぞ....!)】


「(・・・!)」


「え、エモイつぁん」


「・・・・」


後ろから聞こえて来る声を無視して


「(あれも、"心和"なのか・・・?)」


「き、吉林省―――....


 青州――――...涼シュウ――...」


「(・・・・)」


隆和は、そのまま部屋の隅にいる


レベデワの方に向かって歩いて行く....

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