第九話 「Право представительства(代表権)」
"ガチャ"
「Тасоев....
Даже если вы
потеряете хладнокровие
и страсть и
попытаетесь сделать
наши отношения
холодными как лед,
«эмоции», которые
текут между нами, как
магма Камчатки, не
могут быть погашены.
(タソエフ....
あなたが、冷静さと情熱を失い、
私達の関係を氷の様に冷めた物にしようと
私達二人の間に流れる、まるで
カムチャッカのマグマの様な
"情動"は消す事はできない――――)」
「Наталья...
(ナタリア・・・・)」
「(何の話をしてるんだ)」
第四編集局長代理、現在はこの
藻須区輪亜部新聞支局長に就いた河野が、
詳細な会計の数字を確認するため
第四編集局から、一つ上の階にある
第一編集局を訪れると、
室内にまばらにいる男女の数人が
何か深刻な表情で話し込んでいるのが見える...
「...Ви
(....ウィ~っ)」
"ドンッ!"
「(・・・・)」
"コッ コッ コッ コッ....
「...Ви...!
Блин...
Почему так холодно
каждый день...!
(....ウィ~っ....!
ちくしょう...っ
何だって毎日こんな寒いんだヨっ....!)」
"ドンッ!"
「Похоже, он все
еще пьет.
(相変わらず酒を飲んでるみたいだな)」
「ッ!?
ゴ、ゴウナ――――!!」
「会社で朝から、"迎え酒"ってか...?」
「ム、ムカエザケ―――??」
この部屋の主である、第一編集局編集局長である
カラシニーコファ・スサケフスキが、
室内の最奥の編集長席で、
いつもの様にウォッカを片手に
インターネットラジオを聞いていると、
自分の目の前に新たに自分に代わり
この藻須区輪亜部新聞で支局長に就いた、一人の
"日本人"の姿が見える....
「ゴウナ....っ! テメェ...ッ」
「ずい分派手にやってるみたいじゃねえか?
あぁ?」
「ッ!?」
"スッ"
スサケフスキ、は、目の前に現れた河野に
やや緊張した様な面持ちを浮かべると
手にしていたウォッカの瓶のキャップを閉める
「ナ、ナンノヨウダ―――??
ゴ、"ゴウナ"―――?」
「・・・・」
河野が、ウォッカの瓶を片手に
訳の分からない表情で自分を見上げている
スサケフスキを見下ろす
「・・・・」
「(・・・ゴウナ...ッ)」
今、目の前に突然現れたこの日本人。
「いや、この会社の会計がどうなってるか
知りたくて、この第一編集局まで
来たんだが....」
「(ゴウナ――――ッ!)」
元々、この今自分の目の前に立っている
ジャップは、この
藻須区輪亜部新聞社の前身である
イスクラ・コムソモーレツ社を
日朝の命令で買収し、経営者である
自分の権力を奪い失墜(しっつい)させた男だ....
「Япончик... Япончик...
(ジャップ...ッ ジャップッ...)」
「・・・第四編集局で確認しようとしたんだが、
会社全体の収益はこの第一編集局で
管理してると言われてな」
「Япончик...!
(ジャップ....っ!)」
会社の経営権を奪うだけでも、
このスサケフスキにとっては許しがたい行為だが
更に今、何故かこの河野は
モフソゴルロフに出向した第四編集局長の
江母井 隆和の代理として、
自分が就いていた"支局長"の肩書を
引っ下げて、何食わぬ顔で自分の前に立っている
「(シキョクチョウ... シキョクチョウ....ッ
シキョクチョウ...ッ....
....チクショウッ!)」
「それで―――
―――煩雑....~
数字――― いいか~
オマエ―――
して欲しくてな――――」
「(Сволочь...!)
(この野郎っ・・・!)」
"グイッ!"
会社の経営権を奪い取り、更には
今度はこの藻須区輪亜部新聞において
自分の"支局長"の肩書まで奪い取ったこの河野が
自分の目の前にいるのを見て、
スサケフスキは、ウォッカのグラスを傾ける
「おい、お前、聞いてんのか・・・!」
「―――ッ!?
