第三話 「под землей(地下)」

「・・・・!」


"カンッ カンッ!"


「・・・・っ!」


"カンッ!"


Абсолютная-Ø。

(アブソリューチナヤ・ゼロ)


「つ、槌が入りにくいな・・・っ!」


"カンッ! カンッ!"


「・・・・っ」


Абсолютная-Ø地下一階、

(アブソリューチナヤ・ゼロ)


ちょうどドーム状になっている地上の施設から、


車用のエレベーターを降りた先、


まばらに街灯の様な物が設置された


薄暗い場所で、海外特派員として


モスクワに出向している


藻須区輪亜部新聞社 第四編集局編集長


江母井 隆和は舗装された通路の様な場所で


手に作業用の槌とノミを持ちながら、


今自分の目の前にあるガードレールの


補修作業に集中する...


「(・・・・!)」


"カンッ!"


「(向こうのガードレールより硬いな...)」


予想以上に目の前のガードレールが


かなり硬い材質でできているせいか、


隆和は手に持ったノミの柄を槌で叩いて


ガードレールに差し込もうとするが、


槌がガードレールの破損個所まで入っていかない


「・・・か、かたいな...っ」


"カンッ!"


「・・・・」


"ブロロロロロロロロロロロッ....


「も、もう少し....っ」


"キキィッ!"


「!」


"ブロロロロロロロロロ....


「―――エモイつぁん」


「林さん・・・・」


"バタンッ!"


あと少しでガードレールの破損箇所に


自分のノミが入りそうな所で


ガードレールを挟んだ車道に一台の車が停まり、


思わずノミを取っていた手を止め


隆和はその車から降りて来た男に目をやる


「―――あいかわらつ、"サギョウ"


 ガンバってルみたいネ・・・」


「・・・・」


"グイッ"


「....どうしたんだ?


 今日は、"ポジショナー"じゃなかったのか?」


作業に集中していたせいか、


額から流れ出る汗を作業着の袖で拭いながら、


ガードレールを挟んですぐ側に立っている


藻須区輪亜部新聞第三編集局編集長


林 文青に目を向ける


「いえ、キョウは、ゴゼンでサギョウ


 終わたカラ、エモイつぁんのヨウス、


 ウカガイに来たノでス....」


「・・・・」


林の言葉に、作業着のポケットから


携帯を取り出し現在時刻を確認すると


"12:25"


「(もう、昼を回ってるのか)」


どうやら、時刻は昼過ぎ、


十二時を回った様だ


「ちょどヨい時間でつ。


 ちょと、食事とか、取りまつォ。」


「・・・そうだな...」


「昼ゴハン、は、"中華"でどネ。」


「また中華か・・・」


"ガサッ"


"ガタタッ"


「やハリ、チュゴク、共産党体制づぅえ、


 イマのセカイのパワーはなりタてまつ...」


「・・・そうだな、林さん。」


"ニッ"


手に持っていた槌とノミを道具箱にしまいながら


適当に相槌を打つと、言葉に同調している事に


満足したのか、林がはにかんだような


笑みを浮かべる


「チュウカ、"共産党"でつォ....」


「そうだな、林さん」

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