イ、イヤ、キイテルジャネェカ...」
一瞬、我を忘れて
ウォッカを呷(あお)ってみたものの、
自分の目の前に"ゴウナ"がいた事を思い出し、
スサケフスキは慌ててグラスを机の端に片付ける
「だから、この会社の詳しい
利益的な数字が分かる
書類を見せて欲しいんだが...」
「ゴウナ....
テメ...イヤ、ゴウナスァン...」
「・・・何だ?」
スサケフスキが、流暢な日本語で河野に喋りかける
「コンカイ、テメ....イヤ、
ゴウナスァンハ、コノモスクワアベシンブンニ
シキョクチョウトシテ、コノカイシャニ
キタミテェダガ、ナゼ、
ソノヨウナコトニナッタンダ...」
「・・・・」
辿々しい日本語を聞くと
河野が飽きれ顔を浮かべる
「それは、この間も説明しただろう?
・・・今、モフソゴルロフに出向している
江母井に代わってこの俺が、
第四編集局長の編集長代理になったからだ。」
「イヤ、ソレニシテモ....
オカシイジャネェカ...」
「・・・何がだ?」
哀願する様な目でスサケフスキが
河野を見上げる
「オメェ――、イヤ、テメェ―――
イヤ、ゴウナスァンガ、エモイノカワリトシテ
コノカイシャニクルッテンナラ、
ソレナラナンダッテシキョクチョウノザニナンカ
ツクンダイ―――...?」
「・・・・」
この会社の経営権を日朝本社が奪った事だけでも、
スサケフスキにとっては許しがたい行為だが、
更に、今目の前にいるこの日本人は、自分に残された
唯一のこの会社の代表者の肩書である
"支局長"の座まで奪おうとしている...
「(ゴウナ....ッ!)」
スサケフスキが恨みがましい目つきで
河野を見上げる
「ゴウナスァン....アナタ、イヤ、テメェガ
ダイヨンヘンシュウキョクチョウノ
カワリトシテ
コノカイシャニクルッテンナラ、
ナニモ、"シキョクチョウ"ノ
シゴトニツクコトヲシナクテモ
イイワケデショウ?」
「・・・お前は...」
河野が、冷たい表情を浮かべる
「・・・この際だから言っておくが、
とっくにこの会社の経営権は
イスクラ・コムソモーレツから、
日朝本社に移行してる―――」
「・・・ダカラ、ナンダッテンダイ?」
「ヨーロッパで、
今Earth nEwsを全面的に統括してる俺が
この藻須区輪亜部新聞で仕事をするにあたって
その肩書が"編集局長"じゃ
他の社員に示しがつかないだろう?」
「シメシ...」
あまり言葉がよく分からないのか、
スサケフスキは日本産のキノコの事を思い浮かべる
「とにかく、お前はどう思ってるか知らんが
これは、日朝本社の決定でそうなった事だ...」
「ニチアサホンシャノ....」
「お前も子供じゃないんだから
素直に自分に与えられた役割、
そして業務をやるべきじゃないか?」
「・・・・」
「――――頼んだぞ」
「・・・・」
そう言うと、河野は机の前から離れ
第一編集局の扉を開け外へと出て行く
「(ゴウナ~~ッ!)」
"ダンッ!"
叩きつけられたウォッカの瓶の音だけが
第一編集局の室内に響く....
「Ты, мы трое...
Нет, четверо, включая
Григория...
Даже если ты
попытаешься сохранить
в своем сердце
торжественную
холодность и
импульсивность этих
четырех людей, как
хаотичную сибирскую
тайгу, я не позволю...!
(許さない....!
アナタが、私達三人...
いえ、グリゴリーも加えて四人の男性達....
この四人の、混沌としたシベリアのタイガの様な
厳粛な冷徹さと、衝動を持った関係を
自分の心の内側に閉じ込めようとしても、
そんな事はこの私が許さない・・・)」
「(ゴウナ~~~ッ....!)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます